成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 3-2-1-a
          北海道
2.研究課題名  バーク堆肥(針葉樹主体)の障害性簡易判定法
          (小豆品質向上のための有機物管理基準設定試験)
3.予算区分  道費(豆基)
4.研究期間  平成元年〜3年
5.担当  北海道立十勝農業試験場 土壌肥料科
6.協力・分担関係  十勝農業組合連合会

7.試験目的
 充分に腐熟していないバーク堆肥は、作物の生育に対し阻害的に作用する物質を含んでいたり、無機態窒素を有様化する恐れがある。バーク堆肥の堆肥化指標については昭和57年度の指導参考成績(林産廃棄物の堆肥化指標と畑地への施用法)で提示されているが、今回は簡易分析器具の利用を始めとした、より簡便な方法による障害性判定法について検討した。

8.試験研究方法
1)針葉樹主体バーク堆肥の障害性と化学分析値の関係
 (1)供試堆肥:十勝地方の畑作農家から収集した針葉樹主体のバーク堆肥を供試。
 (2)分析方法:①窒素無機化量:培養試験、②発芽、発根阻害:コマツナを用いたシャーレ上での発芽・発
  根試験、③簡易分析NH3、COD:生堆肥に1:5の割合で脱塩水を加え室温で30分間振とう後ろ過し
  た。ろ液を6倍に希釈し、簡易分析器具パックテストCOD、NH3(共立理化学研究所)で測定を行っ
  た。脱塩水の水温は約20℃とした。色調が「変色標準色」の中間である場合には中間値として読み取
  り、分析値は希釈倍率(×30)をかけて、現物当りのppmとして表示した。
2)簡易分析の抽出条件:抽出時の液温、振とう方法、振とう時間の影響を検討。
3)堆肥の腐熟過程での化学分析値の変化:鶏糞、牛糞と針葉樹主体バークを3:7の割合で混合、堆積した
 ものから経時的に試料を採取して分析した。
4)障害性と官能評価法の関係:触感、視覚、および臭覚(割れ方、腐食、臭い)を数値化して、バーク堆肥の
 障害発生との関係を検討

9.結果の概要
1)針葉樹バーク堆肥の障害性と化学分析値の関係
 ①収集した堆肥49点中、10点に発芽、発根阻害が、また、18点に窒素有機化が認められた。窒素無
  機化量の比較的多い堆肥には発芽阻害が認められなかった。
 ②発芽、発根阻害を示す堆肥と、示さない堆肥の各分析項目の平均値を比較したところ、その差が最も
  有意であった項目は、簡易分析NH3であり、ECがこれに続いた。簡易分析NH3の分析値150ppm
  以上で、発芽、発根阻害がおこると仮定すると、障害発生の有無をかなり高い確率(適合率=92%)で推
  定することができた。
 ③窒素無機化量と量も高い相関を有していた分析項目は簡易分析CODであり、簡易分析NH3、ECが
  これに続いた。簡易分析CODの測定値が900ppm以上で、窒素有機化が起こると仮定すると、窒素有
  機化の有無を適合率=85%で推定することができた。
2)簡易分析の抽出条件
 ①密栓可能な容器に堆肥を秤量し、20℃に調節した脱塩水を5倍量加え、数回手で振とう後30分間静
  置し、1分間手で激しく振とう後ろ過することによって、試験方法に示した方法と同等の簡易分析値を得
  ることができた。抽出液の水温が10℃では抽出効率が低下するが、水道水の使用は問題がなかった。
3)堆肥の腐熟過程での化学分析値の変化
 ・簡易分析NH3、CODは、それぞれ約4ケ月、12ケ月後には、障害が起きないと考えられるレベルま
 で、低下した。
4)障害性と官能評価法の関係
 ・官能評価値は、簡易分析COD、NH3の分析値および、堆肥の障害発現の有無とよく一致していた。
 すなわち、表面が腐食していない堆肥、繊維方向に対し直角に割れない堆肥、糞尿臭が強い堆肥に
 は、ほとんどの場合障害が認められた。

10.主要成果の具体的数字

図1  発芽阻害と簡易分析NH3の関係
 ○:発芽阻害なし、●:発芽阻害あり

図2  窒素の無機化、有機化と簡易分析CODの関係
 注)内は標準色の読み値

図3  官能評価値と障害発生の関係
 注)グラフ中の数字は以下の基準による官能評価値を示した。
  割れ方(w):繊維と直角方向で割れる(3)、中間(2)、割れない(1)
  腐食(s):中まで腐食(3)、腐食しているが芯はまだ(2)、表面も腐食していない(1)
  糞尿臭(f):堆肥臭あり(3)、糞尿臭弱い(2)、糞尿臭強(1)

図4  針葉樹主体バーク堆肥の障害性簡易判定法の模式図
 《簡易分析のための抽出法》
  ①抽出液は水道水でも可。冬季には熱湯で20℃に調節。
  ②密栓可能で、洗浄な容器に堆肥を秤量。5倍量の抽出液を入れる。
  ③数回振とう後、30分間静置。1分間手で激しく振とうし、ろ過する。
  ④ろ液1に対し、5の割合の水道水を加えて、希釈する。
  ⑤希釈液を分析に供する。(冬季には①〜⑤の操作を室内でおこなうことが望ましい。)

11.普及上の留意点
(1)針葉樹と広葉樹では分解特性が著しく異なるので、本成績は、針葉樹主体バーク堆肥のみに適用
 される。
(2)本成績は乾物率20〜40%程度のバーク堆肥に適用する。