成績概要書(作成 平成5年1月20日)
1.課題の分類  総合農業 作業技術 水稲、収穫5-1
          北海道 物理
2.研究課題名  水稲種子の収穫乾燥省力化実用技術
3.予算区分  受託
4.研究期間  平成3年〜4年
5.担当  北海道立中央農業試験場 農業機械部機械科
      北海道立植物遺伝資源センター 資源利用科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 水稲種子生産体系の合理化をはかるため、普及品種を用いて種子専用コンバインによる収穫法と種子用乾燥機による乾燥法が発芽育苗時の生育に及ぼす影響を検討する。

8.試験研究方法
 1)試験期日及び場所平成3年9月、平成4年9月秩父別町滝川市江部乙町
 2)試験項目
収穫法 乾燥法 発芽処理 育苗
種子専用コンバイン3機種
対象品種 きらら397
       ゆきひかり
収穫時期中水分
熱風循環乾燥機
除湿乾燥機
 
品種 収穫法と同じ
乾燥処理別発芽率
品種 2
乾燥法 3
 
苗形状
品種 2
乾燥法 3
 
 3)調査法平成3年度の収穫は専用コンバイン1機種で収種を行った。

9.結果の概要・要約
Ⅰ.収穫法
 (1)穀粒損失は作業速度0.3〜0.9m/sの範囲では0.6〜1.6%で、平均穀粒流量が毎時2.3tであった。
 (2)損傷粒は極めて少なく、軽胴割粒が「きらら397」で平均0.4%、「ゆきひかり」1.2%であった。
 (3)作業能率は平均作業速度0.8m/sで行い、毎時20〜23aの能率であった。また、機内の残留穀粒の掃
  除時間は50〜80分で、残留量が平均4.1㎏であった。
Ⅱ.乾燥法
 (1)種子用循環型乾燥機は循環過程での損陽籾の発生が少なく、機内残留籾を完全に除去できる構造で
  取扱い上の問題は認められなかった。
  熱風温度の制御条件を水分20%未満で40℃と45℃に設定したが、穀温はいずれの場合もほぼ30℃以下
  に制御され胴割れの発生は軽微であった。
  乾燥時間は張込み時の水分によるが、高水分条件、満量張込みで24時間未満である。掃除を含めたサ
  イクルタイムは26時間となったが、張込み水分の低下に伴い減少し、1日1回のローテーションが組める
  と考えられる。
 (2)除湿乾燥機は外気条件により乾燥速度が大きく異なり、乾燥終了までの平均乾減率は0.15〜0.25%の
  範囲であった。穀温は外気+1℃程度で仕上がり、胴割れの発生は軽微であった。循環過程での損傷
  籾の発生は少なかった。
Ⅲ.発芽力
  平成3年産籾の発芽率は翌年2月にはほぼ100%に達し、コンバイン排出時のオーガ使用の有無による
 差は無かった。平成4年産籾の機械乾燥区の発芽率は95%以上と高かったが、平均発芽日数は慣行区
 よりやや長かった。しかし、慣行区との差は短縮する傾向にあった。「ゆきひかり」は「きらら397」より平
 均発芽日数がやや長く、休眠が深い傾向にあった。種子専用コンバイン収穫籾の機械乾燥処理による
 発芽率は、慣行体系との差は認められず実用上支障はないと考えられた。

10.主要成果の具体的数字
表1  種子専用コンバインによる収穫作業精度 対象品種:「きらら397」
項目 A機 B機 C機
1 2 3 1 2 3 1 2 3
試験要因 作業速度(m/s) 0.25 0.52 0.74 0.49 0.54 0.95 0.44 0.60 0.85
平均刈高(cm) 9 9 10 5 5 5 9 9 10
殻粒損失内訳(%) 未脱粒 0.4 0.5 0.2 0.3 0.2 1.2 0.3 0.5 0.3
飛散粒 0.3 0.1 0.2 1.3 0.9 0.5 0.5 0.4 0.8
0.7 0.6 0.7 1.6 1.1 1.7 0.8 0.9 1.1
流量(kg/h) 殻粒流量 850 1754 3464 1568 2349 4132 2099 2357 3794
選別部流量 84 130 139 244 532 555 155 276 492
殻粒組成(%) 整粒 92.3 93.1 91.9 87.3 87.1 90.8 85.5 86.7 83.7
穂切れ粒 1.6 2.9 1.6 3.9 4.9 2.1 6.7 5.6 2.7
枝梗付着粒 3.5 1.8 2.7 4.8 4.3 2.9 3.5 2.9 7.2
損傷粒 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4
その他 2.6 2.0 3.8 4.0 3.6 4.2 4.3 4.8 6.0
軽胴割れ(%) 0.4 0.8 0.0 0.4 0.4 0.0 0.0 0.8 0.0

表2  機械乾燥結果の集約 (平成4年度 滝川市江部乙町)
機種 循環型熱風乾燥機 除湿乾燥機
品種 きらら397 ゆきひかり きらら397
総乾燥時間(h) 23.2 14.4 91.8
原料総重(㎏) 3348 2405 5501
原料水分(%) 29.7 26.6 30.0
仕上り水分(%) 14.9 15.4 16.0
毎時乾減率(%/h) 0.64 0.78 0.15
熱風(送風)温度(℃) 37.2 38.3 21.5
殻温(℃) 24.7(max31) 22.4(max30) 16.8(max23)
胴割れ(%) 0.4→1.8 0.8→2.2 0.2→0.4
1.2→0.4 0.0→0.4 0.0→0.2
割れ籾(%) 0.1→0.1 0.1→0.1 0.1→0.1
脱ぷ粒(%) 0.1→0.2 0.1→0.1 0.0→0.1

表3  平成3年産種子籾の発芽試験 (平成4年2月21日置床)
品種名 処理 貯蔵場所 発芽勢
(4日目)
発芽率
(%)
平均発
芽日数(日)
ゆきひかり
オーガ排出籾
除湿乾燥
種苗庫
実験室
11
47
99
99
6.15
4.37
きらら397
オーガ排出籾
熱風乾燥
 
種苗庫
実験室
6
44
100
100
6.13
4.59
きらら397
オーガ不使用籾
熱風乾燥
 
種苗庫
実験室
4
53
99
100
5.86
4.45
注)種苗庫:約0〜5℃、9月より貯蔵、実験室:約20℃、10月に種苗庫より移す。

表4  平成4年産種子籾の発芽試験 (平成4年12月11日置床)
品種名 処理 発芽勢
(4日目)
発芽率
(%)
平均発芽
日数(日)
ゆきひかり 熱風乾燥 14 99 5.26
慣行 65 99 4.24
きらら397 熱風乾燥 61 97 4.27
除湿乾燥 35 96 4.67
慣行 86 100 3.67
注)実験室内に貯蔵した籾を供試。

11.成果の活用面と留意点
(1)籾水分30%を目安に収穫を始める。
(2)殻温が30℃を超えないように熱風温度を制御して乾燥を行う。
(3)年次・品種・貯蔵法により休眠が深い場合があるので、育苗時の浸種吸水を十分に行い催芽に留意する。

12.残された問題とその対応
 直播用品種については未検討である。