成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥科
          食品 豆類 品質評価
          北海道 畑作
2.研究課題名  北海道産小豆の品質現況と製あん特性の二、三の評価(豆類の加工適性向上試験)
          (1)アン用豆類の加工適性評価基準設定試験
3.予算区分  道費(豆基)
4.研究期間  昭和62年〜平成3年
5.担当  中央農試 農芸化学部 農産化学科
6.協力・分担  中央農試専技室・十勝農試豆類第二科
         植物遺伝資源センター資源第一科

7.目的
 北海道産小豆の品質現況を把握すると同時に、小豆の外観並びに内部品質成分の解析を行って、製あんに係わる品質特性を解明し、北海道産小豆の加工適性の向上と需要拡大に寄与する。

8.試験研究方法
(1)供試試料
 ①十勝農試栽培小豆15点 ②滝川遺伝資源センター産小豆5点
 ③一般農家圃場小豆543点(製あん451点) ④市販加糖あん30点
(2)分析・測定方法
 ①色:小豆(複粒法)またはあんをガラスセルに詰め、色彩色差計で明度(L*)、赤味度(a*)、黄味度(b*)を
  測定し、彩度(C*)を算出。
 ②タンパク含有率:ケルダール法にて全窒素含有率を求め、これに6.25を乗じて算出。
 ③製あん:小豆50gに3倍量の水を加え、オートクレーブ内で100℃、70分煮熟後の重量増加比を測定し
  (煮熟増加比)、0.5㎜のフルイ上でつぶして種皮を分離、水洗、さらしでしぼった。
  なお、本試験での製あん歩留まりは、一定煮熟時間におけるあんの回収率を表す。
 ④加糖あんの調製:生あん100gに上白糖75gの割合で加え、加熱し練った。
 ⑤あん粒径組成:島津レーザー回折式粒度分布測定装置により分析。

9.結果の概要・要約
(1)道産小豆の品質現況
 ①全道各地から収集した小豆の百粒重、煮熟増加比、種皮色、タンパク合有率には大きなバラツキが認
  められた(表1)が、年次間差による影響も大きかった。
 ②一般農家圃場産の小豆種皮色は各値とも普通小豆で高く、中でもa*値、b*値、C*値はエリモショウズ
  で高い傾向がみられた。煮熟増加比はハヤテショウズがやや大きかった。
 ③エリモショウズの地域間比較を行った結果、百粒重、種皮色、タンパク含有率に差が認められ、十勝産
  小豆は概して百粒重およびタンパクが高く、明るく鮮やかな種皮色を示す傾向にあった。
(2)製あん特性の評価
 ①一定の煮熟時間では、煮熟増加比の大きな小豆ほど製あん歩留まりが高かった(図1)が、百粒重の大
  きい小豆や種皮タンパクの高い小豆では煮熟増加比が小さくなる傾向がみられた。しかし、煮熟増加
  比の小さい小豆でも煮熟時間を長くし、煮熟増加比を2.6前後にすると加工メーカーと同程度の製あん
  歩留まりが得られると考えられた。また、煮熟増加比2.6を得るためには、普通小豆では2時間程度、
  大納言では2.5時間程度の煮熟時間が必要であると判断された。
 ②生あんの色は種皮色に比べ、L*値は高くなり、a*値、b*値、C*値は低下したが、L*値、a*、C*値で
  は、生あん色と種皮色との間に正の相関関係が認められた。そこで、生あんの色を判断する目安とし
  て、種皮色のL*値を「明るい・標準・暗い」に、a*値を「赤味度高い・標準・赤味度低い」に3区分した(表
  2)。この区分による生あんのL*値およびa*値は明らかに異なり、また、加糖した場合にも依然として、
  種皮色の区分によるあん色の差異は認められた。
 ③あん粒子の食感について官能検査を行った結果、粒径の大きいあんではザラザラし、中程度のあんで
  は平均的な評価で、粒径の小さなあんはなめらかで良いという評価を得た(図2)。
 ④あん粒子の粒径組成は分布パターンの相違から3タイプに区別され(図3)、そのあん粒径や官能検査
  および市販あんの調査詰果(表3)から、タイプAは一般的なこしあん、タイプBはクリーミーなこしあん、タ
  イアCは小倉あんに適すると判断された。
 ⑤原粒タンパクが高いほどあん粒子タンパクは高くなり(図4)、百粒重も増加した。また、百粒重の増加に
  つれてあん粒径も大きくなる傾向がみられた。なお、原粒タンパクと種皮タンパクには一定の関係は認
  められなかった。
 ⑥このように、煮熟増加比の大小は製あん歩留まり、種皮色はあん色、百粒重はあん粒径、原粒タンパ
  クは百粒重とあん粒径に影響していることが明らかになった。したがって、小豆の製あん特性の評価に
  はこれらの項目が品質評価指標になると判断された。

10.主要成果の具体的数字
表1  道産小豆の品質概況
調査項目 最小〜最大 平均値
百粒重(乾g) 7.0〜26.6 13.1
煮熟増加比 1.61〜2.70 2.38
種皮色L*値 22.3〜34.1 27.7
種皮色a*値 16.0〜28.3 23.7
種皮色b*値 7.6〜17.2 12.7
種皮色C*値 17.9〜32.8 26.7
タンパク含有率(%) 17.3〜28.2 24.0
(昭和62・平成元・2年産小豆543点)

表2  種皮色の明度・赤味度の評価指標値
項 目 区   分
L*値(明度)  27以下(暗い)←27〜30(標準)→30以上(明るい)
a*値(赤味度) 21以下(赤味度低い)←21〜26(標準)→26以上(赤味度高い)

表3  道産小豆および市販あんの粒子組成タイプとあん粒径
粒子組成タイプ 平均粒径(μm) 度数(点) あんの種類
(原料小豆の特徴)
平2年産 市販あん 平2年産 市販あん
A 101 100 215 20 一般的なこしあん
(普通小豆の大部分)
B 95 91 15 1 クリーミーなこしあん
(普通小豆の一部)
C 116 107 19 9 主として小倉あん
(大納言系に多い)

図1  煮熟増加比と製あん歩留まりの関係(平成2年産小豆、n=249)

図2  あん粒径組成とあんの舌ざわり(エリミショウズ)

図3  あん粒径組成のパターン(平成2年産小豆、n=249)

図4  原粒タンパクとあんタンパクの関係(平成2年産小豆、n=249)

11.成果の活用面と留意点
(1)本評価指標の適用は、当面収穫後夏を経過しない生産物を対象とする。
(2)本試験の生あん色は、シブ切りを行っていない。

12.残された問題とその対応
(1)外観品質(種皮色、粒重)に影響を及ぼす、環境要因の解析
(2)あん粒子構成成分(デンプン、タンパク質)の特性解明
(3)風味構成成分の検索
(4)貯蔵中における小豆品質の変動