成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 3-1-2
          北海道 113252
2.研究課題名  水田の窒素動態モデルによる追肥の要否判定
3.予算区分  道費
4.研究期間  昭和60年〜平成3年
5.担当  上川農業試験場 土壌肥料科
6.協力・分担関係  上川専技室、上川・留萌管内各普及所

7.目的
 土壌の窒素肥沃度や気象変動を加味した出穂期における水稲N保有量の予測システムを作成し、これを利用して分追肥の要否を判定しようとする。

8.試験方法
1)圃場試験
 試験年次:昭和60年〜平成3年/試験地の土壌型:暗色表層褐色低地土(永山農試)、褐色低地土(東川)
 灰色低地土(当麻・士別)、グライ土(鷹栖)/供試品種:キタアケ、ともひかり、ゆきひかり、きらら397/
 試験設計:窒素用量試験N:0、4、6、8、10、12、14㎏/10a/追肥試験:(場内)
2)窒素診断調査
 試験年次:平成2、3年/調査地域:上川・留萌管内/品種:ゆきひかり、きらら397/追肥試験:(場内)/
 重要定点:92、一般定点:162地点

9.結果の概要・要約
 良質米生産と密接な関係にある、分追肥の要否を合理的に判定するために、土壌および水稲のN動態モデルに関する検討を行い、モデルを利用した診断システムを提案した(図1)。
1)土壌中の無機態N、水稲N保有量などを記述するN動態モデルを以下の試験結果をもとに作成した。
 (1)生土からのN無機化は温度に依存する1次反応式に適合したが0次反応で近似でき、20℃及び30℃、
  28日間の培養試験で評価できた。
 (2)乾土からのN無機化速度は極めて速く、乾土効果の発現は1次反応式に適合した。
 (3)水稲のN吸収速度を、Michaelis-Menten式に適合させ、土壌型別、時期別のパラメータを決定した。
 (4)水稲の発育速度はノンパラメトリック法により、日平均気温との関係を明らかにした。
2)作成したN動態モデルによるシミュレーションにより、総籾数と密接な関係にある出穂期の水稲N保有量
 が予測でき(図2)、これを基にしたN追肥の要否判定法を提案した(図3)。

10.結果の具体的数字

図2  水稲N保有量の予測

図3  既応の土壌診断注2との組合せによる分追肥の要否判定
    (予測出穂日が晩限日−3を超えない場合)
注1)総籾数3.2(きらら397)及び、3.5(ゆきひかり)万粒/㎡に相当。
  2)水田土壌の窒素診断基準とこれに基づく施肥対応(平成元年指参、上川農試)
  3)---:褐色低地土・グライ土、──:暗色表層褐色低地土・灰色低地土

11.成果の活用面と留意点
 1)上川中南部地域の泥炭土を除く、低地土に限定する。
 2)全層施肥、中苗移植栽培に限定する。
 3)追肥量は当面2㎏/10aを限度とし、追肥時期は幼穂形成期から1週間以内とする。

12.残された問題点とその対応
 1)窒素動態モデルによる施肥診断ソフトのHARISへの移植及びメッシュ気象システムとの連動
 2)乾物生産動態モデルの作成
 3)地力窒素及ぴ気象に合致した最適基肥窒素量の推定