1.課題の分類 畜産 鶏 育種 北海道 畜産 2.研究課題名 北海道産高品質肉鶏の作出 (地域動物資源の利用による特産鶏肉・鶏卵の開発) 3.予算区分 地域新技術 4.研究期間 昭63〜平2年 5.担当 滝川畜試 研究部 家きん科・畜産資源開発科 6.協力・分担関係 青森畜試・福島鶏試・秋田畜試 |
7.目的
食品への本物・高級志向の世情の中で,ブロイラーの肉は水っぽい,コクがない等の消費者の声がありこれとは趣の違う「美味しい鶏肉を」との要望に応えるために,ロードアイランドレッド種を基礎鶏とし,これに日本在来鶏を交配した高品質肉鶏を作出する。
8.試験研究方法
(1)交配様式の検討。
(2)給与飼料の検討。
(3)出荷適期の検討。
9.結果の概要・要約
〔この成績書での鶏品種名の略記号N:名古屋,G:シャモ,R:ロードアイランドレッド,B:横斑プリマスロック〕
(1)発育はN×(G・R)が最も優れ,17週齢で雄が約3㎏,雌は2.1㎏であった(図1)。
(2)プロダクション・スコア【{〔体重(㎏)×育成率(%)〕÷〔飼料要求率×出荷日齢〕}×100】の試算では,N×(G・R)が79.4〜40.7で収益指数は最も高かった(表1)。
(3)設定体重に達する推定日齢は,雄,雌ともにN×(G・R)が最も早く93〜129日齢で,その日齢差も少なく飼育施設の回転効率も高い。また21週齢までに2,200gに達した雌はこの交配様式のみであった(表2)。
(4)正肉1㎏生産に要する飼料費の平均は,ブロイラー用飼料が476円,レイヤー育すう用飼
料は546円でありブロイラー用飼料を給与するほうが経済的であった。
(5)次式より,体重から正肉量を精度よく推定できるので,利用目的により異なる鶏肉サイズの需要に対し,体重より出荷時期を推測することができる。
雄:Y=0.482X-248.9(r=0.971),雌:Y=0.423X-46.2(r=0.961)Y=正肉量,X=体重。
(6)体重に対する腹腔内脂肪の割合は,雄,雌ともにN×(B・R)が最も多く,N×(G・R)とG×(N・R)はその割合が少なく,この傾向は雌で顕著であった(図2)。
(7)腿肉の理化学性状の肉色は,ブロイラーに比ぺ3元交配種の方がL値(明度)は低く,a値(赤味)は高かった。化学成分では3元交配種がブロイラーより脂肪含量が低く,赤肉割合が多いため水分含量が高かった(表3)。
(8)パネラーによる腿肉の官能検査の結果,3元交配種の肉を好むとするのが63%と高く,ブロイラーの肉を好むとするのが28%,差なしが9%であった(図3)。
(9)官能検査での好ましさの理由は,3元交配種の肉では「うま味」と「良くしまって適度
に歯応えあり」がそれぞれ約70%であり,ブロイラーの肉は「柔らかさ」が主であった。
(10)以上の結果,発育に優れ,プロダクション・スコアが高く,官能検査結果でも良好な「N×(G・R)」を,北海道産"高品質肉鶏(仮称:北海地鶏)"候補として提案する。
なお,この交配様式の作出のために3品種を保有することにより,シャモ系の鶏肉志向層には,G×(N・R)の交配様式で容易に応えることができる。
10.成果の具体的数字
図1 体重の推移
図2 体重と腹腔内脂肪の割合
表1 プロダクション・スコア
設定 出荷体重(g) |
♂ | ♀ | ||||
2,300 | 2,500 | 2,700 | 1,800 | 2,000 | 2,200 | |
G×(N・R) | 72.6 | 71.7 | 69.8 | 43.6 | 35.1 | - |
N×(B・R) | 68.3 | 65.4 | 60.5 | 47.8 | 41.0 | - |
G×(B・R) | 80.7 | 77.7 | 73.7 | 47.6 | 40.2 | - |
N×(G・R) | 79.4 | 77.4 | 75.0 | 50.3 | 46.3 | 40.7 |
表2 設定体重と推定到達日齢・飼料要求率
設定 体重(g) |
♂ | ♀ | ||||||||||
到達日齢(日) | 飼料要求率 | 到達日齢(日) | 飼料要求率 | |||||||||
2,300 | 2,500 | 2,700 | 2,300 | 2,500 | 2,700 | 1,800 | 2,000 | 2,200 | 1,800 | 2,000 | 2,200 | |
G×(N・R) | 100 | 107 | 115 | 3.04 | 3.13 | 3.23 | 114 | 135 | 155 | 3.48 | 4.05 | - |
N×(B・R) | 106 | 115 | 126 | 3.05 | 3.19 | 3.40 | 112 | 130 | 148 | 3.23 | 3.60 | - |
G×(B・R) | 101 | 108 | 116 | 2.71 | 2.86 | 3.03 | 112 | 130 | 154 | 3.24 | 3.67 | - |
N×(G・R) | 93 | 100 | 107 | 2.99 | 3.10 | 3.23 | 101 | 113 | 129 | 3.40 | 3.67 | 4.02 |
表3 腿肉の理化学性状と化学成分
交配様式 | ♂ | ♀ | ||||||
肉色 | 化学成分(%) | 肉色 | 化学成分(%) | |||||
L値 | a値 | 水分 | 脂肪 | L値 | a値 | 水分 | 脂肪 | |
G×(N・R) | 34.9 | 9.0 | 74.4 | 4.7 | 31.7 | 9.6 | 73.4 | 5.0 |
N×(B・R) | 34.7 | 9.2 | 72.6 | 6.3 | 31.7 | 9.5 | 72.3 | 6.9 |
G×(B・R) | 34.4 | 9.4 | 74.5 | 4.5 | 32.2 | 9.0 | 73.4 | 5.6 |
N×(G・R) | 32.5 | 9.8 | 73.5 | 5.4 | 29.8 | 9.6 | 72.4 | 6.3 |
ブロイラー | 38.5 | 7.3 | 69.1 | 11.7 | 34.8 | 8.3 | 68.1 | 13.1 |
図3 腿肉の官能検査
11.成果の活用面と留意点
(1)肉鶏飼養は平飼いが多いので衛生対策には十分注意する。放飼の場合は有害獣対策も必要となる。またいずれの場合も悪癖防止のため,道正なデビークを行う。
12.残された問題とその対応
(1)高品質肉鶏作出のための基礎鶏の改良。
(2)高品質肉鶏の飼養管理技術および肉質判定基準の確立。
(3)高品質肉鶏の素雛供給体制の確立。