完了試験成績(作成 平成5年1月)
1.課題の分類  総合農業 作業技術
          北海道 物理 園芸
2.研究課題名  モノレール式散水装量の多目的利用システムの開発
3.予算区分  共同
4.研究期間  平成3年〜平成4年
5.担当  中央農業試験場 農業機械部機械科/園芸部野菜花き第二科/三和サービス株式会社
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 ハウス内の防除、管理、収穫運搬作業の省力化と高精度化を図るため、モノレール式散水装置の多目的利用法を開発して、野菜・花きの低コスト生産安定化技術を確立する。

8.試験研究方法
1)散水機能
 調査項目機体調査、吐出圧力、散水ノズル特性、散水速度、散水量
2)薬剤散布機能
 (1)供試噴管懸垂式縦噴管(固定型、可動型)、水平噴管
 (2)調査項目ノズル特性、吐出量、散布精度(被覆面積率)
3)運搬機能
 (1)調査項目構造、操作性、積載荷重と走行性およびハウスパイプ強度
 (2現地実証作業方法作業時間
4)接触刺激構能
 (1)供試作物キャベツ(金糸201号)、はくさい、ブロッコリー(ハイツ)
 (2)接触部ブラシ、塩ビパイプ(47mmφ)、ローラブラシ(120㎜φ)
 (3)調査項目機体調査、接触刺激性能(草丈、葉数、葉柄長、最大葉長・葉幅、茎長、茎径)
※1)〜4)の場所は中央農業試験場内ハウス、3)の現地実証は札幌市丘珠で行った。

9.成果の概要・要約
1.散水機能
 1)散水ノズルの吐出量は、変動係数4%以下で均一であった。総吐出量は、吐出圧2.0㎏/㎝2で20.3L/min、
  吐出圧2.5㎏/㎝2で22.7L/min、吐出圧3.0㎏/㎝2で25.4L/minであった。
 2)散水量は圧力と移動速度で調節するが、移動速度のばらつきは少なく、前進、後進の平均移動速度に
  差はなかった。
 3)設定散水量と平均散水量との誤差率は1.1〜8.0%で、ほぼ設定通りの散水が可能だった(表1)。吐出圧
  と移動速度別の散水量を設定した。
2.薬剤散布機能
 1)懸垂式縦噴管の薬剤の付着は、表面には十分に付着した。裏面付着では、下位部で付着が劣っていた。
  可動型ノズルの方向を全て上向きにした場合、吐出圧20㎏/㎝2、ノズルからの距離30㎝で表面の被覆
  面積率が低下したが、裏面は下位部16㎝をのぞき60〜99%、60㎝では下位部16,46㎝をのぞき、被覆面
  積率は75〜94%で、表面についても極めて付着が良かった(表2)。
3.運搬機能
 1)モノレール運搬車は、モノレールに懸架しACモータ駆動により走行する。複数にモノレールを取付ける
  ことにより、各種の栽培様式に対応できる。各レール間の珍重力は、移動装置を併設することにより容
  易に行うことができる。
 2)運搬車の走行は80㎏積載しても、始動時の抵抗が11㎏程度、走行時のころがり抵抗はレールスパン2m
  で最大3.9㎏であった。2.75mでは6.2㎏であった。
 3)アーチバイブのたわみは100㎏積載しても最大71.2㎜であった。ハウスの強度計算より棟の最大たわ
  みは10㎝までとされており、許容限度以下であった(図1)。
 4)モノレール運搬車による積載可能重量はハウスの構造からは100㎏まで可能である。レール間移動の
  操作性を考慮すると、60㎏以下が操作に無理がない。
 5)現地で運搬車を用いてホウレンソウの収穫・搬出を行った。38.6㎏の収種物を2回に分けて運搬するこ
  とができ、運搬車を利用することにより、運搬車移動と荷おろし移動の時間は4.6分で、全作業時間に占
  める割合は6.3%で円滑な収種物の運搬ができた(表3)。
4.接触刺激機能
 1)接触刺激装置は、モノレール走行装置にけん引される。接触部はレベルが任意に変えられ、苗の成長
  に合わせて接触部の高さを変えることができる。
 2)懸垂式固定型接触のハクサイに関する効果は、ブラシ、塩ビパイプ何れによる接触部でも、草丈の短
  い、そろいの良い苗ができた。キャベツでは歴然とした効果の発現はなかった。
 3)回転型接触部による接触では、ブロッコリー、キャベツに対して、草丈、葉柄長が短くなり、コンパクトな
  苗になった。また、ブロッコリーに関しては無処理に比べ、苗そろいが良かった(図2)。

10.成果の具体的数字
表1  実散水量と設定散水量
吐出圧
(kg/cm2)
散水高さ
(m)
散水速度
(cm/s)
平均散水量
(mm)
設定散水量
(mm)
誤差率
(%)
2.0 55 7.2 1.60 1.57 1.9
2.5 55 7.2 1.73 1.75 1.1
3.0 55 6.5 2.30 2.17 6.0
2.5 55 3.3 4.03 3.82 5.5
2.5 70 5.6 2.43 2.25 8.0
2.5 55 11.1 1.20 1.14 5.3

表2  固定型ノズルと可動型ノズルの被覆面積率
ノズルタイプ ノズル方向 付着紙位置(cm) 20㎏/㎝2(%)
30cm 60cm
表面 裏面 表面 裏面
固定型

16 68.5 0.0 81.3 0.0
46 91.1 42.9 66.4 1.8
76 80.8 26.7 94.1 30.8
106 100.0 25.2 75.6 51.1
136 94.0 81.3 84.3 45.4
166 84.1 3.9 67.6 44.1
 
 
可動型

16 91.9 0.0 88.0 0.0
46 23.1 25.5 78.7 17.2
76 93.8 36.8 79.4 5.2
106 36.6 36.1 68.2 32.2
136 86.5 25.4 83.3 5.1
166 42.3 38.9 61.9 10.2

16 29.4 0.0 83.2 0.0
46 40.0 60.3 90.2 1.4
76 38.4 68.5 91.6 75.4
106 38.7 82.9 83.2 94.1
136 37.2 99.4 67.4 71.9
166 36.3 84.2 86.5 76.3
注)表中は、縦噴管を上からみたノズルの方向

A:進行方向にノズルを20°傾けた
B:進行方向と直角
C:進行方向にノズルを−20°傾けた

 

表3  運搬車収穫・搬出作業時間内訳
収穫(min) 積込み(min) 運搬車(min) 荷降し(min) 総作業(min)
59.5(80.6) 9.7(13.1) 1.9(2.6) 2.7(3.7) 73.8(100.0)

11.成果の活用面と留意点
(1)モノレール走行装置は、スピードのむらにより散水量が影響されるので、ハウスの設置、モノレールの
 設置に当たっては、丁寧に行う必要がある。
(2)支柱栽培については、薬剤散布噴管などの走行に支障をきたさないよう支柱等の設置に留意する。
(3)運搬車は原則的に100㎏までは積載可能だが、無理のない操作を考慮すると、60㎏以下で使用するこ
 とが望ましい。
(4)接触刺激装置は作物に均一に接触するように設置する。接触刺激効果については、効果の確認が必
 要である。

12.残された問題点とその対応