【普及奨励事項】

1.課題の分類
草地 育種 長大型作物 A-5
北海道 草地 畑作

2.研究課題名 サイレージ用とうもろこし「TH82082」に関する試験

3.予算区分 受託

4.研究期間 昭和58〜62年

5.担  当 道立十勝農試,上川農試,北見農試,天北農試,根釧農試,農林水産省北海道農試

6.協力、分担関係

7.目  的
 サイレージ用とうもろこし外国導入品種の各地域における適応性を検討し,優良品種選定に資する。

8.試験研究方法
 品種名:TH82082(ロイヤルデント リンダ)
 組合せ:単交配(構成系統名は不明)
 育成者:トップファーム(米国)
 導入者:タキイ種苗株式会社
 登  録:な し

9.結果の概要・要約
 1)絹糸抽出期および収穫時熟度:絹糸抽出期は「C535」より3日程度遅中生の早で、収穫時熟度も遅い。
 乾物率は「C535」より低い。
 2)耐倒伏性:「C535」より強い。
 3)発芽および初期生育:発芽は「C535」より早く、初期生育は「C535」並かやや劣る。
 4)収量性および乾物特性:「C535」に比べTDN収量は高い。茎葉が比較的多く、乾物中TDNは「C535」より低い。
 5)形態特性:桿長,着雌穂高とも「C535」より高い。
 6)耐病性:「C535」に比べすす紋病抵抗性はやや弱く、ごま葉枯病抵抗性はやや強い。

10.成果の具体的数字
試験場所           形質
年次   品種・系統名
(昭和)
発芽期
(月・日)
初期生育
(1:良〜5:否)
絹糸
抽出期
(月・日)
倒伏
(含折損)
(%)
収穫時
熟 度
10a当り収量(㎏) 相 対
乾物率
(%)
乾雌穂
重割合
(%)
乾物中
TDN
(%)
乾総重 TDN 比(%)
十勝農試 58・60〜62 TH82082 5.23 2.5 8.12 23.0 糊後〜黄初 1,119 789 107 23 45.3 70.3
C535 24 2.3 8 34.0 黄初 1,023 736 100 24 50.9 71.9
ワセホマレ 23 1.2 6 44.1 黄中 966 698 95 27.8 52.3 72.3
上川農試 60〜62 TH82082 5.27 2.3 8.1 0 黄後 1.475 1,065 120 30.8 52.3 72.2
C535 29 2.7 7.30 9.5 黄後 1,234 890 100 28.7 52.1 72.1
ワセホマレ 29 2.0 29 2.1 黄後〜完 1,068 769 86 29.3 51.6 72.0
北見農試 60〜62 TH82082 6.1 3.7 8.16 3.0 黄初 1,276 898 94 24.3 45.6 70.5
C535 2 2.8 11 2.7 黄中 1,354 958 100 24.7 46.7 70.7
ワセホマレ 2 1.6 10 3.7 黄後 1,263 903 94 26.8 49.5 71.4
天北農試 60 TH82082 5.25 - 8.18 0 黄初 1,474 1,019 112 21.7 40.7 69.1
C535 26 - 15 1.2 黄中 1,274 910 100 23.0 49.4 71.4
ワセホマレ 26 - 14 2.0 1,172 842 93 24.3 51.0 71.9
根釧農試 60 TH82082 6.7 5 8.25 2.1 乳後〜糊初 969 660 87 20.5 36.7 68.0
C535 7 3 19 7.1 糊後〜黄初 1,068 762 100 22.5 48.9 71.3
ワセホマレ 7 3 19 17.5 黄初 896 632 87 22.7 46.0 70.5
忠類村 61〜62 TH82082 6.4 1.9 8.17 8.3 糊後〜黄初 1,232 846 112 21.2 38.9 68.6
C535 5 1.9 14 57.2 黄初 1,066 755 100 22.3 46.9 70.8
ワセホマレ 5 1.8 13 60.3 黄中 1,050 749 99 24.0 48.9 71.3
美深町 61〜62 TH82082 6.5 (1) 8.11 0 糊後 1.396 988 108 23.7 47.2 70.9
C535 5 (1) 9 0 糊後〜黄初 1,265 919 100 25.9 54.1 72.7
ワセホマレ 5 (1) 8 0 黄初〜中 1,141 833 91 26.1 55.4 73.0
遠軽町 61〜62 TH82082 6.5 (2.0) 8.10 27.5 黄初 1,388 976 113 23.9 45.6 70.4
C535 5 (2.0) 7 44.0 1,214 860 100 24.5 47.2 70.9
ワセホマレ 5 (2.0) 9 34.0 黄中〜後 1,099 781 91 26.4 48.2 71.1
注) Elliott&Jenkinsの指数(0無〜5甚)による。

11.成果の活用面と留意点
 1)普及対象地域:十勝中部およぴ道央北部地域。
 2)栽培利用上の注意:低温時には初期生育が劣るので,肥料やけや初期雑草の対策に留意し,生育の促進を計る。また,すす紋病の発生軽減のため適正な肥培管理を行う。
 3)種子供給が可能となる時期:昭和63年
 4)普及見込面積:2,O00ha
 5)配布し得る種子量:60t

12.残された問題とその対応