1.課題の分類 総合農業 作物生産 夏作物 稲Ⅱ-2・5 北海道 稲作 栽培 2.研究課題名 「きらら397」の栽培特性 (平成2年度「きらら397」の栽培特性解明試験) (平成3年度水稲新品種候備系統の栽培特性解明試験) 3.予算区分 道単 4.研究期間 平成2年〜平成3年 5.担当 中央農試稲作部圃場管理科 上川農試水稲栽培科 6.協力・分担関係 |
7.目的
「きらら397」の栽培特性を解明し、栽培方法を確立する。
9.結果の概要、要約
1)「きらら397」の出葉速度と茎数の増加は「ゆきひかり」より速く、とくに初期生育良好地帯で過剰分げつの
発生が著しかった(図1)。両品種の止棄葉数の変動性は大差なく、また出穂期および成熟期もほぼ同程度
と考えられた。
2)「きらら397」は穂数の増減に対する1種籾数の変動が小さく、穂数増が㎡当たり籾数増に直接結びつき
易かった(図2)。また収量の最適籾数は「ゆきひかり」より10%程度少なかった。止棄薬数が「ゆきひかり」よ
り多いため6節以上の弱勢穂の籾数割合が高く、㎡当たり籾数の増加に伴う登熟歩合の低下程度は
登熟初・中期で「ゆきひかり」より大きかった。
3)「きらら397」の収量性ほ1穂当たりの収量によって決定された(表1)。登熟開始迄の乾物生産量の大小が
これを左右しており、なかでも1穂当たりの茎の乾物重が重要であった。これを増加させる具体的な技術
として早植え、成苗及び分げつ期からの深水管理が挙げられた(表2)。
4)「きらら397」についても収量および品質の向上のためにほ、栽培基準の栽植株数、1株植え本数を厳守す
る必要があると考えられた。
5)初期生育が良好な場合には分げつ期からの深水管理は「きらら397」の過剰分げつの発生を抑制し、登
熟性、収量および品質が向上した(図3)。初期生育が不良な場合には主に穂数の減少により減収した。
深水管理開始の判断基準を㎡当たりの茎数が、6月15日に300本、20日に400本、25日に575本、30日に
750本以上とした。現地試験の多肥条件下で、分げつ期からの深水管理は倒伏を助長した。
6)「きらら397」の乳白・心白・腹白粒の発生は止葉切除によって助長された。乳白粒等は窒素施肥量の増
加、籾数過剰、疎植および種揃いが悪く刈り取りの遅れた場合に増加した。とくに成苗の疎植では乳白
粒等の発生が多く、品質は著しく低下した(図4)。
7)「きらら397」の障害型冷書に対する耐冷素質は、窒素施肥量の増加に伴い低下し、穂孕期の葉身限界
窒素濃度は2.9〜3.5%と考えられ(図5)、これらに対応する葉色値(4〜5)とSPAD値(30〜35)を示した。
10.主要成果の具体的数字
表1 収量と穂数及び1種収量の関係
年次 | 単相関係数 | 標準偏回帰係数 | 寄与率(%) | |||
穂数 | 1穂収量 | 穂数 | 1穂収量 | |||
1991 | 稲作部 | -0.37** | 0.72*** | 1.46 | 2.04 | 94 |
1990 | 上川 | 0.13 | 0.56*** | 1.23 | 1.48 | 99 |
1991 | 上川 | -0.25 | 0.87*** | 0.66 | 1.33 | 100 |
表2 1穂収量と1種当たり出穂後10日の茎乾物重
試験場所 年 次 |
処理 | 1種当たり(mg) | |
収量 | 出穂後10日 茎乾物重 |
||
稲作部 1991 |
早植 標準植 遅植 |
685 609 570 |
618 577 561 |
中苗 成苗 |
628 705 |
632 644 |
|
上川 1990 |
早植 標準植 遅植 |
997 990 921 |
738 750 654 |
中苗 成苗 |
944 1014 |
713 756 |
|
浅水 深水 |
815 957 |
651 690 |
|
上川 1991 |
早植 標準植 遅植 |
996 933 892 |
734 739 723 |
中苗 成苗 |
930 977 |
750 709 |
|
浅水 深水 |
850 986 |
723 737 |
11.成果の活用面と留意点
1)分げつ期からの深水管理は「きらら397」の初期生育良好な場合に限る。
2)分げつ期からの深水管理の水深は概ね10㎝とし、昼間の入水は避ける。また、極端な深水は黄化萎
縮病の発生要因となるので避ける。
3)深水管理と多肥の組み合わせほ、耐倒伏性の低下を招く恐れがあるので、多肥は避ける。
12.残された問題点
1)登熟開始までの蓄積炭水化物が登熟と食味特性に及ぼす影響
2)穂孕期の葉身限界窒素濃度の検証と葉身窒素濃度の簡易推定法の確立