1.課題の分類  北海道 園芸 野菜 タマネギ 品種・育種
2.研究課題名  たまねぎサラダ用品種比較試験
3.予算区分  経常
4.研究期間  (平成元年〜4年)
5.担当  北海道農試・作物開発・野菜研
6.協力・分担関係

7.目的
 北海道で栽培されるサラダ用たまねぎ品種は、府県の量種が道内での検討を経ずにそのまま用いられている。当場では「良食味品種の育成」及び「辛味成分の簡易検定法の開発」のためにサラダ用として適応性の高い材料を多数収集したので、それらのうち、現在日本暖地で栽培されている赤色サラダ用品種について比較試験を行い、それらの道内における適応性について検討を行った。

8.試験研究方法
 平成元・2年度には、サラダ用赤色系15品種の比較試験を行った。参考品種として、本州以南の黄たまねぎ6品種、北海道の黄たまねぎ4品種及び当研究室で育成途上の食味良好な花粉親2系統も供試した。
 平成3年度には、適応性の明らかに劣る品種、及び種子供給の不安定な品種を除き、赤色系11品種の比較試験を行った。また、倒伏期における根切り処理の効果を調査した。
 平成4年度は、更に選抜した9品種について、特性調査を行った。
 貯蔵性については、平成元年度に1ヶ月ごとの調査を行い、平成2・3年度には、貯蔵3ヶ月後に調査を行った。
 平成3・4年度には、富良野圃場においても、収量特性の比較試験を行った。

9.結果の梗宴・要約
 熟期及び収量特性は、サラダ用品種は、対照の'札幌黄'あるいは「ひぐま」よりも早生であり、その程度は、肥大期で1〜5日、倒伏期で0〜11日であった。収量性は、「札幌黄」を越える品種が多く、特に、「カルレッド」「紅秀玉」「スターレッド」「ニューレッド」「くれない」及び「湘南レッド」が高収量であった。
 分球や変形球を多発する品種が多く、上物率の低下の主因となった。特に多収な富良野圃場では、その傾向が著しかった。その中で「くれない」は上物率が特に高く、富良野圃場でも分球発生はほとんど認められなかった。
 この結果、北海道の春まき栽培に最も適したのは、「くれない」であると思われた。
 根切りの効果は、一般に収量の低下、貯蔵性の向上となって現れたが、上物率には影響しなかった。
 球の特性は、硬度は「札幌黄」よりも軟らかいが「ひぐま」と同程度の品種もあった。りん葉の厚さは、明らかに北海道の品種よりも厚いが品種間差異が大きかった。芯の数は北海道の黄たまねぎよりも多かった。辛味成分生成酵素であるアリイテーゼ活性は、「札幌黄」よりも低いが、「ひぐま」程度の品種もあった。球形指数は、北海道の品種よりも低いものが多く、扁平な品種がほとんどであったが、その程度は品種間差異が大きかった。
 貯蔵性は、貯蔵2ヶ月後までは健全率が高く保たれているが、3ヶ月以降は急激に低下するものが多かった。「ルージュ」及び「猩々赤」は、3ヶ月後でも比較的高い健全率を示していたが、4ケ月後には他の品種と同程度にまで低下した。貯蔵方法の検討が必要である。

10.主要成果の具体的数字
熟期及び収量特性(平成元年〜3年度平均値)
品種 肥大期
(月.日)
倒伏期
(月.日)
収穫期
(月.日)
上物収量
(㎏/a)
総収量
(kg/a)
上物率
(%)
一球重
(g)
富良野圃場における
分球率
(%)
乾腐病
(%)
ボトリチス
病(%)
1.ルージュ 7.15 7.24 8.14 207 232 84.6 99.3 8.1 2.6 4.1
2.東京レッド 7.17 8.1 8.22 227 268 84.4 89.0 4.1 0.6 0.3
3.カルレッド 7.19 8.5 8.26 328 388 86.2 122.0 10.7 0.0 6.8
4.岐阜レッド 7.19 8.1 8.22 226 286 80.4 93.3 2.6 0.0 0.6
5.紅秀玉 7.17 7.30 8.2 310 341 87.6 108.3 8.4 1.7 8.0
6.ハレーレッド 7.18 8.4 8.25 230 271 83.8 91.7 4.8 0.0 4.7
7.スターレッド 7.17 8.1 8.22 323 369 89.0 121.6 16.3 1.9 9.2
8.ニューレッド 7.16 7.31 8.21 303 342 87.7 112.0 1.8 2.3 1.9
9.くれない 7.14 7.22 8.22 344 362 97.3 107.0 0.1 0.0 1.4
10.猩々赤 7.18 7.31 8.21 267 278 96.7 106.7 16.4 1.7 20.8
11.湘南レッド 7.20 8.2 8.23 300 345 89.3 111.3 17.8 3.0 3.6
12.札幌黄 7.20 8.3 8.24 294 352 80.5 113.7 1.2 2.2 1.2
13.ひぐま 7.19 8.4 8.25 387 418 92.0 124.0 - - -

球特性及び貯蔵性(平成元年度)
品種 硬度
(kg)
糖度
Brix
りん片厚さ
(mm)
芯の数 アリイナーゼ
活性
球形指数 貯蔵健全率(個数%)
1カ月 2カ月 3カ月 4カ月
1.ルージュ 4.7 7.6 6.1 2.4 - 67.2 92.5 75.0 75.0 5.7
2.東京レッド 5.2 8.3 4.7 2.9 877 93.2 98.7 96.8 38.3 11.0
3.カルレッド 4.7 6.7 5.2 3.0 939 85.2 100.0 94.6 2.0 2.0
4.岐阜レッド 5.6 8.0 4.7 2.6 802 89.9 97.4 97.4 32.9 2.6
5.紅秀玉 4.8 7.8 6.1 2.7 758 74.3 97.5 97.5 9.0 1.3
6.ハレーレッド 3.6 7.8 5.6 3.0 1201 82.0 98.4 98.4 46.0 12.6
7.スターレッド 3.9 7.8 5.9 2.4 967 82.2 98.6 98.6 11.4 0.0
8.ニューレッド 5.5 7.6 6.6 2.5 1054 72.7 100.0 98.5 42.8 8.0
9.くれない 5.4 7.8 5.2 2.2 717 84.9 100.0 100.0 8.3 1.2
10.猩々赤 4.1 7.0 5.9 2.8 1135 70.0 96.8 96.8 88.5 3.2
11.湘南レッド 5.5 8.5 6.3 2.9 1214 61.4 100.0 96.8 15.4 5.2
12.札幌黄 7.9 9.0 4.2 1.5 1434 93.0 100.0 100.0 100.0 98.9
13.ひぐま 5.4 7.2 4.3 1.3 1204 94.0 100.0 100.0 94.5 89.2

11.成果の活用面と留意点
 栽培法は普通のたまねぎに準ずるが、根切りは早期に行う。収穫、貯蔵は球が軟らかいので取扱に注意する。貯蔵は、通常の方法では11月頃までが限度である。
 多収な圃場では、分球が多発して、かえって成績が不良になる可能性がある。

12.残された問題とその対応
 出荷期を拡大するため、貯蔵法の検討、並びに高貯蔵性品種の育種が必要であろう。