1.課題の分類  総合農業 作物生産 夏作物
          北海道 畑作 てんさい
2.課題  てんさい「H116」に関する試験成績
3.場所名  北海道立十勝/北見/中央/上川/根釧農業試験場
 協 力  北海道農業試験場 日本甜菜製糖株式会社 北海道糖業株式会社
       ホクレン農業協同組合連合会
4.新品種候補系統名  てんさい「H116」

5.来歴および育成経過
(1)来歴
 「H116」は、オランダのバンデルハーべ種子会杜が育成した3倍体、単胚の一代雑種である。2倍体雄性不稔系統「MOMS52.89.」に4倍体多胚系統「T.6/14.」を花粉親として交配し、昭和61年(1986年)に育成された。
(2)試験経過
 (1)昭和62年〜平成元年:ホクレン農業協同組合連合会が輸入し、「HK87-03」の系統名で輸入品種予備試
  験を行った。
 (2)平成2年〜平成4年:「H116」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場等において輸入
  品種検定試験を行った。
 (3)平成3年〜平成4年:北海道立十勝、北見農業試験場において品質特性検定試験、十勝農試において栽
  培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試にお
  いて抽苔耐性特性検定試験を行った。
 (4)平成3年〜平成4年:全道18カ所(平成4年は17カ所)において現地検定試験を行った。

6.特性
(1)形態的特性
 「H116」は、草丈は「モノホワイト」よりやや低く、葉姿はやや開平である。葉数は「モノホワイト」と同程度で、葉形は楕円、葉身は「モノホワイト」よりやや大きく、葉柄長はやや短い。クラウンは「モノホワイト」よりやや大きく、根形は円錐形で、分岐根は少ない。
(2)根重
 「モノホワイト」より多く、「モノホマレ」より少ない。
(3)根中糖分
 「モノホワイト」に近い高糖分で、「モノホマレ」より高い。
(4)品質
 有害性非糖分は、アミノ態窒素が「モノホワイト」より低く、カリウムは「モノホワイト」よりやや高く、ナトリウムは「モノホワイト」より高い。
 不純物価は「モノホワイト」並である。
(5)抽苔耐性
 既存のヨーロッパ系輸入品種と同様に、抽苔耐性は強である。
(6)耐病性
 褐斑病抵抗性は「モノホワイト」並の弱である。
(7)耐湿性
 「モノホマレ」並のやや弱である。

7.試験成績
各農試における成績(平成2年〜平成4年の3ヵ年平均)
場所 系統名
または
品種名
根重
(t/10a)
根中糖分(%) 糖量
(㎏/10a)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量
十勝農試 H116 6.34 17.75 1122 96 104 100
モノホワイト 6.18 17.88 1101 94 105 98
モノエースS 6.01 18.02 1080 91 106 96
モノホマレ 6.60 17.05 1123 100 100 100
北見農試 H116 6.14 18.56 1135 95 102 97
モノホワイト 5.89 18.85 1109 91 104 95
モノエースS 5.87 18.76 1095 91 103 94
モノホマレ 6.46 18.13 1168 100 100 100
中央農試 H116 8.89 17.76 1581 101 106 107
モノホワイト 8.22 17.58 1447 93 105 98
モノエースS 8.49 17.70 1499 97 106 101
モノホマレ 8.80 16.79 1477 100 100 100
上川農試 H116 6.13 19.12 1171 101 104 105
モノホワイト 5.81 19.03 1104 95 104 99
モノエースS 5.56 19.27 1070 91 105 96
モノホマレ 6.09 18.38 1117 100 100 100
北農試 H116 6.36 17.24 1096 92 104 95
モノホワイト 6.39 17.34 1107 92 105 96
モノエースS 5.99 17.49 1049 86 106 91
モノホマレ 6.94 16.58 1151 100 100 100

現地検定試験成績全道平均(平成3年18カ所、平成4年17カ所)
系統名または品種名 根重
(t/10a)
根中糖分(%) 糖量
(㎏/10a)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量
H116 6.33 17.09 1088 100 103 103
モノホマレ 6.33 16.63 1057 100 100 100
モノホワイト (5.73) (17.53) (1008) (92) (105) (96)
注)「モノホワイト」は各年度12カ所の平均

8.配布可能種子量‥平成5年度→1,000kg 平成6年度以降→2,000kg

9.普及対象地域および普及見込面積‥北海道一円 平成5年度→1,000ha 平成6年度以降→2,OOOha

10.栽培上の注意点
(1)褐斑病に対する抵抗性は弱なので、適期防除に留意する。
(2)多肥栽屠は、根中糖分の低下や、有害牲非糖分の増加を招くので、北海道施肥種準を守る。
(3)その他の栽培法は、「モノホワイト」「モノホマレ」に準ずる。