成績概要書(作成 平成5年1月)
1.課題の分類  北海道 園芸 野菜 アスパラガス 品種・育種
2.研究課題名  アスパラがス導入品種比較試験
3.予算区分  経常
4.研究期間  (昭和62〜平成4年)
5.担当  北海道農試・作物開発・野菜研
6.協力・分担関係

7.目的
 アスパラガスは品種比較試験に多大の年数と労力を要するため、北海道内での検討を経ないまま多数の品種が外国から導入栽培されている。当場では、品種育成のかたわら、品種の世界的な適応性を知るために行われている「国際品種比較試験」に参加して一応の成果を得たが、その中には、多収で品質も優良と思われるもの、既に普及しているが成績の不良であったもの、最近普及が計られているものなどを含み、今後のアスパラガス品種の導入に参考となるところが大きいと考えられる。

8.試験研究方法
 国際品種比較試験事務局から提供された11品種(米国3、ドイツ2、オランダ2、フランス2、スペイン1、台湾1)に北海道の標準として「北海100」を加えて試験を行った。
 試験規模は1区30株4反復、栽植密度130×30㎝、施肥量は道基準に準じて行った。
 ・昭和62年 3月30日温室内ぺ一パーポットには種、5月21日定植 昭和63年株養成
 ・平成元年 5月8日〜5月20日収穫
 ・平成2年 5月11日〜6月11日収穫
 ・平成3年 5月10日〜7月5日収穫
 ・平成4年 5月14日〜7月10日収穫
 収穫は日曜日を除く週6回行った。

9.結果の概要・要約
(1)収量には大差が認められ、最低の品種(UC157)と最高の品種(Gynlim)との間には3倍以上の差が認めら
 れた。なお、「UC157」は導入栽培の多いと思われる品種である。「北海100」よりも多収であったのは3品種
 (「Gynlim」「Lucullus234」「Franklim」)であった。
(2)規格内品の重量率は品種間差が少なく、全収穫量、総収量(若茎を21㎝に切り揃えた)、及び規格内収量
 における品種の順位はほとんど変わらなかった。
(3)若茎1本重は、「Lucullus234」「Tainan No.1」「Gynlim」が高かったが大差は認められず、収量は発生した茎
 数をほぼ反映した数値となった。
(4)収量の低かった品種ではいずれも初年目の収穫以後に欠株が非常に多く、これが低収量の要因となっ
 た。この欠株の発生原因については明らかではなかったが、収穫による養分収奪と収穫終了後の養分蓄積との不均
 衡が欠株発生を招いたものと推察される。
(5)若茎頭部の締りは、「UC157」「Jersey Giant」「Tainan No.1」で優れ、「Gynlim」もかなり優れていたが、
 「Lucullus234」「Franklim」「Cito」「Larac」などは劣った。「Franklim」は頭部が膨らんで品質が劣った。着茎の
 色にも差が認められた。

10.試験結果の具体的数字
品種 読み 原産国 全収穫量(㎏/a) 規格内累計収量
1989 1990 1991 1992 累計
UC157 ユーシー157 アメリカ 11.5 14.9 38.9 17.4 82.7 39.2
Lucullus 310 ルクラス310 ドイツ 10.3 21.7 57.9 41.2 131.1 53.3
Lucullus 234 ルクラス234 ドイツ 12.7 53.6 112.9 77.3 256.5 122.7
Cito シト フランス 8.4 22.9 37.8 33.7 102.8 45.6
Larac ララク フランス 9.3 22.0 48.4 42.3 122.0 55.6
Gynlim ガインリム オランダ 16.0 60.4 129.6 81.4 287.4 138.8
Franklim フランクリム オランダ 10.4 37.0 86.0 73.3 206.7 94.4
Jersey Giant ジャージージャイアント アメリカ 12.8 14.8 42.4 24.9 94.9 44.8
Del Monte 361 デルモンテ361 アメリカ 7.8 17.7 39.9 23.1 88.5 42.6
Largo 17-3 ラルゴ17-3 スペイン 9.8 24.1 46.0 34.8 114.7 53.9
Tainan No.1 タイナン1号 台湾 8.4 19.0 50.0 31.4 108.8 51.9
北海100   日本 6.7 31.0 58.5 52.4 148.6 63.0

品種 収穫茎数(規格内) (本/a) 平均一本重
(g)
草丈
(㎝)
欠株率(%)
(1992)
早期収量
(㎏/a)
頭部締
り指数
 1989   1990   1991   1992   累計 
UC157 415 476 1056 551 1947 15.8 157 36.1 4.6 4.0
Lucullus 310 333 686 1383 1043 3445 15.5 195 17.5 8.1 2.7
Lucullus 234 444 1393 2396 1846 6079 20.2 197 7.5 15.5 2.6
Cito 323 701 1098 974 3096 14.7 138 20.0 10.8 2.1
Larac 338 400 1167 1077 2982 16.8 169 14.2 13.0 2.2
Gynlim 513 1650 2962 2154 7279 19.1 201 2.5 20.8 3.4
Franklim 385 1073 2066 1915 5439 17.3 183 17.5 17.6 2.7
Jersey Giant 434 504 1164 718 2820 15.9 183 38.4 6.0 3.8
Del Monte 361 310 588 1113 701 2712 15.7 180 30.8 5.6 3.4
Largo 17-3 391 827 1365 1085 3668 14.7 167 16.7 9.7 3.3
Tainan No.1 293 560 1143 812 2808 18.5 183 30.8 7.4 3.7
北海100 265 874 1440 1316 3895 16.2 183 12.5 11.5 2.8

11.成果の活用面と留意点
 アスパラガス品種導入にあたっての資料とする。

12.残された問題とその対応
 更に収穫を継続して、収量性の経年的推移を見る必要があり、調査の予定である。