完了試験研究成績(作成 平成5年1月)
1.課題の分類  畜産 乳牛 根釧農試
          北海道
2.研究課題名  搾乳装置用酪農洗浄剤(T-LCL)の洗浄性能試験
          −搾乳装置用酵素配合アルカリ洗浄剤の性能評価試験−
3.予算区分  受託
4.研究期間  (平成4年)
5.担当  根釧農試研究部酪農第二科 管理科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 液体塩素化アルカリ洗浄剤および蛋白質分解酵素を配合した粉体アルカリ洗浄剤のミルキンクパーラ搾乳装置における洗浄性能について検討する。

8.試験研究方法
1)試験洗浄剤
  T-LCL(液体塩素化アルカリ洗浄剤)
  LE-101、LE-123(酵素配合粉体アルカリ洗浄剤)
2)試験時期平成4年6月〜10月
3)試験場所及び装置根釧農試総合試験牛舎、5頭×2列ヘリンボーンパーラ
 搾乳装置概要及び洗浄殺菌方式
 ・ユニット別にガラス計量ジャー及び牛乳サンプラー装備し装置の搾乳中に乳と接する内面積15.7m2
 ・洗浄工程は前ゆすぎ、洗浄剤循環、第一後ゆすぎ、第二後ゆすぎの4工程で、各工程の使用水量は
 130リットル。
4)試験方法
  1日2回の搾乳後の洗浄に14回のうち12回は供試アルカリ洗浄剤をO.5%濃度で、また残りの2回は酸洗
 浄剤を1%濃度で使用し、搾乳装置の汚れの付着残存状態及び衛生状態を週に1回に調査した。いずれ
 の洗浄剤も給湯口に設けられた洗剤容器に投入して使用した。
 (1)汚れの付着残存状態
  a:肉眼検査:ガラス計量ジャー、ミルククロー内部の付着物の有無。
  b:付着蛋白量測定:ミルククロー内部を拭き取リLowry法で定量。
 (2)衛生状態
  a:ゆすぎ落とし検査:1O%滅菌牛乳緩衝液を搾乳装置内に10分間循環させ、ゆすぎ液の細菌数を測定。
   測定項目;中温細菌、低温細菌、大腸菌群
  b:バルク乳の細菌検査:測定項目;中温細菌、低温細菌、大腸菌群
 (3)洗浄剤のゆすぎ性
  a:後ゆすぎ水のpH測定:後ゆすぎ工程後ポンプ部残水を採取し測定。

9.結果の概要・要約
(1)洗浄条件の概要
 洗浄剤循環工程での循環終了直前水温は39〜40℃、で「アルカリ・酸・温湯循環洗浄・ 搾乳直前殺菌方式」で推奨される洗浄水温が確保されていた。
(2)供試洗浄剤の概要
 T-LCLは、塩素を配合した強アルカリの液体洗浄剤で、従来から広く使用されている既存の液体塩素化アルカリ洗浄剤と同様の性状である。また、LE-101及びLE-123は、アルカリ性を押さえて蛋白質分解酵素を配合した粉体酵素配合アルカリ洗浄剤である。
(3)T-LCLによる洗浄状態
【a:汚れの付着残存状態】
 使用時の搾乳装置の洗浄状態を平成4年7月から9月にかけ二ヶ月間にわたリ継続調査した。肉眼検査
 ではガラス計量ジャー上部にわずかな薄い油膜がみられた他は付着物等はみられず、またクロー内部に
 も付着物等はみられなかった。
 クロー内樹脂面の付着蛋白量は14〜28μg/28㎝2とわずかな量でまた使用期間の経過に伴う増加傾向
 は認められず概ね良好な状態が維持された。
【b:衛生状態】
 搾乳装置のゆすぎ落とし液中の微生物数には使用期間の経過に伴う増加傾向は認められず、ゆすぎ落
 とし液中の中温細菌数の幾何平均は730/mlであった。
 搾乳前殺菌工程を考慮すると搾乳装置から乳を汚染する中温細菌数が200/ml以下と推定される良好な
 衛生状態が維持された。
【c:すすぎ性】
 洗浄工程終了後の装置内に残された残水のpHは6.1〜6.8で、装置内への洗浄剤のアルカリ成分の残留
 はみられなかった。
(4)LE-101及びLE-123による洗浄状態
 いずれも、使用後短期間で搾乳装置の衛生状態がわずかに悪化するとともに、ガラス計量ジャー及びミルククロー内に付着物が生じ、洗浄状態は不良となった。

10.成果の具体的数字
表  搾乳装置の洗浄状態
試験
処理
調査日 汚れの残存程度1) 付着蛋白量2) ゆすぎ落とし液細菌数 バルク乳細菌数
ガラス
計量
ジャー
ミルククロー ミルククロー
樹脂
表面
金属
表面
樹脂
表面
中温
細菌
低温
細菌
大腸
菌群
中温
細菌
低温
細菌
大腸
菌群
          (μg/28cm2) ・・・・・・・・・(/ml)・・・・・・・・・
慣行
洗浄剤
92.6.93) −〜± - - 16 420 39 20 64000 9600 760
92.6.163) −〜± - - 15 230 10 2 5900 280 45
92.6.233) −〜± - - 13 570 46 4 6000 220 10
92.6.303) −〜± - - 10 1100 35 13 7400 220 35
LE-101 92.7.84) ++ ++ ++ 440 3200 190 60 13000 460 240
T-LCL 92.7.143) −〜± - - 17 480 70 6 7800 710 50
92.7.213) −〜± - - 14 590 110 7 5400 220 20
92.7.283) −〜± - - 14 1000 56 7 18000 1400 870
92.8.43) −〜± - - 19 690 92 5 4500 480 30
92.8.113) −〜± - - 28 680 50 10 920 360 45
92.8.183) −〜± - - 15 1100 38 1 6900 1000 66
92.8.273) −〜± - - 17 870 17 14 5600 180 60
92.9.23) −〜± - - 15 810 51 20 8300 260 120
92.9.163) −〜± - - 24 570 75 5 4600 240 35
LE-123 92.10.265) ++ ++ 46 2700 140 14 6800 280 30
1)汚れの残存程度
 −;認められない
 ±;わずかな曇りや油膜等の付着がみられる
 +;明らかな固形物の付着がみられる
 ++;かなりの量の固形物の付着がみられる
2)ミルククロー内の樹脂面よリ拭き取リ法によリ採取。4つのミルククローの付着蛋白量の平均値。
3)ガラス計量ジャーの上部にわずかな薄い油膜の付着がみられた他は汚れの付着はみられなかった。
4)7月2日よリ使用開始。調査時には、ガラス計量ジャー内面に薄い白色膜状の付着物が霜降リ状にみられた。また、ミルククロー内の金属面はもろく剥離し易い薄い白色膜状の付着物がみられ、樹脂面の光沢が失われごく薄い硬い膜状の付着物がみられた。 ミルククロー内金属面から拭き取リ法によリ採取した蛋白質量は1000μg/10㎝2以上に達した。
5)10月23日よリ使用聞姶。10月26日の調査時には、ガラス計量ジャー内面にごく薄い白色膜状の付着物がみられた。また、ミルククロー内の金属面はもろく剥離し易い薄い白色膜状の付着物がみられ、樹脂面の光沢が失われていた。ミルククロー内金属面から拭き取リ法によリ採取した蛋白質量は210μg/10㎝2であった。

11.成果の活用と留意点

12.残された問題とその対応