成績概要書(作成 平成5年1月)
1.課題の分類  総合農業 営農 経営 5-3-6
          北海道 経営
2.研究課題名  広域野菜産地の機能と組織条件(野菜産地の広域化機能と組織運営)
3.予算区分  道費
4.研究期間  (平2年〜4年)
5.担当  北海道立十勝農業試験場 研究部経営科
6.協力・分担関係  なし

7.目的
 農協間の共同開係による広域野菜産地(以下、広域産地)のうち、畑作地帯において近年急激に形成されている単一品目による広域産地を対象に、その組織構造と経済的基盤を明らかにし、畑作地帯における野菜の導入拡大に効果的な広域産地のしくみと組織化を図るための条件を明らかにする。

8.試験研究方法
 (1)十勝における広域産地事例を対象に、広域産地の結合関係を明らかにする。
 (2)広域産地の組織誘引および組織構造を明らかにする。
 (3)広域産地の経済的基盤が何に依拠しているか、コストおよび価格面から検討する。
 (4)広域化にともなう技術格差に着目し、広域産地を組織化するための条件を検討する。

9.結果の概要・要約
(1)広域産地における農協間の結合関係は、産地運営に関する意志決定機関の有無、資本および労働
 力分担の有無で次の3つに区分できる。まず、意志決定に参加するとともに資本の分担もおこなう「水
 平的」結合タイプ。意志決定、資本・労働力の分担がともにない垂直的結合タイプ。意志決定に参加し
 ないが労働力の分担を行なう中間タイプである。
 垂直的結合は農協間提携が明文化されない、「みなし広域」であり、結合度合は最も弱い。
(2)広域産地の組織誘引として、産地生成期のリーダー農協には、①生産量の早期拡大による投下資
 本(選別・貯蔵施設)の有効利用②出荷量の増大に基づく市場への安定供給③新規参入の阻止、フォ
 ロアー農協には、①無投資での選別貯蔵施設の利用②確立された生産技術の利用③有利価格の適
 用④商系介入の未然防止がある。産地発展期になるとリーダー換協には、①販売ルートの拡大②フォ
 ロアー農協の販売情報の利用③省力施設導入による雇用労働力の効率利用④資金調達の軽減が、
 フォロアー農協には結合関係を利用した新たな品目の広域関係形成の誘引が認められた。これら誘
 引は、広域産地の発展段階ならびに先の結合関係とも対応する。
(3)選別・貯蔵を中心とした調整コストをだいこん産地間で比較すると、大規模な広域産地ほどコスト高
 で「広域産地=大規模な施設利用→低コスト」という図式は否定される。すなわち、施設利用に関して広
 域産地形成によるコスト節約の適用局面は限られ、長期的には、大量物流をもとにした有利価格の獲
 得が重視される必要がある。また、広域化を進める場合、施設配置は一極集中に固執すべきでない。
 前者は、実際にも広域産地がより高い市場価格を獲得することで、小規模な単一産地に比べ、高い収
 益を農家に実現していることが確認された。
(4)産地の広域化に伴い、新規に加わるフォロアー農協の農家にとっては、①生産条件の違いによりリー
 ダー農協の生産技術の有効性が低下する。②運搬距離が増大し輸送コストが大きくなることは不可避
 である。特に、①は品質の低下を招き有利価格の実現にマイナスに作用するため、生産技術の短期
 高位平準化は産地機能として重要な位置を占める。これに関しては、新規耕作者に対する教育活動、
 栽培技術実用化事業が部会活動として小地域単位に取り組まれること、部会活動の支援と技術指導
 に関しては普及組織問の統一した連携強化が必要である。②は、販売単価、調製流通コスト、産地内
 のシステムとともに、一極集中型の広域産地における産地規模を規定するとみられる。

10.成果の具体的数字
表1  だいこん産地における1Oa当たり農家収益と技術水準
  一戸作付面積
(a)
10a当たり 秀品率
(%)
収量
(kg)
農家収益
(1000円)
広域産地 A地域 リーダー 155 4,000 175 73
フォロアー1 180 3,700 155 70
B地域 リーダー 350 3,100 80 43
フォロアー1 560 2,900 65 38
フォロアー2 210 2,300 35 26
単ー農協産地 140 3,800 80 90
注)農家収益は販売額から選別・貯蔵を含む流通経費を差し引いたもの。

表2  広域野菜産地における作付経験年数別の技術格差
作 付
経験年数
一戸作付面積
(a)
10a当たり 秀品率
(%)
収量
(kg)
農家収益
(1000円)
A1年 50 4,000 175 71
広2年 80 3,600 160 70
域3年 160 3,800 170 73
4年〜 190 4,000 175 72
B1年 360 2,300 50 33
広2年 190 3,000 65 35
域3年 360 2,700 60 36
4年〜 360 3,100 80 44

図1  出荷量規模と選別〜流通コストならびに農家収益(だいこん)
 注)破線:選別貯蔵等の調整コスト
   細線:選別・貯蔵ならびに輸送・販売手数料のコスト
   太線:農家手取り収益

11.成果の活用面と留意点
 記載データは実数に基づいているが、大半は加工して提示した。したがって、データの値そのものは判断の基準としてではなく、傾向を示すデータとの理解の下で活用することが必要である。

12.残された問題とその対応
 品目ごとの共同選別・貯蔵施設の適正な規模と配置のあり方、およびそれを有効に利用しうる産地内の輸送システムの検討が残されている。