完了試験研究成績  (作成 昭和64年1月)

1.課題の分類  野菜 野菜 栽培 スイカ 病害虫 土壌肥料
           総合農業 生産環境 病害虫
           総合農業 生産環境 土壌肥料
           北海道
2.研究課題名  岩宇地域におけるスイカの生産性阻害要因とその改善対策
3.予算区分  道単
4.研究期間  (昭和61年〜63年)
5.担当  北海道原子力環境センター 農業研究科
6.協力・分担関係  なし


7.目的
 共和町におけるスイカ栽培の実態を作物の生育、土壌の理化学性、土壌病害およびアンケートにより調査を行い、生産性を阻害している要因を明らかにすると共に、良質安定多収のための輪作の効果、太陽熱による土壌消毒の効果、および深耕の効果を明らかにする。

8.試験研究方法
1)生産性阻害要因の解析に関する試験
 土壌別、連・輪作別に農家を選定し、均一苗を定植後、経時的に抜き取って生育調査、根の褐変状況とそこから分離される糸状菌を調査した。また、圃場一筆ごとの土壌調査と栽培来歴を調査した。
2)良質安定多収生産に関する試験
(1)太陽熱利用による土壌消毒
 ◎スイカ収穫後の8月上、中旬に10a当たりバーク堆肥2㌧、石灰窒素100kgを施用し、整地後、マルチと
 トンネルをして、11月上旬まで放置した。処理期間中、地温、土壌微生物、無機態窒素を調査した。
 翌春、スイカを定植し、生育収量を調査した。
(2)スイカとネギとの混植試験
 ◎スイカの株元にネギを混植し、ネギがスイカの根の褐変および生育収量に及ぼす影響を調査した。
(3)深耕試験
 ◎作土地面下20cm内外に硬盤を持つ土壌に炭カルとようりんをそれぞれ10a当たり100kg施用し、
 30〜60cm深耕した。その結果がスイカの生育収量に及ぼす影響を調査した。


9.結果の概要・要約
 共和町におけるスイカ栽培で生産性阻害の要因を解析し、良質安定多収技術について検討を行い、次の結果が得られた。
(1)スイカ栽培の連作又は短期輪作が余儀なくされており、連作障害に見舞われている。
(2)連作障害の主原因はフザリウム・オキシスポラム菌による根褐変症状であるが、土壌の理化学性の悪化
 が連作障害を一層強めている。
(3)したがって連作障害の軽減にはフザリウム・オキシスポラム菌による根褐変症状の解消と、土壌の理化
 学性の改善が必要と考えられた。
(4)具体的な対策として太陽熱利用による土壌消毒、スイカとネギの混植による根褐変症状の軽減、深耕に
 よる根圏域の拡大などに効果が認められた。
(5)太陽熱利用では地表下10cmまで40℃以上の時間を200時間確保すること、スイカとネギとの混植では、
 出来るだけ大きなネギ苗を用いること、また深耕では土壌断面調査によるその必要性の判断と土壌改良
 資材の併用を考慮しなければならない。



10.成果の実態調査の結果

1)生育の実態調査の結果

第1図  根の褐変とツル長の関係(6月19日)   第2図  根の褐変と乾物重(6月19日)

2)太陽熱利用による土壌消毒

第1表  生育調査(62年6月25日)
処理 最大ツル長(cm) 葉数(枚)
森下 石田 森下 石田
マル+トン 197 213 21.8 23.3
マルチ 169 187 20.1 21.7
クロビク 182 - 20.0 -
無処理 157 153 19.2 18.0


第2表  収量及び品質調査(62年8月 石田)
処理 平均一果重
(kg)
a当収穫量 糖度(%)
個数(個) 果量(kg)
マル+トン 5.11 63 322(145) 10.8
マルチ 4.40 56 246(123) 10.7
無処理 4.63 48 222(100) 10.8


第3表  処理区別微生物数(乾土1g当たり)
処理区 糸状菌(×103) 放線菌
(×105)
細菌
(×105)
全細菌
(×105)
全体 アスパ
ジーラス属
その他の属
無処理 26.8 <103 6.7 5.6 26.5 32.1
マルチ 47.4 1.6 4.8 4.6 6.7 11.3
トン+マル 27.9 14.5 0.3 8.6 15.8 24.4
クロビク 7.1 <103 <103 <105 0.3 0.3


第3図  スイカの作型と太陽熱処理

3)スイカとネギの混植

第4表  混植スイカの時期別収穫果重(a当たり)と平均1ヶ重(kg)
果   重 平均1ヶ重
処理 8月10日
以前
8月10日
以降
合計 8月10日
以前
8月10日
以降
全体
無処理 259.5(100) 195.4(100) 454.9(100) 7.3 6.2 6.8
小苗ネギ 371.4(143) 112.3(57) 483.7(106) 7.6 7.2 7.5
大苗ネギ 309.9(119) 170.7(87) 480.7(105) 7.6 6.9 7.2


4)深耕試験

第5表  生育及び根の褐変
試験地 処理 ツル長 茎径(7.22) 果径
(7.22)
地上部
乾物g/2株
根の褐変
(8.10)
6月27日 7月22日 たて(cm) よこ(cm)
岩渕 267 29.8 22.9 22.6 21.2 1159 1.3
237 27.0 22.3 22.6 20.0 720 1.5
安達 262 30.3 24.0 23.3 19.3 756 0.8
257 27.5 23.2 23.9 18.7 640 1.0



11.成果の活用面と留意点
(1)スイカの栽培は、まず第一に地力を培養したうえで輪作を励行すること。
(2)やむを得ず、連作又は短期輪作する場合は太陽熱利用による土壌消毒、ネギとの混植、深耕などを出
 来るだけ併用すること。
(3)太陽熱利用による土壌消毒処理には、バーク堆肥又は完熟堆肥を使用することとし、窒素は減肥する。
(4)ネギとの混植に使用するネギは60日間育苗した苗とし、定植1週間から10日間前にスイカ苗のポットへ
 混植する。
(5)深耕は土壌診断に基づき実施する。

12.残された問題点とその対応
 (1)合理的輪作年限の確立
 (2)スイカの最適前作物の検討
 (3)太陽熱処理法簡略化の検討
 (4)ネギとの混植に伴う追肥の検討
 (5)深耕適地の分布把握
 (6)他の土壌病害への適用性