【指導参考事項】
完了試験研究成績                    (作成平成4年2月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 収穫・野菜(根菜)5-(4)
           北海道  農業物理
2.試験研究課題  ポテトハーベスタのにんじん収穫適応化技術
           (労働力不足対応の省力型にんじんハーベスタの開発試験)
3.予算区分  共同研究(民間)
4.試験研究期間  平成3年度
5.担当  道立十勝農試 農業機械科
      東洋農機株式会社
6.協力・分担  なし

7.目的
近年、農家は高齢化、核家族化、臨時雇用者不足を原因とした深刻な労働力不足に直面している。また、畑作基幹作物を基盤とした農業がゆらぐなかで、野菜が経営の支援手段として捉えられており、にんじんも新たな導入作物として注目されている。しかし、機械化が未整備なこともあり、労働力不足の現実の中で生産したいが収穫作業手段がないという状況にある。そこで、既存のポテトハーベスタをにんじん掘り取りに適応させるために、畦幅72㎝で高畦裁培を行うとともに収穫作業適応性を検討した。

8.試験研究方法
1.試験実施期間 平成3年5月〜11月
2.試験実施場所 十勝農試及び十勝管内豊頃町
3.調査項目及び方法
(1)収穫作業
1)構造調査:にんじん用ヘッドの各部寸法、および本機の調整内容
2)作業精度試験供試機:TPH-55
 調査項目:作業速度、にんじん収量、損傷割合等
3)作業能率試験調査項目:作業速度、作業時間内訳、作業面積等
(2)播種作業
1)播種機構造調査供試機型式:TCRS-24
 調査項目:主要諸元、構造詳細
2)播種精度定置試験調査項目:グリース板送り速度、播種間隔等
3)現地播種作業調査調査項目:作業速度、播種間隔、畦形状変化等
(3)ポストハーベスト作業内容
調査内容:収穫後の洗浄、茎葉処理等の作業内容、能率調査

9.結果の概要・要約
1.供試したポテトハーベスタは、1畦用の牽引型でタンカタイフである。供試したにんじんは「向陽2号」で、草丈52.4cmで株間8〜10㎝、畦間は72cmであった。収穫前に茎葉チョッパであらかじめ平均刈り高さ4.6㎝で切断した。
2.収獲作業精度試験は、にんじん用ヘッド装着機と改良無しの馬鈴しょ仕様機について 行った。にんじん用ヘッド装着機はヘッド部での土砂分離が良好であることから、作業 速度0.37m/sで作業が可能であった。改良無しでは作業速度0.25m/sで作業が可能であっ た。規格内品の損傷の発生程度は、改良の有無にかかわらずほぼ同程度で、4〜12%であった。
3.収穫作業能率は、平均速度0.48m/s、機上選別者3名で面積7.1laの圃場を59分35秒で作業を行い、7.2a/hの作業能率であった。
4.ポテトハーベスタによる掘り取りを行うため、畦高さ15㎝、畦頂部幅30cmの高畦成型 播種を行う、トラクタ直装型の専用播種機を間発した。
5.播種作業精度は設定株間30mm、40mm、作業速度0.3m/s〜0.4m/sでおおむね良好であっ た。播種後の高畦の形状は若干肩部分の崩落があり畦形状がなだらかになるものの、お おむね目的とする畦形状を収穫まで保つことが確認された。
6.ポストハーベスト作業には、洗浄と茎葉の仕上げ切新作業があり、約140㎏/回の処理が可能な洗浄機と、282本/分の茎葉仕上げ切断処理を行う切断機との組み合せで作業を行っている。1バッチの処理時間は14分41秒であった。
7.ポテトハーベスタ利用によるにんじん収穫は、高畦栽培で、収穫前に茎葉チョッパで あらかじめ茎葉処理を行う必要がある。また、にんじん品種によっては、コンベヤロッドから脱落するなど損失・損傷の発生が懸念されるので、「向陽2号」と同形状の品種にのみ適応する。

10.主要成果の具体的数字
表1 精度試験時の作物、圃場条件
にんじん収量
(㎏/10a)
項目 草丈
(㎝)
刈高さ
(㎝)
最長残茎長
(㎝)
項目 株間 畦間
規格内品 4,349
規格外品 244 (㎝) (㎝)
裂根 917 平均 52.4 4.6 14.0 平均 9.7 7.8 72.0
腐敗 38 最大 63.0 8.0 49.8 偏差 3.6 4.5 3.4
合計 5,546 最小 43.0 2.5 3.8 CV 36.7 57.1 4.8

表2 にんじん収穫作業精度試験結果
作業機 にんじん用ヘッド装着 既存ポテトハーベスタ
試験番号 1 2 3 4
作業速度(m/s) 0.37 0.36 0.25 0.25




製品口 良品(g) 18,928 23,446 12,965 16,310
傷折(g) 2,030 2,409 1,783 507
くず(g) 3,846 2,243 6,187 6,613
腐敗(g) 1,430 2,264 126 1,095
茎葉(g) 940 712 945 1,068
小玉口 くず(g) 310 213 736 1,420
茎葉(g) 42 37 59 84
埋もれ
こぼれ
良品(g) 148 74 0 64
くず(g) 208 208 469 279




規格品総量(g) 21,106 25,929 14,748 16,881
良品(%) 89.7 90.4 87.9 96.6
損傷ロス(%) 9.6 9.3 12.1 3.0
堀取ロス(%) 0.7 0.3 0.0 0.4
総損失(%) 10.3 9.6 12.1 3.4
(品種:向陽2号)

表3 作業能率試験結果
作業
速度
(m/s)
作業
面積
(a)
所要
時間
(分秒)
作業時間内訳(%) 作業
能率
(a/h)
作業 旋回 移動 排出 停止
0.48 7.11 59'35'' 62.5 7.2 6.5 11.8 12.0 7.2

表4 播種機の主要諸元
項目 諸元 項目 諸元
全長(mm) 2,620 耕起幅(mm) 1,600
全高(mm) 1,800 耕起深(mm) 150〜200
全幅(mm) 1,040 播種方式 スーパーテンパル
複条2列装着
畦数、畦幅(畦、mm) 2、720 培土寸法 畦底部幅(mm) 420
適応トラクタ 50PS以上 畦頂部幅(mm) 300
トレッド幅(mm) 1,440 畦高さ(mm) 150

11.成果の活用面と留意点
1)にんじん用に利用できるポテトハーベスタは畦合わせ装置付が望ましい。
2)にんじんに長い残茎葉があると、にんじんの詰まり・損失の原因となるので、茎葉チョッパ作業には留意する。
3)「向陽2号」と同形状の品種にのみ適応する。
4)土壌条件によって土砂分離がむずかしい時にはにんじん用ヘッドが利用できる。

12.残された問題とその対応
1)圃場内および洗浄行程前後での茎葉切断精度向上。
2)ローラーコンベヤのカセット化と、「にんじん用」「馬鈴しょ用」の開発
3)他品種での適応試験。