【普及奨励事項】
1.課題の分類  総合農業 作業技術 収穫 野菜(5)-3
         北海道   物理    園芸
2.研究課題名  イチゴ収穫の省力機械化
      (寒地寒冷地におけるイチゴの新作型開発と高品質生産安定技術の確立
        −栽培管理及び収穫調製の省力機械化体系−)
3.予算区分  地域重要
4.研究期間  (平成元年〜3年)
5.担当  中央農試農業機械部機械科
6.協力・分担関係  中央農試園芸部流通加工科
             道南農試園芸科

7.目的
イチゴの収穫作業は他作物より多労動で、作業は移動が少なくエネルギー代謝は少ないが、不自由で窮屈な姿勢が長時間持続する。その結果、肩凝り、腰痛、目の疲れ等の症状がでており、これらを改善するため自走式乗用型収穫作業台車を開発し労働の軽減を図る。

8.試験研究方法
1)試験実施場所場内、上機町、上厚真町、中富良野町、静内町、富川町、比布町、岩見沢市
2)試験期日5月〜10月
3)供試機自走式乗用型収穫作業台車
4)調査項目機体調査、速度、牽引力、収穫能力、疲労部位と自覚症状、心拍数、筋電図
体温、現地の収獲条件、収穫に対するアンケート

9.結果の概要・要約
1)収穫作業台車の開発
 本機の構造は、楽な姿勢で収穫作業カが行えるよう2人乗りの自走式作業台車で、動力はバッテリー駆動で前後輪トレッドが3段階に調整できる。走行速度はインバータにより自由に調整でき、収獲量の多いときはストップできる。ステップは体格に応じて前後の調節範囲を大きくし、座席は前方30度に回転でき楽な姿勢がとれるようにした。機体は移動が容易にできるよう軽量化し、機体を4分割し簡単に分解組立ができる構造とした(図1)。
2)自走式収穂作業台車の利用による効果
 収穫作業を場内で3回実施したが、作業台車を便用した収穫量は6.8〜12.9㎏/hで慣行手取り作業の5.6〜8.7㎏/hに比べると能率が向上した。疲労部位は作業の慣れ不慣れや作業経験により異なったが、乗車によって足のだるさ、腰痛、肩凝りが軽減された。現地実証調査を5月から10月に5ヶ所で行った結果、乗車により能率の向上が認められ、慣行作業で腰痛、肩凝り、足のだるさを訴えたが、作業台車使用では眠気以外に訴えはなく、大幅に改善された。イチゴの収穫は重労働的ものではないが、同一姿勢から筋肉の疲労が蓄積される。しかし、乗車により腰部から下肢の疲れが軽減されるため収穫に集中することができ、能率向上の要因になったと判断される(表1)。
3)疲労部位の筋電量と心拍数
作業中訴えられた部分、特に胸腰筋腱(腰部)と大腿四頭筋は乗車により明確に筋電量が低下し下肢の疲労軽減効果が認められた(表2)。心拍数は慣行と乗車の差が明確に現れその増加率は慣行の43%こ比べ乗用では18%と低かった。関連作業の株間の除草と枯葉の処理作業についても常時上腕を動作するので慣行作業並の負荷が認められた(図2)。
4)作業台車に連応した成畦条件
 栽培床の条件は、ハウス幅に合わせて成畦されるため一定とならず間隔が90〜150cm、畦高さ17〜42cmと大きな相違があった。畦間幅が広いと左右畦の収穫が不自然な作業姿勢となるため、畦間隔は110〜130cmとし、畦高さ30㎝〜40cm、隣接上辺間隔と上辺幅それぞれ60cm程度が望ましい(図3)。

10.成果の具体的数字


図1 収穫作業台車の主要寸法


図2 イチゴ収穫時の心拍数


図3 標準的な畦形状

表1 収穫作業と疲労調査
期日 収穫方法 収穫
能率
kg/h
自覚症状
足のだるさ 頭痛 眠気 肩凝 腰痛
5/4
上磯
慣行 10.9  
乗車 10.7          
6/9
場内
慣行 5.6    
乗車 12.3          
6/25
場内
慣行 8.7      
乗車 19.8        
6/27
厚真
慣行 9.6    
乗車 13.8          
6/28
静内
慣行 7.3      
乗車 8.2          
7/1
場内
慣行 5.7      
乗車 7.4          
10/30
比布
慣行 3.8      
乗車 4.9          
10/31
岩見沢
慣行 2.5  
乗車 3.0          

表2 収穫時の筋電量と心拍数
区分 大腿筋 胸腰筋 心拍数
平均 偏差 最大 最小 平均 偏差 最大 最小 平均 偏差 最大 最小 指数 増加率
乗車 1.1 3.9 18.0 0.0 0.6 3.2 18.0 0.0 83.5 5.7 96 66 1.18 18
慣行 53.4 17.9 96.0 24.0 14.8 18.6 96.0 0.0 100.4 7.1 114 84 1.43 43
除草 7.9 15.6 72.0 0.0 0.9 4.5 30.0 0.0 94.1 7.2 114 84 1.33 33
安静 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 70.4 4.0 90 66 - -
(注)心拍指数=労働値W/安静値R.増加率(%)={(W/R)-1}×100

11.成果の活用面と留意点
畦間隔110〜130cm、畦高さ30〜40cmが望ましい。ハウス入口幅は180㎝、入口枕地は2.2m必要である。

12.残された問題とその対応