【指導参考事項】

1.課題の分類
総合農業 作業技術 調製
北海道 農業物理 5-(2)

2.研究課題名
  豆類の高品質対応調製・貯蔵技術改善試験
  1)異物除去装置に関する試験

3.予算区分 道 単

4.研究期間 昭和62年

5.担  当 中央農試農業機械部機械科

6.協力分担 ホクレン農総研

7.目  的
 小豆中の小石・土砂等の異物混入は道産豆類の商品価値を著しく低下させる原因の一つである。混入異物の完全除去を目的として新規に開発された異物除去装置の性能を明らかにし、導入・利用上の参考に供する。

8.試験研究方法
 1)試験期日  昭和62年9月30日
 2)試験場所  ホクレン小樽豆類調製工場 小樽市
 3)供試機  型式:HPL-105 ラインセレクタ(製造:株式会社山本製作所)
 4)供試穀物  品種「大納言小豆」昭和61年産 千歳産 研磨済
 5)調査項目
  (1)機体調査  構造及び特徴、外寸、重量、能力、所要電力
  (2)異物除去性能  流量別除去ダイヤル、フイルタ、感度調整、空気圧
  (3)試験条件  目盛-流量、粒度、一般組成、1000粒重、水分

9.結果の概要・要約
 1)構造及び特徴  幅240㎜厚さ12㎜、高さ180㎜のセル内に充墳した小豆に軟X線を照射し、その吸収率により無機異物を検知し、連動するロータリバルブで異物を含む小豆群を分離する構造である。標準処理能力は700kg/hで処理流量は排出ロータリバルブの回転数で調節出来る。測定セル内の画像処理量は1静止画像当り260grである。測定セル内の処理画像は機体のCRTに同時に表示される。表1は主要諸元を示した。
 2)異物除去性能  当該機の対象とする異物混入小豆は、最大30kg当たり5個の混入率である。この条件で各種小石、土礫を混入してその除去性能を調査した。表2は、異物除去試験結果を示したものである。表に示すごとく、流量500〜1125kg/hまでは特殊プラスチック以外異物を完全に除去することが確認された。
 測定セル内の異物を除去ロータで確実に除去するため、排出ロータリバルブの回転角を所定量パルス数で制御する。このため伴連が発生する。1回の伴連量は1.4kgである。セル内小豆の流下速度が遅い場合(Test№1、8)には、測定セル内で異物が2度検知されるため、ロータリバルブの動作回数は倍になっている
 流量が多い場合にはこの現象は認められない。一般的に小豆調製工程の最終工程で異物の手撰が行われるが、異物の混入実態は60kg当たり2〜3粒である。この程度の混入割合では1・4kgの異物を含む伴連小豆を確実に手で抜き取った後、原料タンクヘ戻す方法で支障はない。異物混入率が60kg当たり10個以上の場合は手撰ラインに送り、処理後原料タンクヘ戻し再処理を行う方法が望ましい。
 3)利用経費  表3は、当該機の処理能力と利用経費を慣行手撰と比較して示した。利用経費は、設定流量及び伴連品の処理法により異なるが、処理量当たりの利用経費は慣行手撰区に比べ50〜70%低下ることが明らかとなった。
 4)利用効果  小豆調製施設では1系列400kg/hに3名が付き、手撰を行っている。実態調査の結果、作業能力は1人毎秒60個の被害粒、異物等の除去が限界である。抜き取り誤差も生ずる可能性があり異物除去装置との組合せで確実な精度が保証できる。

10.成果の具体的数字

表1 供試機仕様緒元
項 目 諸 元 項 目 諸 元
異物検出方式 軟X線画像処理法 選別被検体 普通小豆、大納言小豆
全長(㎜) 1800 異物混入割合 MAX5個/30㎏
外寸全幅(㎜) 700 検出可能無機物 土塊、土砂、石、金属(3㎜Φ以上)
全高(㎜) 1800 処理能力 700㎏/h(±30%)
全 重 (㎏) 700 消費電力 2KVA、単相200V

表2 異物除去試験結果
Test № 1 2 3 4 5 6 7 8 9
流量目盛 6 9 12 15 19 21 25 6 15
投入流量 (㎏/h) 500 600 700 800 925 980 1125 500 800
異物混入率 (個/㎏) 18/100.0 18/107.5 18/93.3 18/93.3 18/123.3 18/106.2 18/112.5 18/100.0 18/54.0
60㎏当り混入割合 (個/60㎏) 10.8 10.0 11.6 11.6 8.8 10.2 9.6 10.8 20.0
異物除去動作回数 (回) 30 20 17 17 17 17 17 29 19




A(除去数/投入数) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
B (〃) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
C (〃) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
D (〃) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
E (〃) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
F (〃) 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3 3/3
G (〃) 2/2 2/2 2/2 2/2 2/2 2/2 2/2 2/2 2/2
H (〃) 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1 0/1
製品口流量 (㎏/h) 282.3 438.7 516.0 588.4 739.8 752.8 880.0 295.0 370.4
除去口重量 (㎏) 43.6 28.9 24.5 24.7 24.7 24.7 24.5 41.0 29.0
粒回収率 (%) 56.5 73.1 73.7 73.6 80.0 76.8 78.2 59.0 46.3
一回の伴連量 (㎏/回) 1.45 1.45 1.44 1.45 1.45 1.45 1.44 1.41 1.53
空作動回数 (回) 12 2 1 0 0 0 0 12 2
検知セル内小石速度(㎝/scc) 6.5 7.1 8.3 10.2 13.6 14.9 20.4 6.5 10.1
原料中異物濃度 (ppm) 34.9 32.5 37.4 37.4 28.3 32.8 31.0 34.9 64.6
除去口中異物濃度 (ppm) 133.7 133.7 134.6 133.7 133.7 133.7 134.6 137.4 126.7

表3 HPL-105、手撰工程との利用経費比較
処理流量
(㎏/h)
年稼働時間
(h/年)
負担能力
(トン/年)
HPL-105利用経費 慣行手撰経費
原料タンク戻し 処理後手撰
時間当り
(円/h)
処理量当り
(円/トン)
60㎏当り
(円/60㎏)
時間当り
(円/h)
処理量当り
(円/トン)
60㎏当り
(円/60㎏)
時間当り
(円/h)
処理量当り
(円/トン)
60㎏当り
(円/60㎏)
700 3000 2100 2546 3638 218.2 3046 4352 261.1 2975 8925 535.5
1000 3000 2546 152.8 3046 182.8 4250 12750 765.0
注)原料タンク戻し:異物量の少ない原料に適用
  処理後手撰:異物混入量が多い原料に適用

表4 供試異物の特性
異物の種類 平均重量(gr)
A 千歳石a 0.082
B 千歳石b 0.201
C 浦 白 0.104
D 訓子府 0.163
E 音 更 0.163
F ボルト 0.620
G コード片 0.208
H プーリ 0.160
I 十勝 土塊a 0.114
J 十勝 土塊b 0.152

11.普及上の留意点
  60kg当たり42個以上の異物濃度(135ppm)になると処理効果が認められないので、土、軽石等の異物が多い原料は必ずシーブ選、比重選、石抜機にて粗選別を行ったものを供試すること。