成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  果樹 リンゴ 流通利用
          北海道
2.研究課題名  リンゴの品質保持に関する試験(野菜・果実の流通技術改善試験)
3.予算区分  道単
4.研究期間  (昭和63年〜平成2年)
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
6.協力・分担関係

7.目的
 「ハックナイン」および「つがる」果実の成熟特性、収穫適期、貯蔵温度などの品質保持技術を検討する。

8.試験研究方法
1)果実の成熟に伴う変化(1988年)
 品種:つがる、ハックナイン
2)収穫期および台木が貯蔵中の果実品質に及ぼす影響(1988年)
 品種:ハックナイン、収穫月日:10月12、20、26日、台木:マルパカイドウ・M26、貯蔵温度:1℃
3)収穫適期と貯蔵温度の検討(1989年)
 収穫月日(10月12、21、27日)×貯蔵温度(1、5℃)
4)包装貯蔵に関する試験(1990年)
 品種:つがる・ハックナイン、貯蔵温度:1℃、包装:ポリエチレン、無機多孔質含有ポリエチレン
 保鮮剤:脱酸素剤(S-1000)、炭酸ガスエチレン吸収剤(C-2000)

9.結果の概要・要約
1)「ハックナイン」果実の成熟にともなう果糖やブドウ糖の増加は緩慢であるが、ショ糖の増加は顕著であ
 った。そのため糖度の増加はショ糖の増加によると推察された。また、「つがる」も同様な傾向が認め
 られた。
2)マルパカイドウ台の「ハックナイン」果実はM26台よリ収穫時の酸度と硬度が高く、貯蔵中も高い傾向を
 示した。しかし、1月中旬以降は硬度が急激に低下することから、マルパカイドウ台木の果実が必ずしも長
 期貯蔵に適しているとはいえなかった。マルパカイドウ台果実の食味は淡白で、肉質が硬く粗いため、食
 味の点ではM26台が優れていた(第1表)。
3)「ハックナイン」、「つがる」の最適貯蔵温度は1℃であった。貯蔵温度が5℃では、硬度の低下と油あがり
 が顕著なため、食味が劣った。糖度、酸度については貯蔵温度の違いによる差は見られなかった(第2表)。
4)「つがる」果実をポリエチレン包装貯蔵すると、油あがリがおさえられ、酸度と硬度が高く維持され、鮮度
 保持効果が認められた。また、ポリエチレン包装は「ハックナイン」に対して鮮度保持効果を示した。2月
 以降はポリエチレン包装の有無にかかわらず、一部の果実に内部褐変が認められた。
5)「ふじ」地色のカラーチャートを用い、地色の程度によリ熟度を判定して「ハックナイン」を収穫・貯蔵した
 ところ、カラーチャート3の果実はやや未熟、4の果実は適熟であった。多少色調が異なるが、「ふじ」地
 色のカラーチャートを「ハックナイン」果実の熟度判定に使用可能と考えられた。カラーチャート3.5〜4.0の
 果実であれば、1月末までは商品性が維持できると考えられた。また、カラーチャート4.O以上の果実は年
 内販売が望ましい。

10.成果の具体的数字

第1図  「ハックナイン」の成熟に伴う成分変化(1988年)
A:HSP(塩酸可溶性ペクチン)□
 PSP(ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン)■
 WSP(水溶性ペクチン)
 酸度●−●、リンゴ酸○−○
B:ショ糖□、ブドウ糖+ソルビトール■、果糖
 糖度●−●

第1表  「ハックナイン」の食味評価(1989.1.18)
収穫
月日
台木 袋かけ 酸味 甘味 硬さ 嗜好
1 10.20 M26 3.0 3.4 2.9 3.8
2 10.12 M26 2.3 2.3 2.2 2.8
3 10.20 M26 3.0 2.9 3.3 3.3
4 10.26 M26 2.7 3.1 2.4 2.9
5 10.20 マルバカイドウ 3.0 2.2 3.8 2.6
6 10.26 マルバカイドウ 2.4 2.0 3.4 2.4
パネルは9名
 酸味:1(弱)→3(普通)→5(強)
 甘味:1(弱)→3(普通)→5(強)
 硬さ:1(軟)→3(普通)→5(硬)
 嗜好:1(嫌)、3(普通)→5(好)

第2表  「ハックナイン」の食味評価(1989.12.26)
収穫
月日
貯蔵
(℃)
嫌* 同じ* 好* 嗜好** コメント
1 10.12 1 23 3 0 1 甘味が弱い
2 10.21 1 8 11 7 8  
3 10.27 1 - - - 15  
4 10.12 5 17 9 0 1 やや油あがり
5 10.21 5 10 12 4 1 油あがり
6 10.27 5 10 12 4 1 油あがり
*パネル26名により、3区の果実に対しての嗜好評価を示した。
**6区のうちで一番好きな区

第3表  「つがる」の包装貯蔵(1990.10.31)
処理方法 糖度 酸度
(g/100ml)
硬度
(ポンド)
無包装 13.2 0.22 10.6
ポリエチレン 13.1 0.23 11.9
ポリエチレン+C2000 13.2 0.24 11.6
ポリエチレン+S1000 12.9 0.24 11.8
ポリエチレン+C2000+S1000 13.3 0.23 11.9
無機多孔質含有ポリエチレン 13.0 0.23 12.8
収穫果実 13.0 0.27 11.3

第4表  「ハックナイン」の包装貯蔵(1991.2.7)
カラー
チャート
処理方法 糖度 酸度
(g/100ml)
硬度
(ポンド)
3 無包装 13.5 0.37 10.0
3
3
3
ポリエチレン
ポリエチレン+C2000
ポリエチレン+S1000
12.9
12.6
13.4
0.45
0.40
0.38
10.9
10.3
10.9
4 無包装 15.0 0.33 10.2
4
4
4
ポリエチレン
ポリエチレン+C2000
ポリエチレン+S1000
13.2
13.6
13.2
0.36
0.37
0.33
10.4
10.6
11.0

11.成果の活用面と留意点

12.残された問題とその対応
 予冷条件の検討
 包装資材の検討(フィルムの厚さ)