【指導参考事項】
完了試験研究成績               (作成2年1月)
1.課題の分類  食品−流通利用適性
          北海道
2.研究課題名  ホウレンソウの簡易保冷輸送に関する試験
3.予算区分  道単
4.研究期間  (昭和63年〜平成元年)
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
6.協力・分担関係  畑作園芸課・ホクレン

7.目的
ホウレンソウの道外移出における実際の輸送条件を調査し、低コストで簡易な保冷輸送方法の可能性を確認する。

8.試験研究方法
(1)昭和63年度
①輸送手段
 ア.航空機(常温)
 イ.クールコンテナ(4℃)
 ウ.冷凍車(9℃)
②供試品種 リード(鵡川町産)
③容器
 ア.段ポール箱
 イ.発泡スチロール箱
④出荷先 東京神田市場
⑤期間 10月4〜6日
(2)平成元年度
①輸送手段
 ア.簡易保冷コンテナ(C-35型に断熱加工したもの。ドライアイス80㎏で保冷)
 イ.アに断熱ボックスを併用
 ウ.航空機(常温)
②供試品種 トニック(鷹栖町、鵡川町産)
容器
 ア.段ボール箱(普通、発泡混層、エチレン吸収剤入り、吸水フィルム貼り)
 イ.発泡スチロール箱
③包装
 ア.ポリエチレン袋
 イ.2軸延伸ポリプロピレン袋
 ウ.機能性フィルム3種
④コンテナ積載量 キャベツ2.2トン、ホウレンソウ0.25トンの混載
⑤出荷先 大阪中央市場
⑥期間 8月7日〜10日

9.結果の概要・要約
(1)昭和63年度
①航空輸送:低湿度条件で輸送され、段ポール箱づめではしおれが目立った。発泡スチロール箱づめするとしおれは著しく抑制された。
②クールコンテナ輸送:コンテナ内は4℃±3℃、RH90%以上で、品温は8℃(段ボール箱)〜 10℃(発泡スチロール箱)で推移し、セリ時の鮮度は極めて良好であった。
③冷凍車:車内は8℃前後、RH70〜90%で、品温は7〜10℃程度(段ボール箱)であった。鮮度は極めて良好であった。
④鮮度低下の主な要素はしおれであった。低温で輸送するとしおれは著しく抑制され、保冷輸送の必要性が確認された。
(2)平成元年度
①簡身保冷コンテナ輸送
ア.コンテナ内気温は、天井直下でも外気温より9〜12℃低く経過し、最高24℃にとどまった中段は11〜14℃であった。湿度は天井直下で40〜55%、中段で70〜80%であった。ホウレンソウの鮮度保持上、温度はおおむね良好、湿度は低かったといえる。
イ.セリ時点では、段ボール箱づめではしおれが目立ったが、発泡スチロール箱、発泡混眉段ポール箱、吸水フィルム貼り段ポール箱づめしたものは鮮度良好であった。段ポール箱づめでもフィルム包装すると鮮度良好であった。
ウ.断熱ボックス内気温はコンテナ内気温よりもはるかに低く、鮮度保持効果が明らかに認められた。
エ.コンテナ内炭酸ガス濃度は20%以下で、ホウレンソウに対する悪影響ぽ認められなかった。
オ.十分に予冷したキャベツとの混載で、保鮮効果の高い容器を使用すれば、大阪市場への簡易保冷輸送が可能であることが実証された。
②航空輸送
空港に到着してから市場に搬入するまでの保管温度が著しく高く、鮮度低下が進行した。

10.成果の具体的数字
表 簡易保冷輸送における重量減少率および外観品質
     方法

   包装及び
     容器

項目
コンテナ単独
段ボ
ール
発砲
スチ
ロー
ル箱
発砲混
層段ボ
ール箱
エチレン吸収剤入段ボール 吸水材貼り
段ボール箱
(水噴霧)
無包装 ポリ袋 ABC袋
重量減少率(%) 6.9 1.3 0.6 6.5 0.8 0.3 0.7
しおれ 3.0 4.6 4.8 3.0 4.4 5.0 4.8
黄化 4.8 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
トロケ 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0. 5.0
総合 2.4 4.7 4.8 2.4 4.4 5.0 5.0
     方法

   包装及び
     容器

項目
断熱ボックス併
発泡ス
チロー
ル箱
エチレン吸収剤入段ポール箱
無包装 ポリ袋 ABC袋
重量減少率(%) 1.2 5.9 0.8 0.8
しおれ 4.8 3.0 4.8 4.2
黄化 5.0 5.0 4.8 5.0
トロケ 5.0 5.0 5.0 5.0
総合 5.0 2.8 4.8 5.0
注1 発砲混層段ボール箱:内面に発砲ポリスチレンをはりつけてある
 2  ABC袋:エチレン吸収材を練りこんだポリエチレンフィルム袋
 3 しおれ、黄化、トロケ:無5、著1とする5段階評価点
 4 総合:極良5、極不良1、とする5段階評価点

図 簡易保冷輸送における温度経過(1989年8月8〜10日)

11.成果の活用面と留意点
(1)長時間輸送にあたっては適正条件による予冷を行う
(2)最高温期のホウレンソウ単品の簡易保冷輸送は避ける

12.残された問題とその対応
発泡スチロール箱の規格及ぴ構造の適正化