成績概要書(作成 平成5年1月)
1.課題の分類  野菜 野菜・花 栽培 ミニトマトカーネーション 栽培一般
          北海道
2.研究課題名  養液培養システム(果菜及び花き)の性能試験
3.予算区分  受託
4.研究期間  (平3年〜平4年)
5.担当  道南農試 園芸科
6.協力・分担関係

7.目的
 JTで開発した養液培養システムの毛管水耕方式の北海道適応性について検討し、導入指導上の参考に供する。

8.試験研究方法
1)果菜システムの性能試験 供試ミニトマト「ミニキャロル」 栽培法
年度 は種期 移植期 定植期 栽植密度 ホルモン処理
平3 3月27日 4月29日 5月9日 190×22cm(239株/a) 5/31〜8/下 トマトトーン100〜150倍液5日毎
平4 3月1日 3月11日 4月8日 4/24〜9/中
栽培場所 無加温ガラス室 ベッド 巾50cm、長さ5m、2列
誘引・仕立法 ポリナワによる誘引、主枝1本仕立、つる下げ方式 

養液管理法(目標値)
項目 定植時 第1花房開花 第4花房開花 第6花房開花 収穫始以降
EC(ms/cm) 0.7 0.8 1.0 1.2 1.2
pH 5.5〜6.0

2)花きシステムの性能試験
供試作物 スプレーカーネーション「バーバラ」(平3.4)「ダークピンクバーバラ」(平3)
栽培法
項目 平成3年 平成4年
定植期 5月9日 4月9日、5月13日
定植培地 ロックウール5×5×5cm、7.5×5×5cm ロックウールマット2.5cm厚
仕立法 4本仕立 4、6本仕立(4/9定)4本仕立(5/13定)
栽植密度 160cm(ベッド80cm、通路80cm)×株間20cm 6列植(1,875株/a)
栽培場所 無加温ガラス室 ベッド 巾80cm、長さ6m

養液管理法(目標値)
項目 定植〜2週間 2〜4週間 4週間〜2カ月 2カ月〜発蕾時 発蕾時〜
EC(ms/cm) 平3 1.0 1.0 1.3 1.5 1.8
平4 1.3 1.3 1.5 1.8 2.0
pH 5.5〜7.0

9.結果の概要・要約
1)果菜システムの性能試験
 (1)ミニトマトを4月(平4)、5月(平3)定植の無加温、主枝一本仕立、つる下げ栽培で検討した。
 (2)生育は順調で、6月中旬(平4)、下旬(平3)から収穫が始まり、10月(平3)、11月中旬(平4)まで収穫できた。
 (3)収量は規格品(6g以上)で株当り4.1〜5.9kg、a当り980〜1,410㎏であった。
 (4)品質的には、平均一果重10〜11g、平均糖度8.0〜8.2%であった。
 (5)培養管理マニュアルに従った。EC値(0.8〜2.8ms/cm)はやや変動したが、pH値はほぼ目標値内(5.5〜
  6.5)で推移した。
 (6)生育期間中の室温は、平均気温が15〜20℃で、20℃前後で推移、液温、根圏部温度は室温前後で経
  過した。
2)花きシステムの性能試験
 (1)スプレーカーネーションを、4月(平4)、5月(平3.4)定植の無加温、4、6本仕立栽培で検討した。
 (2)生育は天候の影響を受けたようで、採花始は8月下旬(平4、4月定)、9月上旬(平3、4)となったが、平成4
  年は、11月中旬でも採花を完了できなかった。
 (3)収量、品質は、平成3年が目標本数をほぼ達成、切花長70cm以上が48%、着蕾数も7ケ前後と品質も良
  好であった。平成4年は、4月定植の4本仕立が目標の94%・5月定植(4本仕立)が84%採花できたが、4月定
  植の6本仕立は49%と極端に少なかった。4本仕立については、50cm以上の割合が80〜90%と高く、着蕾
  数6ケ前後であった。
 (4)養液管理はマニュアルに従った。EC値(0.7〜2.9ms/cm)はやや変動したが、pH値はほぼ目標値内(5.5〜
  7.0)で推移した。
 (5)生育期間中の室温は、平均気温が15〜25℃で、20℃前後で推移、液温、根圏部温度は室温前後で経
  過した。
 以上、毛管水耕方式の果菜、花き用養液培養システムを使用して、ミニトマトとスプレーカーネーションを栽培、検討したが、本システムを栽培マニュアルに従って使用すれば、本道でも十分栽培可能である。

10.成果の具体的数字
(1)果菜システムの性能試験
表1  ミニトマトの収量(平3)
月別\項目 規格内(〜6g)
個数(ケ) 重量(kg)
A B A B
6〜7月 12,034 12,787 176 170
8月 40,104 41,586 493 426
9月 24,569 27,449 229 246
10月 12,392 14,890 135 146
合計 89,099 96,712 1,033 988
1株当り 373 405 4.3 4.1
注A:ハウス外側(西)
B:ハウス中央

表2  1果重と糖度(平3)
月別\項目 1果重(規格内)(g) 糖度(%)
A B A B
6〜7月 14.6 13.3 7.4 7.3
8月 12.3 10.2 7.9 7.5
9月 9.3 9 8.5 8.5
10月 10.9 9.8 10.0 9.8
全平均 11.6 10.2 8.3 8.1
糖度は10日毎の測定値の平均(1回10ケ)

表3  ミニトマトの収量(平4)
月別\項目 a当規格内(〜6g)
個数(ケ) 重量(kg)
A B A B
6月 8,341 10,181 145 160
7月 51,672 59,702 634 677
8月 53,465 43,809 426 328
9月 16,492 10,492 135 71
10・11月 8,556 7,195 71 55
合計 138,526 131,379 1,411 1,291
1株当り 580 550 5.9 5.4

表4  1果重と糖度(平4)
月別\項目 1果重(規格内)(g) 糖度(%)
A B A B
6月 17.3 15.7 7.5 7.5
7月 12.3 11.3 8.3 8.1
8月 8.0 7.5 7.1 7.7
9 8.2 6.8 8.7 8.4
10・11 8.3 8.3 7.9 8.6
平均 10.2 9.8 7.9 8.1

 

(2)花きシステムの性能試験
表5  スプレーカーネーションの生育、収量(平3)
区別   採花時の収量(a当たり)
品種 培地
(ロックウール)
(cm)
栽花始
(月日)
切花長
(cm)
茎径
(cm)
着蕾数
(ケ)
1本重
(g)
〜70cm
(本)
69cm〜
(本)
合計(本) 株当たり
採花数
(本)
バーバラ 5×5×5 9.2 69.1 0.67 7.6 33.3 4,372 3,123 7,495 4.00
7.5×5×5 2 64.8 0.61 6.7 31.0 2,845 4,580 4,725 3.96
ダークピンク
バーバラ
7.5×5×5 6 61.0 0.63 6.9 33.0 451 4,268 4,719 4.00

表6  スプレーカーネーション生育、収量(平4)
定植期・仕立数 採花始
(月日)
収量(a当たり) 採花盛期の
50cm以上
(本)
49cm以下
(本)
合計
(本)
株当たり
採花数
(本)
切花長
(cm)
茎径
(mm)
着蕾数
(個)
切花重
(g)
4月9日定・4本 8.28 5,694 1,250 6,944 3.70 61.8 6.0 5.6 36.4
4月9日定・6本 8.28 5,062 562 5,624 3.00 68.2 5.8 6.3 38.1
5月13日定・4本 9.4 6,020 312 6,332 3.38 66.8 5.7 7.0 36.6

図1.ミニトマトのEC、pH値の変化(平3)

図2.ミニトマトのEC、pH値の変化(平4)

図3.スプレーカーネーションのEC、pH値の変化(平3)

図4.スプレーカーネーションのEC、pH値の変化(平4)

11.成果の活用面と留意点
 この成果はミニトマト、スプレーカーネーションに適応する。

12.残された問題とその対応
 (1)他作物での検討