成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  野菜 花き 栽培 スターチス 流通・利用
          北海道
2.研究課題名  新流通方式に対応した切花の保鮮輸送技術に関する試験
          (5)スターチスの保鮮技術に関する試験
3.予算区分  道単
4.研究期間  (平成元年〜平成3年)
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
6.協力・分担関係

7.目的
 クールコンテナ輸送、低温トラック輸送などの新流通方式に対応したスターチスの保鮮技術を確立する。

8.試験研究方法
・供試種類:シヌアータ、ハイブリッド
・調査方法:処理後想定輪送条件下に保持(輸送シミュレーション)した後水挿し、または処理後ただちに水挿しし品質を経時的に調査した。
 (1)外観品質;観察により採花時5〜著しく低下1として5段階評価した。
 (2)重量減少率;対前回調査時比で示した。
 (3)花数割合;開花数、閉花数の実数
・試験処理
Ⅰ.輸送前処理に関する試験
 (1)保鮮剤処理 種類;3種、濃度;高・標準・低処理、時間;短・長、処理時温度;低・中・高
 (2)予冷 強制通風予冷 終温;1〜25℃、5段階、差圧予冷、予冷後温度;高・中
Ⅱ.輸送技術に関する試験
 (1)容器・包装に関する試験 容器;3種、包装;有・無
 (2)温度条件に関する試験 0〜30℃、7段階、方法;水挿し輸送・普通輸送

9.結果の概要・要約
Ⅰ.輸送前処理に関する試験
(1)保鮮剤処理
 ①シヌアータについては標準濃度〜標準濃度の1/2の低濃度でよいが、ハイブリッドについては標準濃度
  以上が適当と考えられた。
 ②シヌアータ;保鮮剤処理時の温度20〜25℃では翼の黄化が進み、低温下での処理にくらべ花もち期間
  は2日短くなった。処理終了時の開花数は20℃で最も多く、5〜15℃では皆無となり、水挿ししても開花に
  3〜5日を要した。ハイブリッド;5℃での処理が有効で10〜25℃処理区にくらへ鮮度保持期間は4〜5日
  長くなった。
(2)強制通風予冷
 ①予冷により翼の黄化、萼の鮮度低下が抑制された。予冷後温度10℃の場合は1〜15℃、20℃の時は
  1〜10℃が適正終温と考えられた。
 ②予冷効果は予冷後15℃では持続したが、25℃では消失した。予冷後はただちに保冷する必要がある。
Ⅱ.輸送技術に関する試験
(1)容器:5℃では2軸延伸ポリプロピレンフィルム巻き、発泡スチロール箱、MCフィルム貼り段ポール箱詰
 めの重量減少は段ボール箱詰めの1/2〜1/3であった。10℃では発泡スチロール箱、MCフィルム貼り段
 ポール箱詰めにより重量減少は抑制されたが、鮮度は低くなった。
(2)水挿し輸送温度:シヌアータ;水挿しすると、1〜10℃で4日、15〜25℃で3日は鮮度保持できた。
 ハイブリッド;重量減少は1〜10℃では抑制されたが15〜25℃では著しかった。1〜5℃が花のしおれ、
 褪色抑制に最適であった。

10.成果の具体的数字
表1  保鮮剤処理時の温度と花もち(ハイブリッド)
項目 調査月日 水挿し日数 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 25℃
保鮮剤 保鮮剤 保鮮剤 保鮮剤 保鮮剤

 
10月25日 処理終了時 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 4.0 4.3 4.5
10月26日 輸送終了時 3.7 4.0 3.5 4.5 4.5 4.5 4.0 3.0 3.3 3.0
10月27日 1 4.7 3.7 4.0 5.0 4.5 2.5 3.0 2.0 3.3 2.0
10月28日 2 4.0 3.0 3 3.0 3.0 2.5 3.5 2.5 3.3 1.0
10月29日 3 3.7 3.0 3.0 3.0 3.0 2.5 3.0 2.0 2.7 1.0
10月31日 5 3.7 1.7 3.0 1.0 3.0 - 3.0 1.0 2.3 1.0




10月25日 処理終了時 -4.6% 0.3% -7.2% 5.3% -7.2% 3.9% -7.7% 3.7% -5.2% 3.7%
10月26日 輸送終了時 9.5% 3.3% 8.1% -2.8% 7.8% 5.2% 13.3% 9.0% 8.4% 7.4%
10月27日 1 -10.7% -0.5% -7.3% 0.6% -8.6% -3.1% -12.6% -5.0% -9.3% -3.0%
10月28日 2 -0.8% -2.2% -0.2% 3.1% -0.7% -3.3% 0.1% -2.2% 0.9% 0.2%
10月29日 3 2.5% 3.3% 1.5% 3.9% 1.5% 2.6% 0.5% -1.3% 2.5% -1.3%
10月30日 4 6.9% 4.6% 6.7% 0.3% 5.4% 6.6% 3.1% 4.0% 5.0% 3.7%
10月31日 5 1.3% 2.6% 2.7% 7.8% 3.0% 3.3% 4.4% 2.1% 4.4% 2.8%
11月1日 6 5.8% 5.9% 4.6% 1.0% 5.9% 6.3% 4.6% 6.1% 6.2% 5.4%
11月2日 7 0.8% -0.8% 1.8% 3.9% 2.1% 1.4% 11.3% -0.9% 12.7% -0.8%

表2  温度と花もち(採花し20℃に23時間保持後各温度で水挿し ミスティープルー)
項目 調査月日 水挿し日数 無包装 包装
1℃ 5℃ 10℃ 15℃ 25℃ 1℃ 5℃ 10℃ 15℃ 25℃
総合 10月4日 輸送終了時 5.0 4.8 4.8 4.5 2.0 5.0 4.3 5.0 4.8 2.0
10月5日 1 3.8 4.3 2.8 3.3 1.8 3.8 3.3 4.5 3.0 2.0
10月6日 2 3.0 3.5 2.3 3.3 1.8 4.0 2.5 2.8 3.0 2.0
10月8日 4 2.3 2.5 1.8 2.0 1.0 2.5 1.8 2.3 1.5 1.0
10月9日 5 1.8 2.0 1.0 1.5 1.0 1.5 1.3 1.3 1.0 1.0
重量減少率 10月4日 輸送終了時 8.8% 10.2% 11.0% 16.0% 27.0% 5.5% 6.9% 10.7% 13.1% 24.9%
10月5日 1 -9.7% -10.7% -6.2% -9.4% -1.6% -6.4% -5.2% -8.8% -7.2% -4.9%
10月6日 2 0.7% 1.2% 3.4% 2.4% 6.4% 2.2% 2.5% 3.2% 3.6% 7.1%
10月8日 4 6.5% 8.0% 4.8% 6.1% 7.5% 5.0% 4.6% 6.4% 4.7% 9.2%
10月9日 5 5.5% 3.4% 1.6% 2.6% 2.2% 3.8% 2.8% 1.9% 3.5% 4.4%

11.成果の活用面と留意点
 保鮮剤の有効濃度は花の状態によって異なるので産地で確認することが望ましい。

12.残された問題とその対応
 (1)切り前と花もちの関係の確認
 (2)低温保持による開花数減少の防止対策