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1.課題の分類 畜産 豚 育種 北海道 畜産 2.研究課題名 系統交雑豚生産における「ハマナスW1」の有効活用法 3.予算区分 共同研究(民間) 4.研究期間 (昭63年〜平2年) 5.担当 滝川畜試 研究部養豚科 6.協力分担 ホクレン |
7.目的
北海道での系統豚の利用についてはホクレンが事業を実施しており、ランドレース系統の雌に大ヨークシャー系統の雄を交配して一代雑種母豚LWを生産利用している。今後、この逆の組合せであるWLが利用できれば系統豚の効率的な活用が可能となる。そこで、「ハマナスW1」の完成後、これを遠やかに有効活用するための基礎データの収集を目的に、この造成途中豚(3、4、5世代)とホクレンの事業で利用されている系統豚との組合せ試験を行なった。
8.試験研究方法
ホクレンのハイコープ豚事業における利用系統豚と「ハマナスW1」の造成途中胚とを組合せて系統交雑豚を生産し、その枝肉成績および枝肉格付け成績を調査した。この成績により、一代雑種母豚の正逆組合せ(LWとWL)の比較を行ない、「ハマナスW1」の有効活用について検討した。あわせて雄系統の比較、ランドレース系統の比較も行なった。試験構成は、次の通りである。
| 雄系統の比較検討 | デュロック系統サクラ201(D) |
| ハンプシャー系統サクラ101(H) | |
| ランドレース系統の比較検討 | クニエル |
| エド | |
| 一代雑種母豚の正逆組合わせの比較検討 | LW(ランドレース雌×大ヨークシャー雄) |
| WR(大ヨークシャー雌×ランドレース雄) |
9.結果の概要・要約
1)供試豚の頭数は、349頭で、去勢雄が181頭、雌が168頭であった。(表1)
2)雄系統のDとHとの間で、枝肉成績には差がなかったが、枝肉格付げ結果については、Hの上物率がDよリ高い傾向があった。
3)ランドレース系統のクニエルとエドとの間では、枝肉成績および枝肉格付け結果について両者間には差がなかった。
4)一代雑種母豚の正逆組合せでは、枝肉成績に差がなく、出荷時日齢が171日枝肉の長さ(背腰長Ⅱ)が74cm、背脂肪厚が1.8㎝前後であった。(表2)
枝肉格付け結果については、WLの上物率が66%で、LWの59%よリ高い傾向があった。(表3)
5)性別の枝肉成績は、去勢雄が雌よリ出荷時日齢が10日早く、枝肉の長さが1㎝程短く、背脂肪が4㎜程厚かった。(表2)枝肉格付け結果は、雌の上物率が76%で、去勢雄の49%よリ27%高かった。(表3)
6)以上のように、系統間および組合せ間の成績の差は小さく、性間の成績の差のほうが大きかった。全体として枝肉成績、枝肉格付け結果ともに良好であり、「ハマナスW1」を系統豚として有効活用できることが明らかとなり、去勢雄の厚脂対策が上物率向上の重要なポイントであることが示唆された。
10.主要成果の具体的数字
表1 供試豚の頭数内訳
| 年次 | 一代雑種母豚組合せ | 性別 | ||||
| LW | WL | 計 | 去勢雄 | 雌 | 計 | |
| 1年目 | 57 | 31 | 88 | 49 | 39 | 88 |
| 2年目 | 48 | 58 | 106 | 57 | 49 | 106 |
| 3年目 | 84 | 71 | 155 | 75 | 80 | 155 |
| 合計 | 189 | 160 | 349 | 181 | 168 | 349 |
表2 一代雑種組合せ別、性別の出荷枝肉成績
| 一代雑種母豚組合せ | 性別 | ||||
| LW | WL | 去勢雄 | 雌 | ||
| 出荷時日齢(日) | 171 | 171 | 166** | 176 | |
| 枝肉重量(㎏) | 71.4* | 70.4 | 71.0 | 70.8 | |
| 屠体長(cm) | 98.2 | 98.0 | 97.2** | 98.9 | |
| 背腰長Ⅱ(cm) | 74.2 | 74.3 | 73.6** | 75.0 | |
| ロース断面積(c㎡) | 21.2 | 21.3 | 19.9** | 22.5 | |
| 背 脂 肪 厚 |
カタ(cm) | 3.33 | 3.34 | 3.49** | 3.18 |
| セ(cm) | 1.85 | 1.78 | 2.01** | 1.62 | |
| コシ(cm) | 2.27 | 2.21 | 2.40** | 2.08 | |
| 平均(cm) | 2.49 | 2.45 | 2.64** | 2.30 | |
表3 枝肉格付け結果
| 格付け | LW | WL | 去勢雄 | 雌 | 合計 | |
| 上 | 58.7(111) | 66.3(106) | 49.2(89) | 76.2(128) | 62.2(217) | |
| 中 | 32.3(61) | 29.4(47) | 38.1(69) | 23.2(39) | 30.9(108) | |
| 並 | 7.9(15) | 4.4(7) | 11.6(21) | 0.6(1) | 6.3(22) | |
| 等外 | 1.1(2) | 1.1(2) | 0.6(2) | |||
| 格 落 ち 原 因 |
均称 | 1.9(1) | 2.5(1) | 0.8(1) | ||
| 肉付 | 5.1(4) | 11.1(6) | 5.4(5) | 12.5(5) | 7.6(10) | |
| 厚脂 | 82.1(64) | 70.4(38) | 90.2(83) | 47.5(19) | 77.3(102) | |
| 薄脂 | 7.7(6) | 14.8(8) | 2.2(2) | 30.0(12) | 10.6(14) | |
| その他 | 5.1(4) | 1.9(1) | 2.2(2) | 7.5(3) | 3.8(5) | |
11.成果の活用面と留意点
「ハマナスW1」を利用した系統交雑豚で60%台の上物率を達成するためには昭和62年の「肉豚の後期肥育方式に関する試験」に準じて性別に群飼することと出荷時の体重を揃えることが重要である。
12.残された問題とその対応
系統交雑豚の効率的な活用のための適正な飼料構成と飼養管理法の検討。
SPFなどの清浄系統豚の利用による生産性の向上。
地域特産的な豚肉生産のための飼養管理法の検討。