7.目的
　ブロッコリーの代表品種の品種別冷凍適性を明らかにする。

8.試験研究方法
(1)ブランチング時間による変化
　供試形態：花蕾部を供試した。
　ブランチング時間：湯水(100℃)30秒、1、2、3分
　調査項目：パーオキシダーゼ活性、直接還元糖含量、総アスコルビン酸含量、クロロフィル含量、硬さ、色調
(2)冷凍、解凍による変化
　供試形態：(1)と同じ
　ブランチング時間：湯水(100℃)2分
　冷凍方法：ニンジンと同じ
　包装方法、保管温度および期間：ニンジンと同じ
　解凍方法：室温自然解凍、沸騰水中ボイル解凍(30秒)
　調査項目：直接還元糖含量、総アスコルビン酸含量、クロロフィル含量、硬さ、色調、
　　　　　　　官能検査(形状、色、歯切れ、食味、脱蕾)

9.結果の概要・要約
(1)直接還元糖含量…冷凍前、解凍後とも「ハイツ」が最も高く、「シャスター」が最も低かった。
(2)総アスコルビン酸含量…「冷凍前、解凍後とも「シャスター」が最も高く、「緑嶺」が最も低かったが、冷解
　凍による減少率は「シャスター」が最も大きかった。
(3)クロロフィル含量…冷凍前、解凍後とも「緑嶺」が最も高く、「シャスター」が最も低かったが、冷解凍によ
　る減少率は「シャスター」が最も少なかった。
(4)硬さ…冷凍前、および液体窒素瞬間冷凍における解凍後の硬さは「シャスター」が最も硬かった。また冷
　解凍による硬さの低下率は「ハイツ」が最も大きく、「緑嶺」が最も小さかった。
(5)色調…冷凍前、解凍後とも明度(L値)、緑色(a値)の強さは「ハイツ」が最も高く、「シャスター」が最も低
　かった。また「シャスター」は解凍後、青色(b値)が強まった。3品種とも冷解凍を通じ明度は低下し、緑色
　は強まった。
(6)官能検査…「緑嶺」を基準とした官能検査の結果、「縁嶺」に比ぺ「ハイツ」は色の点で優るが歯切れが
　悪く、他の項目は同等であった。「シャスター」は形状、歯切れ、食味、脱蕾の項目で「縁嶺」に劣った。

　品種別の特徴を比較すると「ハイツ」は「縁嶺」に比ベアズコルビン酸、直接還元糖含量が高い。また、花蕾の明度、緑色が強く、解凍後の官能による色の評価が良い。しかし、冷凍供試形態(小花蕾)に調整した時の歩留が低い。また、冷解凍による硬さの低下が大きく、歯切れが悪い。「シャスター」はクロロフィル含量が少なく、花蕾の明度、緑色が弱い。また、解凍による脱蕾が多く、食味、歯切れも悪い。ブロッコリーの代表品種である「緑嶺」と「ハイツ」は冷凍時の特徴が異なるが、総合的な冷凍適性に差はない。目的とする冷凍品の性質に応じて品種選択するのが望ましい。また、「シャスター」はこれらに比べ冷凍適性は劣る。

10.成果の具体的数字
表1　　供試品種の性状(1)

品種	全長 (cm)	重量 (g)	花蕾径 (cm)	花蕾の 凹凸	調整 難易度	調整歩留 (%)	茎色	花蕾色
緑嶺	15.82	244.6	10.69	少	やや難	62.2	緑白色	緑色
ハイツ	15.77	289.7	11.40	少	やや難	48.0	緑白色	明緑色
シャスター	15.95	240.5	11.83	やや多	易	63.1	薄緑色	暗緑色

表2　　供試品種の性状(2)

品種	水分(%)	pH	屈折 計示度	直接 還元糖 (%)	総アスコ ルビン酸 (mg%)	クロロフィル (mg%)	色調
							L	a	b
緑嶺	89.6	6.88	7.7	2.20	97.9	52.6	40.0	-4.4	-10.8
ハイツ	89.2	6.85	8.7	2.29	115.5	50.9	44.5	-6.4	-8.1
シャスター	88.7	7.01	9.1	2.14	122.5	38.3	36.8	-3.0	-11.5

注)色調は花蕾の色調

表3　　冷凍による総アスコルビン酸含量の変化(mg%)

品種	冷凍前	解凍後
		N	C
緑嶺	97.9	54.6(55.8)	52.3(53.4)
ハイツ	115.5	61.4(53.2)	59.7(51.7)
シャスター	122.5	62.5(51.0)	60.4(49.3)

注1)解凍方法−N:室温自然解凍、C:沸騰水中ボイル解凍(30秒)
　2)(　)は冷凍前の値に対する比率

表4　　冷凍によるクロロフィル含量の変化(mg%)

			緑嶺	ハイツ	シャスター
冷　 凍 前		a	38.36	37.52	28.66
		b	14.24	13.32	9.66
		a+b	52.62	50.86	38.32
		a/a+b(%)	72.9	73.8	74.8
解 凍 後	N	a	25.74	23.3	21.74
		b	8.46	7.58	6.42
		a+b	33.96(64.5)	30.70(59.1)	28.00(73.1)
		a/a+b(%)	75.8	75.9	77.6
	C	a	28.40	25.34	22.38
		b	9.32	7.98	6.52
		a+b	37.46(71.2)	33.12(65.1)	28.91(75.4)
		a/a+b(%)	75.8	76.5	77.4

注1)解凍方法−N:室温自然解凍、C:沸騰水中ボイル解凍(30秒)
　2)(　)は冷凍前の値に対する比率

表5　　官能検査の結果(解凍後)

品種	形状	色	歯切れ	食味	脱蕾
緑嶺	3	3	3	3	3
ハイツ	3	4	2	3	3
シャスター	2	3	2	2	2

注)評価基準:「緑嶺」を基準(3)として、5(優)→1(劣)の5段階官能評価

表6　　冷凍による色調(L、a、b)の変化

品種	冷　凍　前			解　凍　後
				N			C
	L	a	b	L	a	b	L	a	b
緑嶺	40.0	-4.4	-10.8	35.9 (△4.1)	-5.7 (△1.3)	-10.1 (0.7)	33.6 (△6.4)	-6.8 (△2.4)	-9.2 (1.6)
ハイツ	44.5	-6.4	-8.1	36.3 (△8.2)	-8.1 (△1.7)	-9.1 (△1.0)	38.6 (△5.9)	-7.9 (△1.5)	-9.6 (△1.5)
シャスター	36.8	-3.0	-11.5	34.1 (△2.7)	-5.6 (△2.6)	-16.2 (△4.7)	31.9 (△4.9)	-5.6 (△2.6)	-17.5 (△6.0)

注1)解凍方法−N:室温自然解凍、C:沸騰水中ボイル解凍(30秒)

表7　　冷凍適性の評価

品種	調整 難易	調整 歩留	直接 還元糖	アスコル ビン酸	冷解凍による変化		官能(解凍後)				総合
					硬さ	脱蕾	形	色	歯切れ	食味
緑嶺	3	3	3	3	3	3	3	3	3	3	3
ハイツ	3	2	4	4	2	3	3	4	2	3	3
シャスター	4	3	2	4	3	2	2	3	2	2	2

注)評価基準:緑嶺を基準(3)として、5(優)→1(劣)の5段階官能評価

11.成果の活用面と留意点
・過熟のものは解凍時脱蕾しやすいので冷凍原料としては不適である。
・調整歩留はサイズによリ多少異なる場合がある。

12.残された問題とその対応