成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 2-1-1
          北海道
2.研究課題名  水稲成熟期の止葉葉色値による米粒蛋白含有率の簡易判定法
          (北海道米の食味水準向上技術の開発)
3.予算区分  道費
4.研究期間  昭和60、63、平成2、3年
5.担当  中央農業試験場稲作部栽培第一科 上川農業試験場土壌肥料科
6.協力・分担関係

7.目的
 良食味米生産を毎年確実に行うには、その年に用いた肥培、栽培管理技術の評価と次年度に的確な営農技術計画を立てる事が必要である。食味に影響する米粒中の蛋白含有率を立毛状態で簡易に判定する事を目的として、カラースケール、葉緑素計SPADを用いた成熟期の葉診断法を設定しようとする。

8.試験方法
(1)中央農試稲作部栽培第一科
 昭和60、63年に新十津川町、平成3年に空知、石狩、日高、胆振、渡島、桧山支庁管内で「きらら397」
 「ゆきひかり」について調査した。
(2)上川農試土壌肥料科
 平成2、3年に上川、留萌管内の3地区115戸の農家圃場を「きらら397」「ゆきひかり」について調査した。
 場内窒素用量試験区のきらら397を用いて測定条件に関する検討を行った。

9.結果の概要・要約
1)成熟期における止葉中のクロロフィルa、bと米粒蛋白含有率が密接な関係にあることを明らかにし、こ
 の時期の葉色診断によって米粒中の蛋白含有率を簡易に予測できることを知った。
2)そこで、成熟期の葉診断方法を検討し、その具体的手法を次の通りとした。
 (1)成熟期前後の葉色はわずかであるが変化しており、判定時期を成熟期に限定する。
 (2)測定葉位は止葉とし、測定位置を葉の縦横の中央部分とする。
 (3)測定の個人差は小さく、SPAD501、502の差も少ない。
 (4)カラースケール(y)とSPAD502(x)の間には極めて高い相関が認められる。
   r=0.933***(n=272)  回帰式 y=0.114x-0.441である。
 (5)目標精度(SPAD:±1.0、カラースケール:±0.15)に必要な測定回数は10回である。
3)葉色と米粒蛋白含有率の関係を評価するには、「きらら397」「ゆきひかり」を区別して取り扱う必要がな
 い。生産地域、生産年度によって、わずかに変動することもあったので、活用に当たってはこの点に注意
 すべきである。
4)成熟期止葉のカラースケール値(x1)、SPAD値(X2)から米粒蛋白含有率(y)を予測する場合の換算式
 は、y=0.132X2+3.89、y=0.845x1+5.2である。
5)米粒蛋白含有率の改良目標値(8%)及び府県産米並の蛋白含有率にした努力目標値(7%)より葉色診断
 の指標値を作成した。SPAD値20未満をA(良)、20以上35未満をB(普通)、35以上をC(不)とし、カラースケ
 ール値2.0未満をA、2.0〜3.5未満をB、3.5以上をCとした。
6)以上のことから、成熟期の葉色診断によって、立毛状態で簡易に米粒蛋白含有率を判定できる。このこ
 とより肥培管理技術の食味特性値に対する適否を立毛中に判断することが可能となった。

図3  2成熟期葉色の診断方法とその評価

11.成果の活用面と留意点
 1)この技術の活用はその年に用いた肥培管理技術が食味に有利であったかどうかの評価を農業者が判
  断でき、それ以後の営農技術計画の立案に役立つ。
 2)この葉診断法は、簡易判定法であり換算式で求められた米粒蛋白含有率はあくまでも目安となるもの
  である。
 3)測定に当たっては、先端部からの葉沽れ、褐変、煤症状などの汚れた止葉は避ける。
 4)地域毎の診断はそれぞれの回帰式を用いて行うことも可能である。

12.残された問題点とその対応
 1)「きらら397」「ゆきひかり」以外の品種に適用できるかどうかの検討。
 2)蛋白含有率を低める具体的技術の整理と実証。