成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  野菜 野菜 食品 ニンジン 流通利用遺性
          北海道
2.研究課題名  緑黄色野菜の冷凍および加工に関する試験
          ニンジンの冷凍適性に関する試験
3.予算区分  道単
4.研究期間  (平成元年〜3年)
5.担当  中央農試園芸部 流通加工科
6.協力・分担関係

7.目的
 チャンテネー系とナンテス系ニンジンの代表品種の冷凍適性を明らかにする。

8.試験研究方法
(1)ブランチング時間による変化
 供試形態:厚さ1㎝の輪切リ状
 ブランチング時間:湯水(100℃)0、1、2、3、5分間
 調査項目:パーオキシダーゼ活性、全糖含量、直接還元糖含量、硬さ、色調
(2)冷凍、解凍による変化
 供試形態:(1)と同じ
 ブランチング:時間湯水(100℃)3分
 冷凍方法
  液体窒素瞬間冷凍(LN瞬間):液体窒素によリ約40分で-80℃まで冷却
  緩慢冷凍:-40℃、-25℃の冷凍庫中で冷凍
 包装方法:ポリエチレン袋(厚さ30ミクロン)に密封。
 保管温度:-25℃
 保管期間:2〜3ヵ月
 解凍方法:室温自然解凍、沸騰水中でボイル解凍(1分間)
 調査項目:ドリップ率、全糖含量、直接還元糖含量、硬さ、色調、官能検査(甘み、歯切れ、色)
 冷凍、解凍を通じた変化は同一個体を追跡、測定した。

9.結果の概要・要約
(1)ドリップ率…「キャロシー」が最も低く、「紅星」が最も高かった。
(2)糖含量…冷凍前、解凍後にも全糖含量は「向陽2号」が最も高く、直接還元糖含量は「キャロシー」が最も
 高かった。また「紅星」は全糖、直接還元糖含量とも最も低かった。また解凍後の減少率は「向陽2号」が
 他の品種よりも低かった。
(3)硬さ…品種別の解凍後の硬さは、液体窒素瞬間冷凍で「キャロシー」が最も硬く、硬さの減少率も最も少
 なかった。また木部と師部との硬さの違いも「キャロシー」は他の2品種に比べ少なかった。また「紅星」は
 冷凍前は硬いが、冷凍による低下が大きかった。
(4)色調…解凍後の色調は、明度については「キャロシー」、「向陽2号」はあまリ変わらなかったが、「紅星」
 は他の2品種に比べ低かった。また赤色については「向陽2号」が最も強く、黄色は「キャロシー」が最も
 強かった。「紅星」は赤色、黄色とも他の2品種に比べ弱かった。品種別に冷凍前と解凍後の値の差を比
 較すると「紅星」が他の2品種に比べ赤色の低下が大きかった。また黄色は、冷凍により「向陽2号」、
 「紅星」は低下するが、「キャロシー」ほあまリ変化しなかった。
(5)官能検査…基準とした「向陽2号」に比べ、「キャロシー」は歯切れの点で優ったが色の点で劣り、「紅星」
 は甘さ、色の2点で劣った。

 品種別の特徴を比較すると「キャロシー」は「向陽2号」に比べ、ダイスカット調整歩留が高く、冷解凍による硬さの変化(軟化)が少ない。また、肉質が均一で歯切れがよい。しかし、全糖含量が低く、木部と師部の色調の差が大きい。また、解凍後の官能による色の評価が低い。「紅星」は糖含量が低<、甘さに欠け、ドリップ率も高く、冷解凍による軟化が大きい。また、解凍後の官能による色の評価も悪い。
 ナンテス系の代表品種「キャロシー」はチャンテネー系の代表品種「向陽2号」とは冷凍時の特徴が異なるが、総合的な冷凍適性に大きな差はない。目的とする冷凍品の性質に応じて品種選択するのが望ましい。また、「紅星」はこれらに比べ冷凍適性は劣る。

10.成果の具体的数字
表1  供試品種の性状(1)
品種 産地 1本当り
重量(g)
根茎
(cm)
芯部径
(cm)
芯部径
/根径(%)
調整歩留
(%)
キャロシー 中央農試 201 3.95 1.92 48.6 60.7
向陽2号 中央農試 185 5.76 3.57 62.0 58.7
紅星 恵庭市 231 5.43 2.84 52.3 58.3
注)調整歩留は約1cm角ダイスカット調整歩留

表2  洪試品種の性状(2)
品種 水分
(%)
屈折
計示
pH 直接
還元糖
(%)
全糖
(%)
外観
硬度
(g)
L a b
P X P X P X P X
キャロシー 89.76 8.8 6.27 3.94 5.66 橙黄 1967 1929 38.29 28.38 8.14 0.81 13.32 5.22
向陽2号 88.08 10.6 6.31 2.97 6.26 橙赤 2058 1785 36.53 34.11 8.48 3.83 12.20 8.23
紅星 89.08 8.6 6.42 2.79 5.03 2082 1940 35.56 29.56 8.21 1.18 12.51 5.82
注)X:Xylem木部、P:Phieom師部

表3  冷凍による硬さの変化
品種 部位 冷凍前 プランチング後 解凍後
LN瞬間凍結 緩慢凍結(-40℃) 緩慢凍結(-25℃)
N C N C N C
キャロシー P 1967 878
(44.6)
141
(7.2)
94
(4.8)
91
(4.6)
82
(4.2)
106
(5.4)
93
(4.7)
X 1929 1032
(53.5)
160
(8.3)
93
(4.8)
119
(6.2)
91
(4.7)
120
(6.2)
91
(4.7)
向陽2号 P 2058 778
(37.8)
105
(5.1)
68
(3.3)
94
(4.6)
70
(3.4)
109
(5.3)
76
(3.7)
X 1785 965
(54.1)
133
(7.5)
74
(4.1)
117
(6.6)
75
(4.2)
107
(6.0)
67
(3.8)
紅星 P 2082 825
(39.6)
90
(4.3)
68
(3.3)
81
(3.9)
61
(2.9)
101
(4.9)
64
(3.1)
X 1940 1022
(52.7)
141
(7.3)
76
(3.9)
116
(6.0)
83
(4.3)
106
(5.5)
80
(4.1)
注1)解凍方法−N:室温自然解凍、.C:沸騰水中、ボイル解凍(1分)
 2)部位−X:Xylem木部、P:Phloem師部
 3)( )は冷凍前の値に対する比率

表4  官能検査の結果
品種 甘さ 歯切れ
N C N C N C
キャロシー 3 2 4 4 2 2(黄)
向陽2号 3 3 3 3 3 3(橙赤)
紅星 2 1 3 3 2 2(橙)
注1)標準基準「向陽2号」を基準(3)として、5(優)→1(劣)の5段階評価
 2)解凍方法−N:室温自然解凍、C:沸騰水中 ボイル解凍(1分)

表5  冷凍適性の評価
品種 芯部径/根茎 調整
歩留
全糖 均一性 ドリップ率 冷解凍による変化 官能(解凍後) 総合
硬さ 硬さ 甘さ 歯切れ
キャロシー 4 4 2 4 2 3 3 4 3 4 2 3〜4
向陽2号 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
紅星 4 3 2 4 2 3 2 3 2 3 2 2
注)評価基準「向陽2号」を基準(3)として、5(優)→1(劣)の5段階評価

11.成果の活用面と留意点
 調整歩留はサイズによリ多少異なる場合がある。

12.残された問題とその対応
 規格別冷凍適性の評価