(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  北海道 畑作 特用作物
2.場所名  北海道立中央、上川、北見農業試験場 植物遺伝資源センター
3.新品種候補名  「キザキノナタネ」

4.来歴
1)「キザキノナタネ」は、農林水産省東北農業試験場(盛岡試験地)が育成した無エルシン酸品種である。
2)同品種は、「東北72号」を母、「Rapora」を父とした雑種後代から選抜、固定され、「東北84号」の系統名で
 各種の試験を経て平成2年に青森県を採用県として農林登録され「キザキノナタネ」と命名されたもので
 ある。
3)北海道内では、昭和62年度に北海道立中央農業試験場が、「東北84号」の配布を受け、生産力検定予
 備試験を行い、昭和63年度から平成2年度まで地域適応性と特性について試験を行ってきた。
4)また、平成元年度から平成2年度まで、北海道立植物遺伝資源センター、北海道立上川農業試験場で平
 成2年度には北海道立北見農業試験場で地域適応性試験を実施してきた。
5)平成元年度から平成2年度まで全道5〜6カ所で現地試験を行った。

5.特性
1)草型はⅢで、草丈は長であるが「タイセツナタネ」よりは20㎝程度短い。分枝数は少で、「タイセツナタネ」
 並である。穂長は長であるが、「タイセツナタネ」よりは短い。1穂莢数は多く、「タイセツナタネ」よりやや
 多い。莢長は「タイセツナタネ」より短い。1莢結実数は多く、「タイセツナタネ」並である。粒色は黒色で、粒
 の大きさは「タイセツナタネ」よりやや小さく、揃いはよい。
2)早晩性…抽苔期、開花期は「タイセツナタネ」よりやや早いが、成熟期は「タイセツナタネ」より1〜2日遅い
 中晩生種である。
3)耐倒伏性…耐倒伏性は強で、「タイセツナタネ」より倒伏が少ない。
4)収量性…子実重は「タイセツナタネ」より10%程度も勝る多収性である。
5)含油率…含油率は「タイセツナタネ」より1〜2%高い。
6)脂肪酸組成…「タイセツナタネ」は全脂肪酸に対して40%程度のエルシン酸を含むが、本品種は無である。
7)冬損および菌核病抵抗性…いずれも、ほぼ「タイセツナタネ」並である。

6.試験成績
1)道内各農試における生育収量調査成績
場所 試験
年次
品種名 成熟期
(月日)




(%)
倒伏程度

(cm)
第1
次分
枝数
(本)
総莢数
(莢/個体)
子実重
(kg/a)




(%)



(g)
中央農試 昭63
〜平2
キザキノナタネ 7.15 93 110 7.4 170 24.1 111 4.2
タイセツナタネ(標) 7.14 97 少〜中 少〜多 134 7.4 168 21.7 100 5.3
遺伝資源
センター
平1
〜2
キザキノナタネ 7.8 (97) 116 9.4 (209) 36.7 100 4.0
タイセツナタネ(標) 7.7 (100) 無〜微 無〜少 149 9.6 (203) 36.8 100 4.9
上川農試 平1
〜2
キザキノナタネ 7.11 87 無〜少 113 7.2 169 22.1 119 3.9
タイセツナタネ(標) 7.10 91 無〜少 微〜中 143 6.5 145 18.6 100 5.0
北見農試 平2 キザキノナタネ 7.25 97 132 7.2 167 26.9 116 4.8
タイセツナタネ(標) 7.23 99 157 6.9 134 23.1 100 5.9
注)( )は平成2年度

2)道内の主な試験地産子実の品質調査成績(平成元〜2年度の2カ年平均)
場所 品種名 含油率(%) 主要脂肪酸組成(全脂肪酸に対する百分率・%)


水分
10%
換算
パルミ
チン酸
ステア
リン酸
オレイ
ン酸
リノー
ル酸
リノレ
ン酸
エイコ
セン酸
エルシ
ン酸
中央農試 キザキノナタネ 48.9 44.1 4.7 1.6 64.1 18.8 8.3 1.1 0.2
タイセツナタネ(標準) 46.6 41.9 3.1 1.0 16.7 16.6 7.8 12.0 39.6
遺伝資源
センター
キザキノナタネ 46.2 41.6 4.8 1.7 65.4 18.5 8.2 1.2 0.1
タイセツナタネ(標準) 43.6 39.2 3.3 0.9 17.2 17.3 8.4 11.8 38.5
上川農試 キザキノナタネ 50.0 45.1 4.7 1.7 61.9 18.8 8.4 2.0 1.4
タイセツナタネ(標準) 48.0 43.2 3.2 1.2 19.0 16.7 8.0 12.7 36.0
北見農試 キザキノナタネ 47.1 42.4 4.5 1.5 62.9 19.2 9.7 1.4 t
タイセツナタネ(標準) 45.1 40.6 3.0 1.0 13.9 15.9 8.6 10.6 43.5
注)北見農試は平成2年度

7.配布しうる種苗量 1,273㎏

8.普及対象地域及び普及見込面積 北海道一円 500ha

9.栽培上の注意
1)自然交雑により脂肪酸組成中にエルシン酸がとり込まれる恐れがあるので、高エルシン酸品種及びなた
 ねと交雑可能なアブラナ科植物から十分隔離して栽培する。
2)種子は無エルシン酸であることを保証したものを使用する。
3)播種適期は9月上旬であり、適期播種に努める。
4)耐倒伏性に勝るので、春季追肥の窒素量をやや多肥(1Oa当り12㎏程度)とすると生育が旺盛となり、収
 量が高まる。
5)雪腐病防除が必要である。