総合農業 作物生産 夏作物 てんさい-Ⅰ-2-238 北海道 作 物 畑作 てんさい新品種候補系統 「北海62号」の概要 北農試・畑研セ・甜菜育種研 |
1.特性一覧表
系統名 「北海62号」
組合せ (NK-183BR㎜-CMSxNM-219㎜-0)xNK-218BR
特性 | 長所 | 短所 |
1.根重が多く糖量も多い | 1.耐湿性がやや弱い. | |
2.採種性がよい. |
採用県と普及見込み面積 北海道 10,000ha
調査地 | 育成地(北海道農業試験場) | ||||||
系統・品種 形質 |
北海62号 | モノホマレ 対象品種 |
モノヒカリ 比較品種 |
モノパール 比較品種 |
モノホワイト 比較品種 |
スターヒル 比較品種 |
モノエース・S 比較品種 |
倍数性 | 二倍体 | 二倍体 | 二倍体 | 二倍体 | 二倍体 | 二倍体 | 三倍体 |
種子の胚数 | 単胚 | 単胚 | 単胚 | 単胚 | 単胚 | 単胚 | 単胚 |
葉姿 | 直立 | 直立 | 直立 | 直立 | 直立 | やや開平 | やや開平 |
葉色 | やや濃緑 | やや濃緑 | やや濃緑 | やや濃縁 | やや濃縁 | 中 | 中 |
葉形 | 皮針 | 皮針 | 皮針 | やや皮針 | 皮針 | やや皮針 | 楕円 |
葉身の大きき | やや小 | やや小 | やや小 | やや小 | やや小 | 中 | 中 |
葉面縮 | 中 | 中 | 中 | 中 | 多 | やや多 | 中 |
葉柄の太さ | やや細 | やや細 | やや細 | 中 | やや細 | やや細 | 中 |
トップ重 | やや少 | やや少 | 少 | 中 | やや少 | やや少 | 中 |
T/R比 | 低 | 低 | 低 | 低 | 低 | 低 | やや低 |
抽苔性 | 少 | 少 | 中 | やや少 | 少 | 少 | 少 |
褐斑病抵抗性 | やや弱 | やや弱 (やや強) |
やや強 | やや強 | 弱 | 弱 | 弱 |
根腐病抵抗性 | 弱 | 弱 | 弱 | 弱 | 弱 | 弱 | 弱 |
耐湿性 | やや弱 | やや弱 | 中 | やや弱 | やや弱 | 弱 | 中 |
調査地 | 北海道農業試験場 | 道立北見農業試験場 | 道立十勝農業試験場 | ||||||
系続・品種 形質 |
北海 62号 |
モノホマレ 対象 |
モノヒカリ 比較 |
北海 62号 |
モノホマレ 対象 |
モノヒカリ 比較 |
北海 62号 |
モノホマレ 対象 |
モノヒカリ 比較 |
根重(t/10a) | 7.24 | 7.05 | 6.97 | 6.14 | 5.96 | 5.97 | 6.3 | 5.94 | 6.19 |
根中糖分(%) | 17.12 | 17.05 | 17.11 | 19.09 | 19.07 | 19.04 | 17.98 | 18 | 18.02 |
糖量(㎏/10a) | 1,239 | 1,199 | 1,194 | 1,173 | 1,137 | 1,137 | 1,129 | 1,065 | 1,111 |
ナトリウム(meq/100g) | 0.93 | 0.91 | 0.68 | 0.47 | 0.46 | 0.36 | 0.22 | 0.24 | 0.2 |
カリウム(meq/100g) | 3.68 | 3.78 | 3.23 | 3.76 | 3.81 | 3.09 | 3.72 | 3.77 | 3.19 |
可溶性窒素(meq/100g) | 0.75 | 0.88 | 0.57 | 1.25 | 1.66 | 1.1 | 1.03 | 1.22 | 0.91 |
不鈍物価(%) | 3.16 | 3.34 | 2.64 | 3.06 | 3.38 | 2.56 | 2.93 | 3.11 | 2.54 |
修正糖分(%) | 15.18 | 15.04 | 15.43 | 17.23 | 17.16 | 17.46 | 16.25 | 16.22 | 16.48 |
修正糖量(㎏/10a) | 1,098 | 1,059 | 1,077 | 1,059 | 1,022 | 1,043 | 1,019 | 959 | 1,016 |
調査年次 | 平成3年〜5年 |
2.「北海62号」の特記すべき特徴
てんさい「北海62号」は、北海道農業試験所畑作研究センター(元畑作物生産部)において、高糖・高品質、多収性を目標に、同農試が育成した単胚二倍体雄性不稔種子親系統(NK-183BRmm-CMS×NK-219㎜-0)に、同農試が育成した多胚二倍体花粉親系統(「NK-218BR」)を交配して育成した単胚二倍体・三系交配一代雑種である。
1)根重ば「モノホマレ」より多く多収性である.
2)根中糖分は「モノホマレ」並で糖量は「モノホマレ」より多い.
3)品質は「モノホワイト」より劣るが、「モノホマレ」よりやや良い.
4)抽苔性は「モノホマレ」、「モノホワイト」並で少ない.
5)褐斑病抵抗性は「モノホマレ」並のやや弱で、根腐病抵抗性は「モノホマレ」並に弱い。
6)耐湿性は「モノホマレ」並でやや弱い。
7)採種性は「モノパール」並で「モノヒカリ」より優れる。
3.奨励品種に採用しようとする理由
昭和61年にてんさいの糖分取引制度が導入されて以来、高糖、高品質でなおかつ糖量の多い品種を目標に育種が進められてきた。その結果、高糖、高品質の品種は育成されたが、収量性の点で不十分であるため糖量の伸びが少なく、今後は現在の糖分、品質を維持しつつ、より収量性の高い品種の育成が切望されている。
現在、網走管内を中心に「モノホマレ」が奨励品種として普及しているが、収量性の点から「モノホマレ」の作付け面積が年々減少している。そこで、「モノホマレ」より収量性に優れ、「モノホマレ」並の糖分を持つ品種が必望である。
「北海62号」は、「モノホマレ」並の糖分であるが根重が多く、糖量は「モノホマレ」より多い。また、抽苔性も「モノホマレ」並であるため、てんさいの作付け面積の多い十勝、網走地域を中心として北海道一円に普及することにより、北海道の畑作農業及ぴてんさい糖業の発展に大きく貢献することが期待できる。
4.普及見込地帯
北海道一円
5.栽培上の注意
1)耐湿性がやや弱いので、湿害の恐れの多い地帯は避ける。
2)抽苔性は少であるが、まれに発生することがあるので極端な早まきを避ける。
3)その他栽培法は「モノホマレ」に準ずる。