1.課題の分類 分類番号 整理番号 2.場所名 農林水産省北海道農業試験場 3.品種名 キイチゴ(ラズベリー)「ヌートカ」 |
4.来歴
本品種は、カナダ農務省農業研究所において「カーニバル(Carnival)」×「ウイラーメット(Willamette)」の交配実生より選抜、育成され、1978年に発表された。1980年に恵泉女学園短期大学の松井仁氏により日本へ導入され、1983年に北海道農業試験場へ配布された。
5.特性の概要
(1)樹性…樹姿は直立開張性であり、樹勢は強く、耐寒性も強い.樹高は「ラーザム」とほぼ同等であるが、
樹幅はより広い。休眠枝は「カスバート」と同程度で太い。
(2)生育相…札幌における発芽期は4月22日前後で、展葉期は5月2日前後であり、「セプテンバー」より5〜7
日遅く、「カスバート」と同時期である。開花始めは6月20日前後で、「セプテンバー」より約10日遅く、
「ゴールデン・クィーン」より約1週間早い。
(3)熟期…果実の成熟始めは7月22日前後で、「セプテンバー」より12日遅く、「ゴールデン・クィーン」より8日
早く、収穫期は対照品種の「ラーザム」「カスバート」「ゴールデン・クィーン」とほぼ同じ7月下旬〜8月下旬
である。
(4)生産性…1株当たりの年平均収量は3.2kgで、二季成りの「セプテンバー」の合計収量と同等かやや劣る
が、その他の対照品種より多収である。
(5)果実品質…果実の形は長円錐形で、果色は成熟すると暗紅色になる。
果実の大きさは二1果平均重で3.4g、最大粒平均量6.6gであり、いずれの対照品種より大きく、優って
いる。果粒の揃いも良好である。
果実の硬度は「カスバート」並であり、その他の対照品種より硬く、収穫後の果形が崩れにくい。
Brixは11%、クエン酸含量は2.0g/100ml前後あり、食味は甘味強く、良好である。
6.試験成績概要
第1表 北海道農試における樹の特性、生態及び収量
品種名 | 樹姿 | 樹勢 | 耐寒性 | 発芽期 (月日) |
展葉期 (月日) |
開花始 (月日) |
着色始 (月日) |
成熱始 (月日) |
収穫期間 (月日) |
収量 (㎏) |
ヌートカ | 直立開帳 | 強 | 強 | 4.22 | 5.2 | 6.20 | 7.19 | 7.22 | 7.21〜8.25 | 3.2 |
セプテンバー (二季成り) |
直立開帳 | 中 | 強 | 4.17 - |
4.25 - |
6.9 8.11 |
7.7 9.4 |
7.10 9.7 |
7.10〜8.22 9.8〜11.1 |
2.3 1.3 |
ラーザム | 直立開帳 | 強 | 強 | 4.20 | 5.1 | 6.24 | 7.23 | 7.26 | 7.25〜8.25 | 2.3 |
フレミング・ジャイアント | 直立開帳 | 中 | 強 | 4.17 | 4.26 | 6.14 | 7.9 | 7.12 | 7.11〜8.18 | 1.5 |
カスバート | 直立開帳 | 強 | 強 | 4.21 | 5.1 | 6.25 | 7.25 | 7.28 | 7.24〜8.24 | 1.6 |
ゴールデン・クィーン | 直立開帳 | 強 | 強 | 4.20 | 5.1 | 6.26 | 7.27 | 7.30 | 7.26〜8.28 | 2.8 |
第2表 北海道農試における果実形質
品種名 | 果形 | 果色 | 平均 果量 (g) |
最大 果重 (g) |
果実の 揃い |
果実の 香り |
果実の 硬さ |
Brix (%) |
クエン酸* |
ヌートカ | 長円錐 | 暗紅 | 3.4 | 6.6 | 良 | 多 | 硬 | 10.8 | 1.97 |
セプテンバー (二季成り) |
半円 | 鮮紅 | 2.4 2.3 |
4.5 4.8 |
中 | 多 | 中 | 9.7 11.1 |
2.26 - |
ラーザム | 半円 | 暗紅 | 2.1 | 4.1 | 劣 | 多 | 軟 | 9.5 | 1.55 |
フレミング・ジャイアント | 半円 | 暗紅 | 1.8 | 3.8 | 劣 | 多 | 中 | 9.1 | 1.58 |
カスバート | 短円錐 | 暗紅 | 1.8 | 3.4 | 中 | 極多 | 硬 | 12.1 | 1.46 |
ゴールデン・クィーン | 短円錐 | 黄 | 1.8 | 3.5 | 中 | 極多 | 硬 | 12.0 | 1.31 |
第3表 現地における収量及び果実品質
品種名 | 士別 | 余市 | ||||
収量 (kg) |
平均果重 (g) |
Brix (%) |
収量 (kg) |
平均果重 (g) |
Brix (%) |
|
ヌートカ | 2.7 | 2.2 | 10.0 | 2.1 | 2.6 | 13.1 |
セプテンバー | 2.1 | 1.9 | 9.6 | 1.0 | 2.0 | 10.9 |
ラーザム | 3.0 | 1.9 | 10.7 | 2.2 | 2.3 | 11.3 |
フレミング・ジャイアント | 2.7 | 1.8 | 8.6 | 2.5 | 2.4 | 8.9 |
カスバート | 2.1 | 1.8 | 12.4 | 2.2 | 1.9 | 13.0 |
ゴールデン・クィーン | 1.8 | 1.6 | 11.0 | 1.9 | 1.6 | 12.4 |
7.普及対象地域
北海道の果樹栽培地帯全域
8.保有種苗
士別、余市の現地を含めて100株
9.栽培上の留意点
(1)キイチゴは前年に地際から伸長した新梢に結実し、結実レた枝は収穫後で枯死するため、翌年の結果
母枝(親茎)を確保する必要がある。
(2)整枝・せん定は融雪直後に行い、地上80〜1OOcmで切りつめ、株仕立ては1株に強い結果母校(親茎)
を7〜10本とする。
(3)ナミハダニの発生に注意する。