【指導参考事項】
成績概要書            (作成:平成4年1月)
1.課題の分類  北海道 家畜・草地合同
2.研究課題名  ラップサイロ用フィルム評価基準
3.予算区分  経常・受託
4.研究期間  (平成3年)
5.担当  北農誠・企画連絡室・総研3チーム
6.協力・分担関係  農村計画部
            農業機械研究室

7.目的
ロールベールサイレージ用ストレッチフィルムの要求持性を明らかにし、評価基準を策定する。

8.試験研究方法
1.実態調査:ストレッチフィルムの性能に関する問題点の聞き取り調査を行った。
2.ストレッチフィルムの材質及び性態評価(基礎試験):輸入品(7社9品)および国産品(7社10品)のストレッチフィルムの材質と性能を評価した。測定項目は1)ラッピング性能、2)引張試験(S-S曲線):①降伏強度、②破断強度、③破断時伸び、④200%MD強度、3)伸長回復性:①伸長回復率、②伸長回復力、4)フィルムインパクト、5)粘着度である。
3.ストレッチフィルムのラッピング試験(実規模試験):市販品ストレッチフィルム19品のラッピング性能を比較した。ラッピング速度は2m/秒、延伸率150%及び180%の2段階で、ラッピング性能の総合評価はペール端面の緊縛度、フィルム延伸後の縦シワ発生状況、延伸ムラ、巻き姿、フィルム強度・腰の強度のバランス等から総合評価した。

9.結果の概要・要約
1.実態調査:農家の主要なクレームは作業性(ロールの巻き姿、粘着不良、フィッシュアイ、伸びムラ)、気密性(フィルムにシワ発生、雨水侵入、耐候性)に関するものであった。
2.ストレッチフィルムの材質及び性能評価(基礎試験):
1)材質と物性の関係:ラップサイロ用ストレッチフィルムに具備すべき最も重要な性能は伸長回復性と粘着性にあると考えられた。
2)成形法:成形法はインフレ法が主流となっていた。T-ダイ法はフィルムの偏肉精度は良いが、ラッピング時にシワが入りやすい傾向にあった。
3)樹脂材質構成:市場評価の高い商品はLLDPEを主体にEVAを組み合わせた多層系フィルムであり、LLDPEで伸長回復カ、EVAで伸長回復率を補完した材料設計であった。一方、内層はEVA、外層はLLDPEはという構成が多かったが、これはEVAで粘着性を付与し、LLDPEで機械的強度を付与するということが考えられた。
4)粘着剤:粘着剤はボリブテン系が使用されていた。粘着剤の添加量が増えると粘着性が高まるが、強度が低下するのでラップ後の移動、運搬作業でフィルムが破損しやすくなる。評価の高いフィルムを指標にすると粘着度は0.7g/c㎡以上が必要と推定される。
5)気密性:ストレッチフィルムの気密性は伸長回復性、粘着性、耐候性、フィルム強度が大きく関与する。長期間にわたってロールベールの変化に対応して気密性を保持するにはストレッチフィルムの収縮追尾性能の持続性が必要とされる。
3.ストレッチフィルムに必要な基本的性能:
1)伸長回復力の絶対値が高いこと(標準値:200%延伸で130kg/c㎡以上)。
2)伸長回復率が大きいこと(標準値:200%延伸で60%以上)。
3)200%MD強度が高いこと(標準値:200%延伸で180kg/c㎡以上)。
この他に粘着性、強度をさらに付与することが望ましい。
4.ストレッチフィルムの簡易評価基準:
1)フィルム規格:フィルムロールの外径(260〜265mm)、幅が規格どうりに製造されていること→ストレッチ装置にセット出来ない原因となる。
2)フィルムロールの巻き姿:フィルム巻面に凸凹がなく滑らかで、端面が揃っていること→ラップ時にフィルムが切れる原因となる。
3)偏肉特性:フィルムをMD(長手)方向に延伸した時に色ムラ(縦縞模様)や、フィッシュアイ、ピンホールが発生しないこと→フィルム破壊の原因となる。
4)応力:フィルムを静かに手で引き延ばし、延伸率200%〜300%で切れないこと→ラップ時の緊縛力(フィルムの腰)が弱く、気密性に劣る。ハンドリング時に変形しやすい。
5)粘着性:ラップしたフィルムをパネ秤で引っ張り、剥離始めの応力が200g以上あること→ラップ端面の気密不良のためカビ発生の原因となる。
6)ラップ状態:ラップした時に皺や延伸ムラが生じないこと→気密不良の原因となる。
7)温度による変化:温度によって性能の変化が少ないこと。

10.成果の具体的数字

表1 ロールベールサイレージ用ストレッチフィルムの性能評価(代表例)
商品名 材質構成 市場評価 ラッピ
ング性
200%
MD強度
kg/c㎡
破断強度
MDkg/c㎡
伸び
MD%
200%
伸長回復率
MD%
200%
伸長回復力
MDkg/c㎡
フィルム
インパクト
kg・cm/mm
LLDPE 不良 不良 171 350 630 55 71 410
LLDPE/EVA 186 350 480 60 97 420
LLDPE/EVA 181 345 620 60 90 470
 引張試験:引張速度(500mm/分)


図1 ポリプテン添加量とフィルムの粘着度


図2 ポリプテン添加量とフィルムの破断強度


図3 フィルム破壊の状況


図4 200%延伸時(MD)の伸長回復力


図5 200%延伸時(MD)の伸長回復率


図6 200%MD強度

11.成果の活用面と留意点
市販ラップサイロ用ストレッチフィルムの選定に使用できる。
高性能なラップサイロ用ストレッチフィルムの開発に活用できる。
フィルムの性能は温度で変化することを評価基準値の使用に際して留意する。

12.残された問題とその対応
機種及ぴ作業の特性に応じたストレッチフィルムの評価基準の作成が必要。