1.課題の分類 草地 永年草地・放牧 管理・利用 D-3 北海道 家草合同 2.研究課題名 パンドスプレー法を用いたペレニアルライグラスの追播による ケンタッキーブルーグラス優占草地の植生改善 3.予算区分 場特定 4.研究期間 完(平成2〜4年) 5.担当 北農試・草地管理研 6.協力・分担関係 北農試・農業機械研 |
7.目的
ケンタキーブルーグラスの優占した放牧草地に、ペレニアルライグラスを追播により導入し、植生を改善する。追播方法としてパンドスプレー法(対象草地に除草剤を帯状に散布すると同時に散布域の中央に作溝・溝内播種を行う方法)を適用し、その植生改善効果より有効な散布幅ならびに薬量を検討する。
8.試験方法
除草剤の帯条散布と作溝・溝内播種を1工程で行うための散布装置を試作するとともに、本道播方式おいて散布幅ならびに薬量が植生改善効果に及ぼす影響を検討した。
帯状の散布を行うために散布角度30度のノズルを用い、散布幅の調整は地面からノズルまでの高さを変えることにより行うこととした。各ノズルを作溝型播種機のカッターホィール(12列)一の前方に取り付け、散布・作溝・播種の一連作業が行えるようにした(図1)。散布幅ならびに薬量に関する処理として、
①0区:無散布
②5-500区:散布幅5㎝、散布域における薬量500(ml/10a)
③5-1000区:幅5㎝、葉量1000(ml/10a)
④10-500区:幅10cm、薬量500
⑤10-1000区:幅10㎝、薬量1000
を設けた(図2)。除草剤にはグリホサートを用い、平3年8月23目に供試草地(表1)の既存植生を草高約5cmで刈払った後、各処理区の帯状散布(表2)・作溝(溝幅:約1㎝、深さ:約3㎝、溝間隔:20㎝)・溝内播種を1工程で行った。追播牧草のペレニアルライグラス(以下PR)にはフレンドを用い、播種量は3(kg/10a)とした。播種時の施肥は無し、反復数は3とした。掃除刈を9月30日に行った。
追播翌年は年間7回の刈取を行い、施肥量は年間N:P2O5:K20=14.0:15.4:12.3(㎏/10a)とした。
9.成果の概要
1)追播当年のPRの個体密度は、無散布区、散布幅5cm区より10㎝区が高い値を示したが、有意差は認め
られなかった。茎数及び地上部個体重は、散布幅10cm区が無散布区及び5cm区より有意に高い値を示
した。すなわち、10cm幅の散布により追播牧草の発育と生長が顕著に促進された。なお、10cm幅の散布
区では、薬量1000ml区の方が晩秋の茎数、地上部個体重とも有意に大きな値を示した(表3)。
2)追播翌年のPRの草種構成割合は無散布区<散布幅5cm区<散布幅10㎝区の順に大きな値を示した。
散布幅10cmの場合には第3回までの刈取では薬量1000ml区の方が有意に高い値を示レたが、第4回以
降の刈取では薬量間に有意差が認められなかった(図3)。
3)追播翌年のPRの年間収量は散布幅5cm区が無散布区の約2倍、散布幅10cm区は約4〜5倍に達した。
散布幅10cmの薬量間に有意差は無かった。また、全乾物収量についてみると、いずれの散布処理区と
も無散布区より有意に低下せず、既存植生の帯状枯殺による減収は認められなかった(表4)。
以上から、ケンタッキーブルーグラス優占草地に対する本追播方式は既存草種と追播牧草との競争を軽減することによって、追播牧草の生育を促進し、追播による植生改善の効果を高めることが示された。低薬量化ならびに植生改善効果等から判断すると、PRの追播において有効な散布幅は10㎝、散布域におけるグリホサートの薬量は、500(ml/10a)が適当であると思われる。
10.成果の具体的数字
表1 供試草地の植生
裸地率(%) | 主要草種の被度(%) | ||
OG | KB | WC | |
5 | 15 | 63 | 23 |
表2 帯状散布の作業工程に関する設定値
処理 | グリホサート の溶液の濃度 (%) |
散布域における 散布液量 (l/10a) |
地面とノズル の距離 (㎝) |
走行速度 (km/h) |
0 | - | - | - | 3.0 |
5-500 | 0.55 | 91 | 9 | 2.8 |
5-1000 | 1.10 | 91 | 9 | 5.8 |
10-500 | 0.57 | 88 | 19 | 3.0 |
10-1000 | 1.14 | 88 | 19 | 3.0 |
表3 追播当年におけるペレニアルライグラスの個体密度及び生育状況
処理 | 個体密度(/㎡) | 茎数(/個体) | 地上部個体重(㎎) | |||
(9/7)1) | (9/30) | (9/30) | (10/29) | (9/30) | (10/29) | |
0 | 76a2) | 188a | 1.0a | 1.0a | 6.8a | 6.0a |
5-500 | 70a | 169a | 1.0a | 1.2a | 15.4a | 23.5ab |
5-1000 | 97a | 140a | 1.3a | 1.1a | 23.5a | 28.0ab |
10-500 | 177a | 309a | 3.1b | 2.8b | 70.5b | 107.9b |
10-1000 | 477a | 503a | 4.1b | 5.5c | 94.8b | 255.7c |
表4 追播翌年における各草種の年間収量
処理 | 収量(DW ㎏/10a) | |||||
PR | OG | WC | KB | 他 | 合計 | |
0 | 55a2) | 198ab | 1.0a | 1.0a | 6.8a | 803ab |
5-500 | 70a | 169a | 1.0a | 1.2a | 15.4a | 935c |
5-1000 | 97a | 140a | 1.3a | 1.1a | 23.5a | 783ab |
10-500 | 177a | 309a | 3.1b | 2.8b | 70.5b | 826b |
10-1000 | 477a | 503a | 4.1b | 5.5c | 94.8b | 758a |
11.成果の活用面と留意点
①ケンタッキーブルーグラス優占草地の省力的植生改善技術として有効である。
②適用地域はペレニアルライグラスの生育適地とする。
③追播の時期は8月中〜下旬とする。なお、本追播方式では作溝時に発生する土粒が散布直後の既存植
生に付着するため、グリホサードの薬効が低下する可能性がある。特に乾燥した土壌条件では薬効低下
の可能性が大きいと考えられるので、降雨後に追播を行う。
④土壌理化学性が悪化していない条件下で適用できる。
12.残された問題点とその対応
①500(ml/1Oa)以下での適正な薬量水準の検討
②希釈水量の少量化の検討
③パンドスプレー法の実用作業機の製作