完了試験研究成績  (平成2年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 病害虫 病害 V-4
           北海道 病理昆虫 病害 ヒマワリ
2.研究課題名  ヒマワリの大規模機械化栽培体系 Ⅳ ヒマワリ栽培における菌核病防除システムの確立
          (ヒマワリの高位生産技術における地域システム化試験、
                   北海道のヒマワリ栽培における菌核病防除システムの確立に関する試験)
3.予算区分  受託
4.研究期間  (昭和62年〜平成元年)
5.担当  北見農試病虫予察科
6.協力・分担関係  北見農試作物科、中央農試農業機械部/畑作部、北農試水田土壌管理研究室


7.目的
 ヒマワリ菌核病の発生生態を明らかにし、防除法を確立する。

8.試験研究方法
 1)発生生態・・・頭花に対する感染機作、土壌伝染
 2)防除対策・・・感染回避、矮化剤、薬剤防除、抵抗性品種の探索

9.結果の概要・要約

1.発生生態
(1)ヒマワリ頭花の感染は頭花前面の筒状花からおこり、その感染率は開花中で柱頭が花冠から抽出、裂開した時にもっとも高く、ついで開花後で柱頭が花冠内に収縮した時に高く、子房が成熟する時期になると低くなる。また未開花で柱頭が未抽出の時は極めて低かった。すなわち、子のう胞子感染に対する筒状花の感受性は開花ステージによって変化し、開花中の筒状花が最も罹病性である(図1)。
(2)筒状花の発病は初め柱頭、葯、花冠が3〜4日後に褐変腐敗し、ついで、蜜腺、子房も褐変し、15〜16日後に花床が軟化腐敗した。この花床の病斑はさらに進展し、未開花および開花後の筒状花の花床ついで子房に及んだ。
(3)菌核病菌の子のう胞子は開花中の筒状花の柱頭、葯、花冠に付着、発芽伸展し,蜜腺、子房、花床まで達した。開花後には柱頭、葯、花冠でも同様にまん延したが、蜜腺、子房で抑制された。一方,未開花の時には花冠での付着、まん延が見られたが、柱頭、葯では少なく、蜜腺、子房には至らなかった。しかし、隣接花床病斑から伸展した菌糸は子房、蜜腺に再感染した(図2)。花粉と共存すると子のう胞子は生育が旺盛になり感染力が増大した。
(4)土壌伝染による萎ちょう症は種子に対する菌核の接種位置が近いほど激発した。

《2.防除対策》
(1)播種期の早晩によって開花期を変動することによる頭花感染の回避は困難であった。
また、播種期が早いと土壌伝染による萎ちょう症が多発する傾向が認められた。
(2)矮化剤を茎葉散布すると草丈が低く、葉数が増加してうっぺい度が高くなり、茎の発病が増加した。
(3)ヒマワリ頭花に散布されたブロシミトン水和剤は、開花中の筒状花で付着量が多く、その後の残存量はさほど減少しないが未開花のものでは付着量が少なく、4日後にはその減少も著しかった(図3)。
(4)切離したヒマワリ頭花に対する子のう胞子接種の場合、ブロシミドン水和剤500倍液およびピンクロゾリン水和剤1,000倍液の予防的散布は発病抑制効果が認められた。
(5)ブロシミトン水和剤500倍液およびピンクロジリン水和剤1,000倍液の開花期および開花揃からの3〜7日間隔の3〜5回散布は防除効果が認められた。
(6)茎の発病は「X2401」「IBH166」が少なく、頭花の発病は「X127」「IBH166」が少なかった。地際、茎および頭花の発病を総合的にみると「IBH166」「SB281」および「SB277」は感受性が低く、「IS907E」は高かった。

10.主要成果の具体的数字

 図1  子のう胞子感染に対する筒状花の開花ステージによる感受性の変化
 
 図2  蛍光色素で染色した子のう胞子の筒状花における感染経路
 
 図3  頭花に散布されたブロシミドン水和剤の部位別減少推移


11.成果の活用面と留意点
1)ヒマワリ菌核病の萎ちょう症は菌核の土壌伝染に起因するので連作を避ける。
2)播種期の変動による頭花感染の回避は困難なので、播種期は「ひまわりの標準栽培法、昭和62年指導
 参考事項」を守る。
3)筒状花が開花したとき(柱頭が花冠から抽出)に不順な天候が持続すると子のう胞子による感染の機械
 が増加する。
4)ブロシミドン水和剤500倍液(未登録)およびピンクロジリン水和剤1,000倍液(既登録)「ひまわり菌核病の
 生態と防除、昭和62年指導参考事項」の開花期および開花揃からの3〜7日間隔、3〜5回、10a当たり
 250L散布は防除効果が認められた。

12.残された問題とその対応
 抵抗性品種の探索、浸透移行性有効薬剤の探索