| 1.課頭の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 2-2-2 農業環境 資材動態 肥料等 廃棄物 4-2-2 北海道 土肥・環保 2.研究課題名 豚ぷんコンポストの肥効および含有重金属の作物・土壌に及ぼす影響 (豚ぷんコンポストの肥効確認試験) 3.予算区分 道費(受託) 4.研究期間 (平成2年〜3年) 5.担当 中央農試 環境資源部環境保全科／道南農試 土壌肥料科 6.協力・分担 なし |
7.目的
豚ぷんコンポスト(商品名アクロスユーキ)の肥効および含有するZn・Cuが作物、土壌に及ぼす影響、さらに豚ぷんコンポストに残留する抗生物質について明らかにする。
8.試験研究方法
(１)豚ぷんコンポストのスイートコーンに対する肥効(ハウス)
| 試験処理 | ： | ①対照区：N10、P2O515、K2O13kg/10a ②コンポ100区：対照＋コンポスト乾物100㎏/10a ③コンポ200区：同200㎏/10a ④コンポ400区：同400㎏/10a ⑤コンポ1000区：同1000㎏/10a |
| 栽培概要 | ： | 栽植密度畦幅50cm×株間30cm |
| 試験処理 | ： | ↓ |
| ┌ │ │ └ |
肥効試験 | ： | ①対照区：N10、P2O510、K2O10㎏/10a ②コンポ100区：対照＋コンポスト乾物100㎏/10a ③コンポ200区：同200㎏/10a |
| 残効試験 | ： | 上記の肥効試験の跡地に、引き続きホウレンソウを、全処理区、無肥料で栽培した。 |
| 栽培概要 | ： | 栽植密度畦幅20cm、シードテープ(40粒/m) |
| 試験処理 | ： | 土壌 | ┌ └ |
沖積土 火山性土 |
┐ ┘ |
×pH | ┌ └ |
5.5 6.5 |
┐ ┘ |
×資材処理(4処理)＝16処理 |
| 資材処理 | ┌ │ │ └ |
①無処理区：N0.75、P2O51.5、K2O0.75g/pot ②Zn、Cu添加区：①＋Zn10.5、Cu3.9mg/pot ③コンポスト区：豚ぷんコンポスト原物21g/pot(1ton/10a相当、N0.75g/pot)＋P2O5、K2O補給 ④3倍量区：豚ぶんコンポスト原物63g/pot(3ton/10a相当、N2.25g/pot) |
| 供試作物 | ： | コマツナ |
| 試験規模 | ： | a/5000ポット、4反復 |
9.結果の概要・要約
1)豚ぷんコンポストは肥料成分に富んでおり、pHが高く、Zn・Cu含有量が高かった。また、豚ぷんコンポスト
中のT-Nの無機化率は約26%、利用率は約16%であった(表1)。
2)スイートコーンおよびホウレンソウ収量に対する豚ぷんコンポストの肥効は上積み効果として認められ
た。施肥標準施与条件での豚ぶんコンポストの施用量は、スイートコーンでは乾物で100〜200kg/10a、ホ
ウレンソウでは100㎏/10aが適当で、この場合の増収効果は両作物とも約10%と考えられた(表2,3)。
3)豚ぷんコンポストのホウレンソウに対する残効は、乾物で100〜200㎏/10a施用程度では、極めて小さく、
実用的には無視できると思われた(表4)。
4)豚ぷんコンポスト施用により土壌pHが高まったが、これはコンポストそのものが高pHであることや、コン
ポスト中にCaO、MgO等の塩基が多く含まれていることによると思われた(図1)。
5)豚ぷんコンポスト施用区でコマツナのZn・Cu含有率および吸収量は低下した。Znでは土壌pHが高まるこ
と、Cuでは不可給態への形態変化が主因と考えられた(図2)。
6)豚ぷんコンポストを多量に施用(1ton/10a以上)した区では、ポット、ハウス圃場の両栽培条件とも、土壌
中のZn・Cu含有量は高まった。その増加量は施用したコンポスト中のZn・Cu含有量にほぼ相当してい
た(図3)。したがって、豚ぷんコンポスト中のZn・Cuのほとんどは土壌に蓄積していくと考えられた。
ただし、100㎏/10a程度の施用では土壌へのZn・Cu蓄積は極めて小さかった。
7)豚ぷんコンポスト中には微生物に影響を与えるような抗生物質は残存していないと思われた。
8)以上から、野菜の施設栽培における施肥標準施用条件下での豚ぷんコンポストの施用量は、年1回乾物
で100㎏/10aが適当で、その均台の残効や土壌に蓄積するZn・Cu量は小さく、実用的には問題が少ない
と考えられた。
10.成果の具体的数字
表1 供試豚ぷんコンポストの化学性
| 水分(%) | pH(H2O) | T-N | NH4-N | P2O5 | K2O | CaO | MgO | Zn | Cu |
| (%、乾物当たり) | (ppm、乾物当たり) | ||||||||
| 35 | 8.5 | 5.7 | 0.6 | 6.3 | 3.3 | 4.3 | 1.6 | 830 | 300 |
表2 スイートコーンに対する肥効
| 区＼項目 | 草丈 (cm) |
全生重 (kg/10a) |
雌穂重 (kg/10a) |
同左比 | 全乾物重 (kg/10a) |
同左比 |
| 対照区 | 222 | 6081 | 1401 | 100 | 854 | 100 |
| コンポ100区 | 224 | 7061 | 1537 | 110 | 988 | 116 |
| コンポ200区 | 237 | 7354 | 1480 | 106 | 1006 | 118 |
| コンポ400区 | 247 | 7227 | 1480 | 106 | 1002 | 117 |
| コンポ1000区 | 234 | 7904 | 1660 | 118 | 1098 | 129 |
表3 ホウレンソウに対する肥効
| 区＼項目 | 粗収量 (kg/10a) |
同左比 | 乾物重 (kg/10a) |
同左比 |
| 対照区 | 1847 | 100 | 112 | 100 |
| コンポ100区 | 2077 | 113 | 127 | 113 |
| コンポ200区 | 2103 | 114 | 131 | 118 |
表4 ホウレンソウに対する残効(無肥料栽培)
| 区＼項目 | 粗収量 (kg/10a) |
同左比 | 乾物重 (kg/10a) |
同左比 | N吸収量 (kg/10a) |
| 対照区 | 1351 | 100 | 99 | 100 | 5.6 |
| コンポ100区 | 1313 | 97 | 100 | 101 | 5.7 |
| コンポ200区 | 1353 | 100 | 106 | 107 | 5.9 |
11.成果の活用面と留意点
1)豚ぷんコンポストはpHが高く、またこれに含まれるZn・Cuは土壌に蓄積される傾向にあるので、本資材
の施用に当たっては、土壌診断を行うとともに、管理基準(T-Znが120ppm以下)を準用し、Zn・Cuの蓄積
量に注意すること。
2)本成績は(有)渡島ファーム製の豚ぷんコンポスト(商品名アグロスユーキ)についておこなったものである。
12.残された問題点とその対応
豚ぷんコンポストの畑作物に対する施用効果