1.課題の分類 総合農業 作業技術 草生管理.4 草地 草地 草地管理 C-3 北海道 農業物理 2.研究課題名 簡易草地更新機の開発(ホイルトラクタによる傾斜草地の簡易更新に関する試験) 3.予算区分 道費 4.研究期間 (平成2年〜4年) 5.担当 根釧農試 酪農施設科/作物科 6.協力分担 なし |
7.目的
北海道における草地の更新割合は年間6%にすぎず,、定期的な更新が行なわれる草地は極めて限られている。更新が円滑に進まないため、草地は株化や裸地化、ルートマットの集積、土壌の理化学性の悪化、雑草の侵入などが進み、生産性は量的・質的に低下している。草地更新が行なわれない主な理由として、経費や既存のトラクタで施工できない傾斜地などの問題がある。安価な更新方法として、平坦地を対象に作講・部分耕と追播による簡易更新技術の研究が進められた。また、追播による定着はマメ科、特にアカクローバでは比較的安定しており、追播技術が一部地域で使われている。イネ科では前植生処理に除草剤使用の事例はあるが、除草剤を使わない場合には不安定な結果が多い。部分耕方式による簡易更新は経費の節減のみならず、傾斜草地の更新では土壌侵食の軽減対策として注目されるが、平坦地を対象とした研究が進められてきたため、かなりの面積を占める傾斜草地に対しては適用が困難とされている。また、未だ実用機は開発されていない。そこで、傾斜地等も対象とした部分耕方式による更新において耕耘幅・耕深および砕土方式などを検討し、既存の80〜90PS級トラクタで作業可能な簡易更新機に必要な諸条件を明らかにする。
8.試験研究方法
1)試験場所根釧農試内の永年草地
2)試験方法
①部分耕更新機の試作
②耕耘幅・耕深の検討(耕耘ピッチ、砕土率など)
③草種と播種量の検討(イネ科、マメ科)
9.結果の概要・要約
1)部分耕による播種でプラウによる播種床並の出芽数および立毛数を確保するためには、OGおよびMFで
は標準量の1.5〜2倍の播種量が必要である。PRは出芽率が高く、初期生育も旺盛であることから播種量
は標準量でよい(表1)。
2)部分耕の耕耘幅・耕
深は播種牧草の出芽、定着と密接な関係がある。部分耕の耕耘幅は30㎝程度、耕深は12㎝、耕耘面積
割合は50%程度が望ましい。
3)ルートマットの破砕には「なたづめ」が良い。また、土性などにより異なるが、5㎜以下の土塊割合を60〜
70%程度確保するには、耕耘ピッチは1〜2㎝程度が良く、左右へ土が飛散するのを防止するカバーが必
要である。
4)播種溝深は1㎝程度、溝間隔は3㎝程度が望ましく、播種後鎮圧を十分行なう。施肥・播種部にロール式
繰り出し機構を採用したため、傾斜による施肥・播種量の誤差は少なく、平坦地および傾斜地での利用
が可能である。
5)本試験で開発した部分耕試作2号機のもつ機能で十分な出芽・定着が可能であり、全面耕に及ばないも
のの、植生と生産性の改善が可能である。
6)傾斜地での利用も念頭において.全長・全高を小さくし、施肥・播種・鎮圧が行なえるた簡易草地更新機を
設計した(図1)。
10.成果の具体的数字
表1 主要諸元
型式 | 部分耕試作2号機 |
全長(㎜) | 2,770 |
全幅(㎜) | 1,950 |
全高(㎜) | 1,400 |
耕耘幅(㎝) | 28 |
耕深(㎝) | 12 |
爪形状 | なたづめ |
耕耘軸回転数(rpm) | 337(PTO540) |
整地輪形状 | ケンブリッジローラ |
整地輪直径(㎜φ) | 270 |
施肥・播種方式 | 接地輪駆動 |
〃繰出方式 | 講ロール |
〃ホッパ容量 | 110 |
鎮圧輪形状 | ゴムローラ |
表2 各草種の出芽・定着状況および草量
播種床 | 播種量 | 草種・品種 | 出芽率3) (%) |
定着数4) (本/㎡) |
定着率4) (%) |
草量4) (DMg/㎡) |
雑草率4) (%) |
部分耕1) | 標準 (2kg/10a) |
OG・ケイ | 38.4 | 650 | 87.6 | 25.2 | 51.2 |
OG・オカミドリ | 30.5 | 597 | 96.7 | 32.9 | 45.8 | ||
MF・タミスト | 42.1 | 377 | 100.0 | 48.4 | 45.6 | ||
PR・フレンド | 97.7 | 380 | 59.4 | 106.0 | 14.6 | ||
平均 | 52.1 | 501 | 85.9 | 53.1 | 39.3 | ||
部分耕1) | 標準 ×1.5 |
OG・ケイ | 42.0 | 1,147 | 94.2 | 48.5 | 20.2 |
OG・オカミドリ | 26.6 | 790 | 98.0 | 52.3 | 19.6 | ||
MF・タミスト | 40.1 | 400 | 74.2 | 65.1 | 18.6 | ||
PR・フレンド | 74.2 | 403 | 55.3 | 111.8 | 32.4 | ||
平均 | 45.7 | 685 | 80.4 | 69.4 | 22.7 | ||
部分耕1) | 標準 ×2.0 |
OG・ケイ | 48.9 | 1,207 | 63.8 | 101.8 | 12.7 |
OG・オカミドリ | 47.3 | 1,483 | 77.6 | 91.8 | 18.9 | ||
MF・タミスト | 39.0 | 530 | 75.7 | 71.5 | 27.4 | ||
PR・フレンド | 76.9 | 730 | 72.5 | 99.6 | 6.9 | ||
平均 | 53.0 | 988 | 72.4 | 91.2 | 16.5 | ||
プラウ2) | 標準 | OG・ケイ | 77.2 | 937 | 62.9 | 231.6 | 17.8 |
OG・オカミドリ | 72.7 | 1,000 | 68.1 | 182.9 | 29.8 | ||
MF・タミスト | 81.8 | 403 | 54.9 | 168.3 | 20.4 | ||
PR・フレンド | 97.8 | 433 | 67.6 | 438.2 | 2.6 | ||
平均 | 82.4 | 693 | 63.4 | 255.3 | 17.7 |
11.成果の活用面と留意点
(1)播種・定着後、導入草種の混入率の増加はそれぞれの草種、品種はもとより対象草地の草種構成、土
壌の状態等によって異なる可能性がある。
(2)傾斜地では等高線作業とする。
(3)混合機等を使用し、種子・肥料を均一に混和する。
(4)火山性土に適用する。
12.残された問題とその対応
(1)初期生育の遅いTYの播種、土壌構造の異なる洪積土、泥炭土への適応は未検討である。
(2)簡易更新機の耐久性が未検討である。