1.課題の分類 野菜 花き 栽培 トルコギキョウ 流通・利用 北海道 2.研究課題名 新流通方式に対応した切花の保鮮輸送技術に関する試験 (2)トルコギキョウの保鮮技術に関する試験 3.予算区分 道単 4.研究期間 (平成元年〜平成3年) 5.担当 中央農試園芸部 流通加工科 6.協力・分担関係 |
7.目的
クールコンテナ輸送、低温トラック輸送などの新流通方式に対応したトルコギキョウの保鮮技術を確立する。
8.試験研究方法
・供試品種:嵯峨の紫、嵯峨の雪、あずまの紫、あずまの銀河、あずまの調、酔美人、ホワイト他
・調査方法:処理後想定輪送条件下に保持(輸送シミュレーション)した後水挿し、または処理後ただちに水挿しし品質を経時的に調査した。
1)外観品質;観察により、採花時5〜著しく低下1として5段階評価した。
2)重量減少率;対前回調査時比で示した。
3)色調;測色色差計による
4)花数割合;花質別に割合を算出した。
・試験処理
Ⅰ.輸送適性に関する試験
開花ステージ:慣行より早、慣行、慣行より遅
Ⅱ.輸送前処理に関する試験
1)保鮮剤に関する試験種類;4種、濃度;高、標準・低
2)予冷に関する試験強制通風予冷(終温;3段階)、差圧予冷
Ⅲ.輸送技術に関する試験
1)容器・包装に関する試験容器;3種、包装;3種
2)温度;0〜25℃、7段階方法;水挿し輸送・普通輸送
9.結果の概要・要約
Ⅰ.輸送適性に関する試験
1)葉及ぴ花弁のしおれ、褐変・枯凋は慣行の切り前5よりも開花ステージが進んだ6のほうがはやく
進行した。
2)水挿し5日後の重量減少は切り前4のものが少ない傾向がみられた。
Ⅱ.輸送前処理に関する試験
1)保鮮剤処理
①輸送終了時の花弁のしおれは、どの濃度でも無処理よりも軽度であった。
②花弁のしおれが抑制され鮮度が最もよく保持されたのは、K-20C・500倍処理であった。
2)強制通風予冷
①予冷により輸送中の重量減少が抑制されるので、セリ時の鮮度は良好になると考えられる。
②終温は、8℃では花弁の褐変がみられるので5〜10℃が適当と考えられた。
③冷却速度は差圧予冷、強制通風予冷ともきわめて速く、30分程度で品温は27℃から5℃まで降下した。
Ⅲ.輸送技術に関する試験
1)容器;保湿容器(MCフィルム貼り段ボール箱)は「嵯峨の紫」の重量減少を抑制した。
2)包装;段ポール箱輸送でセリ時の鮮度を良好にするためにフィルム包装は有効で、2軸延伸ポリプロ
ピレンフィルム、ポリエチレンフィルムが効果的であった。
3)輸送温度
①保鮮剤処理した場合、水挿し4日後の良化数割合は5〜15℃にくらべ20〜25℃では明らかに低かった。
輸送適温は、「あずまの紫」「あずまの調」;3〜7℃、「あずまの銀河」;3〜10℃と考えられる。
②水挿し輸送;輸送適温は「嵯峨の紫」「嵯峨の雪」は5〜10℃、「酔美人」「ホワイト」は1〜7℃で、適温で
は5〜7日の花もちが可能であった。
10.成果の具体的数字
表1 切り前と花もち
項目 | 調査月日 | 水挿し日数 | 1℃ | 5℃ | 10℃ | ||||||
早い | 慣行 | 遅い | 早い | 慣行 | 遅い | 早い | 慣行 | 遅い | |||
花弁の褐変 | 9月11日 | 処理終了時 | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5.0 | 5 | 4.9 |
9月12日 | 輸送終了時 | 5.0 | 4.7 | 4.9 | 4.9 | 5.0 | 5.0 | 4.9 | 5 | 4.8 | |
9月13日 | 1 | 5.0 | 4.9 | 4.9 | 4.7 | 5.0 | 5.0 | 4.7 | 4.8 | 4.6 | |
9月15日 | 3 | 4.8 | 4.7 | 4.1 | 4.4 | 4.7 | 4.7 | 4.0 | 4.7 | 4.5 | |
9月17日 | 5 | 4.5 | 3.7 | 3.0 | 3.9 | 4.0 | 3.9 | 3.3 | 3.4 | 3.2 | |
重量減少率 | 9月11日 | 処理終了時 | -4.3% | -3.0% | -3.2% | -3.7% | -4.7% | -3.3% | -3.9% | -3.6% | -3.5% |
9月12日 | 輸送終了時 | 1.7% | 2.3% | 1.9% | 2.4% | 2.4% | 2.5% | 2.4% | 2.8% | 2.6% | |
9月13日 | 1 | -4.2% | -4.9% | -3.5% | -4.2% | -6.5% | -6.3% | -4.1% | -6.1% | -5.6% | |
9月14日 | 2 | -2.1% | -2.4% | -1.1% | -1.4% | -2.8% | -1.8% | -0.5% | -2.4% | -2.8% | |
9月15日 | 3 | -0.9% | -0.6% | -0.4% | -0.7% | -1.6% | -1.2% | -1.1% | -0.8% | -1.5% | |
9月17日 | 5 | -0.1% | 1.1% | 2.2% | 1.5% | 0.2% | -0.2% | 0.8% | 1.0% | 2.1% |
表2 フィルム包装の効果(嵯峨の紫)
項目 | 調査月日 | 採花後日数 | 包装資材(%) | ||
ABC | PE | 無包装 | |||
重量減少率 | 9月13日 | 輸送終了時 | 3.3 | 3.6 | 16.4 |
9月14日 | 1 | -3.8 | -3.2 | -16.0 | |
9月15日 | 2 | -2.3 | -1.5 | 20.5 | |
9月16日 | 3 | -1.4 | -0.6 | 5.5 |
表3 輪送温度と花もち(嵯峨の雪 保鮮剤処理)
項目 | 調査月日 | 日数 | 輸送温度(%) | ||||
5℃ | 10℃ | 15℃ | 20℃ | 25℃ | |||
重量減少率 | 9月12日 | 処理終了時 | -5.3 | -6.4 | -5.9 | -6.4 | -5.4 |
9月13日 | 1 | 11.3 | 7.6 | 9.9 | 11.5 | 16.6 | |
9月14日 | 2 | -11.5 | -7.8 | -9.9 | -13.2 | -18.4 | |
9月15日 | 3 | -1.8 | -1.4 | -1.0 | -1.4 | -1.1 | |
9月16日 | 4 | -0.2 | -0.8 | -0.1 | -0.7 | -0.6 | |
良花数割合 | 9月14日 | 2 | 42.1 | 70.0 | 54.5 | 40.0 | 25.0 |
9月15日 | 3 | 34.8 | 70.0 | 59.1 | 35.3 | 11.8 | |
9月16日 | 4 | 8.0 | 19.0 | 17.4 | 15.0 | 14.3 |
11.成果の活用面と留意点
保鮮剤の有効濃度は花の状態によって異なるので産地での確認が望ましい。
12.残された問題とその対応