【指導参考事項】

1.課題の分類
総合農業 作業技術 その他
北海道 農業物理 11

2.研究課題名
 低コスト米生産総合機械化栽培に関する試験
  2)品質判定機(玄米)に関する性能試験

3.予算区分  道 単

5.担  当 中央農試 農業機械部

4.研究期間  昭和62年

6.協力分担 な  し

7.目  的
 玄米に光を照射することによって、その透過光と反射光を基に品質を判定する機械が自主検査用として開発された。その性能を明らかにし、普及及び利用上の参考に供する。

8.試験研究方法
 1)供試機 RS-1000(静岡製機株式会社)
 2)供試材料  新篠津産みちこがね、ゆきひかり、キタヒカリ
 3)試験方法
 ①精度試験:R/G2及び3を変えて、誤判定の割合を算出した。T/R3のレベルを変え、測定結果の変化率を測った。R/G及びT/Rレベルを固定し、粒数を変え誤判定の割合を算出した。
 ②繰り返し精度:T/R、R/Gレベルを固定し、粒数を変化させた時の繰り返し精度を測定した。その時の誤判定の割合も算出した。
 ③胴割試験:F/Rを変化させ、その時の軽、重胴割の割合を測定した。

9.結果の概要・要約
 1)供試機概要  粒送円盤に移送された玄米1粒ごとに光を照射して透過光センサーと反射光センサーにて透過率を測定する。同時に、反射光を光ファイバーにて分光ヘッドに供給する。そして分光ヘッドにて赤色光と緑色光を検出し、分光比を測定する。さらに胴割ヘッドでは、良質粒と判定された玄米1粒ごとにLED光源の光が照射される。そして2つのセンサで、前部光と後部光を検出し、良質粒と判定された玄米の胴割度を測定する。これらのデータを基に、良質粒・未熟粒・被害粒・死米・着色粒の5分類の判定及び胴割度を算出し、プリントアウトされる。さらに判定の結果から、それらの混入割合によりA・B・Cの3ランクに格付けもできる。判定レベル、格付基準は任意に設定可能である。実際の測定を始める前に、判定基準となる玄米を供試しレベルを設定しなければならない。
 2)精度試験  みちこがねを用い、T/R2を88〜90に、T/R3を90〜92に変えて、その時の判断精度を測定した。整粒(良質粒・未熟粒)は98%以上の判定精度を示した。被害粒、死米粒の精度は90%以上を示したが、着色粒は粒数が少ない上色のばらつきがあるため、判定誤差が大きかった。次にゆきひかり、キタヒカリを用い、粒数を500〜2500に変えその時の判定精度を調べた。(表2)その殆どが高精度であったが、キタヒカリを2500粒供試した時、被害粒、死米粒の精度が低くなった。その原因は被害粒中に良質粒が混入し、死米中に未熟粒が混入し、誤判定したものと考えられるが、判定レベルを変えることで、精度を高めることは可能である。
 3)繰り返し精度  T/R、R/Gレベルを固定し、粒数を500〜2500粒に変えその時判定のばらつきを測定した。(表3)3反復試験をしたが、そのばらつきは小さく精度の高い結果であった。また、ゆきひかりを用い、繰り返し試験を行う中でその判定精度を調べてみた。良質粒、未熟粒は高精度であった。被害粒、死米粒は判定精度が低いところもあったが、その誤差率のばらつきは小さく判定レベルを変えることで、精度を上げることが可能である。
 4)胴割試験  F/Rを70〜100に変化させ、その時の軽・重胴割の割合を測定したともひかりを人為的に胴割を起こさせ供試し、被害粒ロに落下した玄米で調査した。非胴割粒は1.7〜2.5%と小さかった。F/Rレベルを大きくすると軽胴割に対する重胴割の割合いが大きくなる傾向にあった。

10.成果の具体的数字

表1 精度試験①
T/R
2 3
分類 判 定 精 度 (%)
88 90 良質 99.38 0.38 0.24    
未熟 0.26 99.58 0.10 0.06  
被害 0.78   99.22    
死米 1.18   98.82    
着色 17.34   52.00   30.66
89 91 良質 98.52 1.28 0.20    
未熟 0.68 99.12 0.20    
被害 0.45 0.80 98.75    
死米          
着色   21.26 8.76   69.98
90 92 良質 99.22 0.68 0.10    
未熟 1.10 98.90      
被害 5.56   94.44    
死米 1.66   1.18 97.16  
着色 2.86   31.42   65.72
※ みちこがねを供試 供試粒数 1000粒

表2 精度試験②
品種 判定粒数 判 定 精 度 (%)
良質 未熟 被害 死米 着色
ゆきひかり 500 98.6 88.5 - 85.7 -
1000 97.8 89.4 100.0 100.0 -
2500 99.1 95.0 100.0 100.0 -
キタヒカリ 500 98.1 86.9 100.0 100.0 -
1000 98.0 81.0 100.0 100.0 -
2500 99.1 94.1 55.2 68.6 90.0

表3 反復試験   (%)
粒数 分類 1 2 3 計測時間
500 70.6 70.2 70.1 1'31"
25.0 24.1 23.6
3.4 4.3 4.5
0.4 0.2 0.4
0.6 1.2 0.4
100.00 71.3 70.5 71.8 2'34"
23.3 25.8 24.1
4.7 3.4 3.5
0.2 0.2 0.3
0.5 0.1 0.3
1500 72.8 72.7 72.0 3'30"
23.6 23.1 23.8
3.4 4.1 4.0
0.1 0.1 0.1
0.1 0.0 0.1
2000 70.1 70.9 71.2 4'32"
26.7 26.3 25.9
2.8 2.4 2.4
0.1 0.1 0.0
0.3 0.3 0.5
2500 70.0 70.5 70.9 5'29"
25.2 24.9 24.7
4.2 4.3 3.8
0.2 0.1 0.1
0.4 0.2 0.5

表4 胴割試験
F/R 0
70 2.5 10.5 87.0
80 1.7 7.7 90.6
90 1.9 5.1 93.0
100 2.3 6.5 91.2
※ともひかりの良質粒のみを供試
T/R(30,50,70,120)
R/G(80,86,88,95)

11.普及上の留意点
 センサーの精度を安定させるため、周囲温度は20℃以上にすること。
 センサーや粒送円盤にホコリが付くと、誤判定の原因となるので使用期間中、掃除をまめに行うこと。