完了試験研究成績
【指導参考事項】
(作成　63年1月)

1.課題の分類　　　北海道　畜産　乳牛　栄養・飼科　根釧農試

2.研究課題名
　　　　草地酪農地帯における水分含量別牧草サイレージ及びとうもろこしサイレージの利用価値査定

3.予算区分　総合助成

4.研究期問　(昭57年−60年)

5.担当　根釧農試　酪農第一科

6.協力分担

7.目的
　調製条件が牧草サイレージの養分含量、養分回収率に及ぼす影響、水分含量別牧草サイレージと乳生産との関連性、並びに牧草サイレージ主体飼養時におけるとうもろこしサイレージの併給効果について究明し、草地型酪農地帯における自給飼料の効率的な利用法確立のための資とする。

8.試験研究方法
試験1.刈り取った原料草を予乾処理0〜7日間でサイレージに調製し、養分含量の推移、養分回収率を検討。(実験1：1番草出穂期、2：同開花後期、3：同出穂期)
試験2.同一原料草で高、中、低水分サイレージを調製し、ラテン方格法により泌乳試験を実施。(1番草出穂期、出穂揃期、開花揃期)
試験3.とうもろこしサイレージの併給効果を検討するために試験ごとに組み合わせる牧草サイレージの生育ステージをかえてラテン方格法により泌乳試験を実施。(1番草出穂始期、出穂期、出穂揃期、開花期)

9.結果の概要・要約
　1)予乾処理0、1日で調製したサイレージの養分含量は、刈り取り時原料草と同程度であったが、予乾処理3、7日間で調製したサイレージでは若干低かった。この低下は主に詰め込み時原料草の養分含量が低下したためと考えられた。養分のほ場損失率は長期の予乾処理、収穫損失率は極度の低水分、貯蔵損失率は高水分で、それぞれ増加する傾向があり、ほ場から給与までの養分回収率は、1日予乾により水分70%前後の中水分で調製した場合に高かった(図1)。
　2)中水分サイレージの乾物およびTDNの摂取量は、高水分に比べて同等かそれ以上であった。また、乳組成も若干向上の傾向があったが、乳量や体重と同様に有意差は認められなかった。低水分も中水分と同様の傾向であったが、予乾処理中降雨にあった場合(出穂期)に乾物およびTDNの摂取量や乳量が低下する傾向を示した(表1)。
　3)とうもろこしサイレージのTDN含量は黄熟後期、未熟期とも70%以上であった。出穂始期(TDN含量76%)、出穂期(同66%)の牧草サイレージでは、とうもろこしサイレージの併給により、乾物およびTDNの摂取量や体重はやや減少する傾向を示したが、FCM量では差がなかった。これに対して、出穂揃期(同61%)では、TDN摂取量、乳量が増加し、無脂固形分含量が高まる傾向を示し、さらに開花期(同52%)ではTDN摂取量、乳量及び乳組成ともに明らかに改善された(表2)

　以上の結果より、牧草サイレージは、半日ないし1日程度の予乾により中水分(水分含量60〜70%)として調製することが望ましいものと判断された。また、牧草サイレージ主体飼養時にとうもろこしサイレージを併給することによる産乳量の増加等の効果は、組み合わせる牧草サイレージのTDN含量によって異なりおおよそ60%以下の場合に、期待できることが認められた。

10.成果の具体的数字


　　　　　　　　　　　　図１　予乾処理日数とTDN損失率及び回収率

表１　水分含量別牧草サイレージの産乳効果
  試験2-(1) 試験3-(2) 試験2-(2)
出穂期 出穂揃期 開花揃期
中水分 低水分 中水分 中水分 低水分
TDN含量 97 93 104 101 98
乾物摂取量（サイレージ） 101 93 108 110 113
TDN摂取量（〃） 98 88 113 112 112
実乳量 94 91 103 96 100
FCM量 97 92 103 100 102
乳組成 脂肪 105 103 104 107 105
無脂固形分 100 100 101 101 100
蛋白質 103 102 103 104 102
乳糖 98 98 99 99 99
体重 99 99 102 101 101
各期ともおのおの高水分区の値を100とした指数を示した

表２　牧草サイレージのTDN含量ととうもろこしサイレージの供給効果
  試験3-(1) 試験3-(2) 試験3-(3)
牧草サイレージの
TDN含量（乾物中％）		 76
出穂始期		 66
出穂期		 61
出穂揃期		 52
開花期
とうもろこしサイレージの
TDN含量（乾物中％）		 75
黄熟後期		 71
未熟期		 71
黄熟後期
乾物摂取量（サイレージ） 95 87 97 104
TDN摂取量（〃） 95 93 105 120
実乳量 98 98 104 107
FCM量 100 99 103 110
乳組成 脂肪 102 103 100 104
無脂固形分 100 100 101 101
蛋白質 99 102 101 103
乳糖 101 101 101 102
体重 97 98 99 99
各試験とも、牧草サイレージ単用区の値を100とした指数により
とうもろこしサイレージ供給区の値を示した

11.成果の活用面と留意点
　牧草サイレージにとうもろこしサイレージを併給する場合には、蛋白質及びミネラルが不足しがちなので、そのバランスと補給に留意すること。

12.残された問題とその対応
長期飼養試験による各種サイレージの産乳効率の検討及び草種構成と牧草サイレージの飼料価値の関係の究明が必要である。