成績概要書(作成 平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 5-2
          北海道 土肥・環 稲作、家畜草地合同
2、研究課題名  パソコンによる水田および草地の土壌診断、施肥設計システム
           ┌クリーン農業実現のための土壌および栽培管理技術の確立
           └水田・草地の土壌肥沃度に対応した施肥設計支援システム
3.予算区分  道費
4.研究期間  平成3年
5.担当  道立中央農業試験場稲作部栽培第1科/道立上川農業試験場土壌肥料科
      道立根釧農業試験場土壌肥料科/道立天北農業試験場土壌肥料科・泥炭草地科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 現行の施肥診断システム(畑および野菜畑)の対象作物を水田・草地に拡大し、もって農作物の品質向上とコスト低減を図るとともにクリーン農業を支援する。

8.試験研究方法
1)普及所に配属されているNEC5200シリーズを対象とし、フロッピーディスクで運用する方法とし、プログラ
 ムは委託開発した。
2)「北海道施肥標準」「土壌および作物栄養の診断基準」「土壌診断に基づく施肥対応」および関連する指
 導参考事項をファイル化し、演算論理を作成し診断要素量を算出する。。
3)診断要素量を充足する土壌改良資材、単肥、化成肥料の種類および量を算出する。
4)以上、畑および野菜畑の既往のシステムを準用、拡充する。

9.結果の概要・要約
【水田】
1)窒素、リン酸、カリの三要素について、標準施肥量をもとに各テーブルを施肥倍率表に変換し、各要素の
 肥沃度、土壌型に対応した診断施肥量を算出することとした。
2)窒素診断による施肥設計が可能な地域は限られているが、窒素診断値がなくても窒素施肥法の選択が
 できる出力とした。
3)側条施肥における窒素施肥指導指針の生育・収量の安定区分と施肥標準の地帯区分との対応が不明
 であったが、1970〜1990年の21カ年のうち、冷害年5年を除く16カ年の平均収量と変動係数により496㎏
 以上で且つCV15%以下を「安定地帯」、470〜495㎏を「やや不安定地帯」、469㎏以下のところを「不安定
 地帯」に区分し、水稲栽培実績のある市町村をこの3区分のいずれかに格付した。
4)育苗床土の土壌診断票と施肥設計票は同一用紙に出力し、水田の診断と施肥設計から切り離した。
【草地】
1)「畑および野菜畑の土壌診断、施肥設計システム」によると「有機物化学肥料相当成分換算表」は施用
 当年に限られている。しかし、草地での堆きゅう肥の肥効は数年継続するため、経年化に対応した項目
 を新たに設定した。
2)窒素施肥量の演算論理は平成2年度指導参考事項「土壌窒素供給量の評価による草地の効率的窒素
 施肥管理」に基づき作成した。なお、泥炭土ならびにアルファルファ混播草地、放牧草地については、施
 肥標準量から施用有機物由来窒素量を差し引いて施肥量とした。
3)リン酸およびカリ施肥量は、「土壌診断に基づく施肥対応」に基づき、土壌診断分析値から施肥倍率を
 決定し、施肥標準量に倍率を乗じた後、施用有機物由来各成分量を差し引いて求めた。
4)土壌改良資材は、リン酸については施肥対応とし、石灰質資材のみを対象とした。
5)施肥設計例は、州および野菜畑の施肥設計諭理を準用し、年間施肥量を充足する肥料銘柄、もしくは
 その組合せを5例出力した。

10.主要成果の具体的数字

図1  側条施肥に対する生育・収量安定区分(水田)
 道内市町村別水稲収量の変異(1970−1990年)。ただし、1971、76、80、81、83の冷害年を除く。

図2  有効態リン酸と施肥倍率(水田)

表1  施肥量ならびに石灰質資材量算出のための必要入力項目(草地)
成  分 入   力   項   目
窒素 土壌の種類、草種、
利用方式、植生区
分、有機物施用量
更新前利用形態、経過年数、マメ科移譲窒素量
リン酸 プレイ№2リン酸量、リン酸吸収係数(造成・更新時に必要)
カリ 交換性カリ量
苦土 土壌の種類、交換性苦土量
石灰質資材 アレニウス氏表、炭カル早見表(根釧地方)、交換性苦土量等

11.成果の活用面と留意点
1)分析値、診断施肥量をデータベースとして有効利用するためには、一筆毎の圃場が判別可能な圃場台
 帳を整備し、台帳上の圃場番号と本システムの圃場番号を一致させることが必要である。
2)肥料など資材の選択に当っては、技術的合理性と地域の流通・使用実態を勘案し関係者と協議のうえ
 登録(入力)すること。
3)地域特有の技術情報は取り入れていないので、作成された診断票、設計票は内容を確認し、農家指導
 の資料とすること。また「土壌診断総合システム」を併用することが望ましい。
4)草地において出力施肥設計票は、北海道施肥標準の目標収量を確保するために必要な量である。

12.残された問題点とその対応
1)診断施肥量の適合性のチェック体制の整備、地域情報や個別作物の特殊な情報を取り込むためのサ
 ブシステムの作成など診断事業全体のシステム化について検討。
2)土壌物理性を含めた新たな土壌診断基準値の設定によるシステムの精度向上。
3)草地においては管理利用体系が多岐にわたるため、これに対応した技術の開発とサブシステムの
 導入。
4)NEC5200型以外の主要機種へのプログラム移植。