1.課題の分類 総合農業 生産環境 病害虫 北海道 病理昆虫 病害虫 野菜 園芸・病害虫 北海道 園芸 栽培 野菜 2.研究課題名 初夏まきキャベツにおける食葉性害虫の被害許容水準と減農薬栽培技術 (大規模産地における露地野菜の生態系活用型生産技術の開発) 3.予算区分 補助(地域重要新技術) 4.研究期間 平成1年〜3年 5.担当 中央農試病虫部 害虫科 園芸部 野菜花き第一科 6.協力分担関係 中央農試 環境資源部 |
7.目的
減農薬を目指して食葉性害虫の発生をどこまで許すことが出来るか、農薬の散布をどの程度減らすことができるか、農業用マルチ資材は食葉性害虫による被害を抑制できるかなどについて、初夏まきキャベツを対象に検討し、収量を現行と同等もしくは概ね90%を期待しながら、農薬を現行の概ね30〜50%程度に削減することを目標に減農薬栽培技術を確立する。
8.試験研究方法
(1)食葉性害虫の発生と被害実態
①主要食葉性害虫の発生推移
②食葉性害虫による被害の推移
(2)初夏まきキャベツにおける減農薬栽培技術
①農薬(殺虫剤)散布回数の削減
②食葉性害虫の発生と被害および生育に及ぼすマルチ資材の効果
③実証試験
(3)食葉性害虫の被害許容水準の設定
①被害程度指数と結球重および10a当り収量との回帰分析
9.結果の概要・要約
初夏まきキャベツにおける食葉性害虫の発生と被害実態
(1)食葉性害虫の発生量は年次変動が大きいが、生育、収量に影響を及ぼすのはコナガ、モンシロチョウ、ヨトウガ、ウワパ類であった。加害実態から生育前期はコナガおよびモンシロチョウが、生育後期はヨトウガが重要種と考えられた。
(2)食葉性害虫による被害は、害虫の発生密度に依存することから、その変動は害虫の発生変動と並行的な関係にあった。
(3)加害種および加害時期によって収量やその構成要素に与える影響は異なり、生育前期の被害は結球重や結球歩合に、生育後期の被害は商品価値に影響した。
(4)堆肥施用の有無と食葉性害虫の発生との関係は年次および種類によって変動がみられ、一定の傾向は認められなかった。収量的には堆肥併用区(堆肥:5t/10a,化学肥料:標皮1/2)は化学肥料区に比較して劣った。
(5)本作型のキャベツ栽培において無防除では安定的な生産は難しいと考えられた。
減農薬栽培技術
(1)一般栽培農家における殺虫剤の散布回数は平均6回程度であった。
(2)粒剤の定植時植穴施用によって、本圃における茎葉散布、特に生育前期の散布回数を削減することが可能であったが、生育後期の防除は避けられないと考えられた。
(3)フイルムマルチ栽培は、収量や品質面では地温上昇抑制効果の高い特殊P・Oが最も良く、白黒ポリおよびシルバーポリがこれに次いだ。
(4)フイルムマルチ栽培は、食葉性害虫による生育前期の被害を抑制する効果が認められたが、フイルムの種類による差異は明確ではなかった。
(5)特殊P・Oおよびシルバーポリなどの光反射性フイルムを使用したマルチ栽培と粉剤の定植時植穴施用を併用することにより、生育前期(定植後30日前後まで)の茎葉散布を削減することができ、慣行栽培より2回〜3回程度散布回数を削減した減農薬栽培が可能であると考えられた(第1表)。
食葉性害虫の被害許容水準
(1)食葉性害虫の加害による生育前期の被害は結球重に、生育後期の被害は商品化個体率にそれぞれ影響を及ぼし、卜一タルとして10a当り収量に影響を及ぼした。
(2)結球重に対する定植後30日〜35日前後までの生育前期の食葉性害虫の被害許容水準は、被害程度指数で35前後にあると推定された。(第1図)。
(3)10a当り収量に対する生育前期の食葉性害虫の被害許容水準は、被害程度指数で25前後にあると推定された。
10.主要成果の具体的数字
第26表 各種資材のマルチ栽培における被害程度の推移と収量
防除内容 | 供試資材 | 調査月日 | 規格内 収量kg/10a |
||||
8.04 | 8.12 | 8.26 | 9.05 | 9.17 | |||
慣行防除 | 特殊P・O | 1.0 | 2.1 | 4.7 | 13.0 | 19.1 | 5,695 |
粒剤 | シルバー | 0.5 | 1.0 | 3.1 | 13.5 | 18.1 | 6,105 |
茎葉散布4回 | 黒 | 0.5 | 2.1 | 6.8 | 14.2 | 20.3 | 5,355 |
減農薬防除 | 特殊P・O | 1.0 | 2.1 | 15.6 | 19.6 | 30.2 | 6,342 |
粒剤 | シルバー | 0 | 2.1 | 20.3 | 17.2 | 28.4 | 6,269 |
茎葉散布2回 | 黒 | 1.0 | 2.1 | 25.0 | 21.9 | 31.8 | 5,220 |
第1図 化学肥料区における定植30日前後の被害程度指数(X)と結球重の減収比(X)との関係
11.成果の活用面と留意点
(1)初夏まきキャベツに対する定植後30日〜35日頃までの生育前期の被害許容水準は、被害程度指数で35前後にある。
(2)粒剤の定植時植穴施用を防除の基本におくことによって、生育前期の茎葉散布を削減することが可能である。
(3)近紫外線反射ポリオレフィン系フイルムおよびシルバーポリフィルムなどの光反射性フイルムを使用したマルチ栽培は、収量および品質面で安定した効果が得られる。
(4)これら光反射性フイルムは、生育前期のコナガおよびモンシロチョウによる被害を定植後20日前後抑制する効果がある。
(5)光反射性フイルムを使用したマルチ栽培と粒剤の定植時植穴施用を併用することによって、生育前期(定植後30日前後まで)の茎葉散布を削減することができ、減農薬栽培が可能である。
(6)粒剤の植穴施用は干ばつ条件下では効果が劣るので、食葉性害虫の発生動向に注意する。
12.残された問題点とその対応
(1)大規模な実証試験による効果の確認。
(2)他の作型における減農薬栽培技術の応用。
(3)フイルムの種目と害虫の行動との開係。
(4)食葉性害虫の発生変動および被害形成モデルの作成。