7.目的
　リンゴ品種「ハックナイン」及び「つがる」の適正着果量を明らかにする。

8.試験研究方法
　1)供試品種及び樹齢「ハックナイン」、「つがる」試験開始時7年生(昭和58年春定植)
　2)供試台木及び栽植距離M.26　４m×２m(125樹/10a)
　3)試験区の処理及び規模果/3、4、5、6頂芽1区5樹
　4)試験区の処理方法1樹当リの必要着果数にするため全頂芽数を調査し、着果量を数回にわたリ
　　摘果して調整
　5)樹の整枝法細形主幹形
　6)調査項目生育相、樹体生育、着花・結実状況、収量、果実品質

9.試験結果の概要・要約
《Ⅰ．処理の影響》
(1)幹周増加量多着果区で幹周増加量が両品種とも低い傾向であった。冬着果区で、幹の肥大が若干抑制
　されたと思われる。
(2)花芽率多着果区ほど、花芽率が低い傾向がみられた。特に「ハックナイン」の処理後1年目の3頂芽区の
　花芽率は、多区に比べて明らかに低かった。このような多着果区での処理後1年目の花芽率の低下は、
　「わい性台リンゴ樹の着果量に関する試験」(昭和53年、指導参考事項)でも認められている。
(3)収量は、当然のことながら着果量の多い区ほど多い。10a当りの換算収量(7〜10年生樹平均)では、「ハッ
　クナイン」は2.7t(6頂芽区)〜4.4t(3頂芽区)、「つがる」は2.3t(6頂芽区)〜3.5t(3頂芽区)であった。
(4)果実品質
　①1果重「ハックナイン」では5頂芽区が最も大きく、6、4、3頂芽の順に小さくなった。「つがる」では6頂芽区
　　が最も大きく、次いで5、4、3頂芽の順に小さ<なった。
　②糖度両品種とも着果量の多い3頂芽区で糖度が低かった。
　③地色3頂芽区は、地区と比べて両品種とも地色が縁に近く、果実の熟度が他の区に比べてやや遅れて
　　いたと思われる。
《Ⅱ．適正着果量について》
　3頂芽区については両品種とも果実品質が最も低く問題があると思われた。例えば「ハックナイン」の糖度をみても3頂芽区は平均糖度が12.8度であり、これは規格の最低ラインの13度に到達していない。6頂芽区では当然のことながら収量の面で地区よリ劣る。「ハックナイン」では、5頂芽区の方が果実品質では6頂芽区よリ優っているので、1果結実させるのに6頂芽は必要としない。「つがる」では、6頂芽区の果実品質が最も良かったが、収量の面で劣ること、4〜5頂芽区でも糖度等で規格のラインにほぼ到達していることから1果結実させるのに6頂芽は必要ないと思われた。
　以上の結果から「ハックナイン」の適正着果量としては、4〜5頂芽に1果着果させるのが適当と考えられる。
　「つがる」については、4頂芽と5頂芽では収量差が大きいこと、1果重や糖度等の規格に対して4頂芽で十分達成できると思われるので、「つがる」の着果量としては、4頂芽程度に一果着果させるのが適当と考えられる。

10.成果の具体的数字
第1表　　処理の影響が現われた主な形質の平均値(平1〜平4)

品種	果 ／ 頂 芽 数	幹周 増加量 (cm)	花芽率(%)	1樹当リ収量 (7〜10年生)(㎏)	10a当 リ換算 収量 (t)	果　実　品　質
						一果重(g)	小玉割合(%)	糖度(%)	着色 良果 割合 (%)	地 色
ハッ クナ イン	3	3.5	52	35.0	4.4	325	31	12.8	23	2.0
	4	3.4	62	31.5	3.9	344	20	13.2	29	2.3
	5	4.4	64	27.9	3.5	391	4	13.6	44	2.5
	6	3.9	60	22.1	2.8	370	12	13.4	39	2.5
つ が る	3	2.1	83	28.0	3.5	258	33	12.8	52	2.9
	4	2.5	84	23.8	3.0	268	22	13.1	62	3.0
	5	2.8	86	19.2	2.4	276	16	13.3	62	3.0
	6	2.4	90	18.6	2.3	289	9	13.5	71	3.2
備考						最低一果重* 　ハックナイン 300g 　つがる 250g (調整５%)		糖度* 　ハックナイン 14度 　つがる 13度 (調整５%)

注１)*印：自主品質規格(ホクレン)による。
　 ２)小玉割合：「ハックナイン」279g、「つがる」239g以下。
　 ３)着色良果割合：着色程度8〜10の割合(果実表面が80〜1OO%着色)
　 ４)地色　黄；4、緑黄；3、黄緑；2、緑；1

11.成果の活用面と留意点
　適正着果量　「ハックナイン」4〜5頂芽に1果、「つがる」4頂芽程度に1果

12.残された問題とその対応