【指導参考事項】
完了試験研究成績                 (作成平成4年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 5-(5)-②
          草地   飼料生産 作業技術 B-8
          北海道  農業物理
2.研究課題名  農業生産粗大物質の質量管理センシング技術の研究関発
3.予算区分  経常
4.研究実施年度・研究期間  完 平3年 (平元年〜3年)
5.担当  北農試・農村計画・農業機械研
6.協力分担関係  なし

7.目的
トラクタ装着式ローダ等で取り扱われる農業生産物、特に粗飼料、堆肥等の粗大物質の簡易質量管理センシング技術を開発する。

8.試験研究方法
(1)トラクタ装着用フロントローダの油圧シリンダをとりはずし、荷重を加え、圧カトランスデューサによる圧力検出から、油圧シリンダにかかる荷重を測定する方法の精度を検討した。
(2)フロントローダフォーク部を水平とすることを前提として秤量理論式を導き、その適合性を検証した(図1)。
(3)任意のアーム角度で秤量可能なラップトップコンピュータを用いた秤量システムを開発し、キャリブレーション法、測定精度を検討した(図3)。

9. 成果の概要・要約
(1)油圧シリンダ単体に荷重を加えると荷重Wと測定値Wiの関係は高い相関係数で直線に回帰でき、ピストンを上方向に動かしていて止める場合(UP)の方がピストンを下方向に動かしながら止める場合(DOWN)より常に高い値を示した。
(2)フォーク部を水平とすることと、部材の質量を無視することを前提として、フォーク部とアーム部それぞれ力のモーメントの釣り合いの式を立て、両式から荷重位置Lxを含まない秤量理論式を導き、実際に適合性の高いことを確認した。F1,F2の係数はアーム角度θの関数となっておりこれらをf,gとおき、実際には部材の自重があるので、これもアーム角度θの関数hとおいて、これを秤量一般式とした(図1)。
(3)秤量一般式は、W,F1,F2を3軸とする空間での平面を表す方程式であり、f,g,hをキャリブレーションする方法として、できるだけ離れた3点を選び、これらの点のW,F1,F2の値を式に代入し、連立方程式を解くという方法をとった。今回、この3点を①荷重W=0kg②荷重W=742kg(Lx=0㎝)③荷量W=742kg(Lx=40㎝)とした。このキャリブレーションをθ=30,34,39,43,48°で各々3反復で行い、キャリブレーション値とθとの関係を指数曲線で回帰した。その結果キャリブレーション値回帰曲線は力のモーメントの釣り合いから求めた理論計算値とほぼ近い値となった(図2)。
(4)キャリブレーション値回帰曲線を用いて、荷重W=0〜742kg 5水準、アーム角度θ=30〜48°5水率、フォーク・アーム部の操作方法(UP・DOWN)2水準、反復3回で基本的な測定精度を検討した。いずれの荷量Wでも、測定値Wmは荷重Wに近い値となり、荷重Wが500kg以上では最大誤差率は3%以内の精度であった(表1)。また、荷重位置Lx、アーム角度θが変化 しても測定誤差率に変化はなく、秤量一般式に基づく、キャリブレーション値回帰曲線を用いた本秤量方法の有効性を認めた。
以上要するに、油圧検出、荷重位置に影響されないこと、任意のアーム角度で秤量可能であることを特徴とするラップ・トップコンピュータを用いた秤量システムの開発を行った。

10.主要成果の具体的数字


図1 力の作用解析概略図


図2 f、g、hのキャリブレーション値と理論計算値


図3 秤量システム概略図

表1 測定精度
  荷重W(kg)
0 148 324 532 742
平均 S.D 最大 平均 S.D 最大 平均 S.D 最大 平均 S.D 最大 平均 S.D 最大
測定値Wm(kg) 0.4 2.6 5.0 147.9 4.3 155.0 319.3 5.4 327.4 532.4 4.9 542.2 750.2 5.0 761.1
誤差(㎏) 3.0 1.6 6.7 3.5 2.5 11.5 5.5 4.1 13.7 3.3 3.6 13.9 8.7 4.1 19.1
誤差率(%) - - - 2.3 1.7 7.8 1.7 1.3 4.2 0.6 0.7 2.7 1.2 0.5 2.6
*各荷重について、Lx=0cm、θ=30,34,39,43,48°、UP・DOWNを含む30点のデータを集計した。
*誤差、誤差率は絶対値を用いた。

11.成果の活用面と留意点
本秤量システムの利用によって、粗飼料等の中間生産物の的確な量の把握が行え、より 合理的な生産計画を策定することが期待できる。適用フロントローダは、先端アタッチメント平行移動制御にメカニカル平行リンク機構を採用してないものに限る。

12.残された問題点とその対応
利用性向上のため、システムの軽量・小型化を行う必要がある。