【普及奨励事項】
1.課題の分類  総合農業 作物生産 夏作物
          北海道   畑作    てんさい
2.課題 てんさい「HT7」に関する試験成績
3.場所名 北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農業試験場
協力 北海道農業試験場 日本甜菜製糖株式会社 北海道糖業株式会社 ホクレン農業協同組合連合会
4.新品種候補系統名 てんさい「HT7」

5.来歴および育成経過
1)来歴
「HT7」は、スウェーデンのヒレスヘッグ種子会社が育成した三倍体、単胚の一代雑種である。
二倍体雄性稔書種子親系統「MS-298-N」に四倍体多胚花粉親系続「4X/6」を交配し、平成元年(1989年)に育成された。

2)試験経過
(1)平成2年: 北海道糖業株式会社が輸入し、「HM90-05」の系統名で輸入品種予備検定試験を行った。
(2)平成3年〜平成5年:「HT7」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場等において
輸入品種検定試験を行った。
(3)平成4年〜平成5年:北海道立十勝、北見農業試験場において品質特性検定試験、十勝農試において栽
培特性検定試験、褐班病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定
試験、根釧において抽苔耐性特性検定試験を行った。
(4)平成4年〜平成5年:全道17カ所において現地検定試験を行った。

6.特性
1)形態的特性
「HT7」は、草丈は「スターヒル」よりやや短く、業姿はやや開平である。葉数は「スターヒル」より少なく.葉形はやや皮針、葉身の大きさは「スターヒル」とほぼ同程度で、葉柄長はやや短い。
クラウンは小さく「スターヒル」とほぼ同じ、根形は円錐形で、分岐根は少ない。
2)根重
「スターヒル」並である。
3)根中糖分
「スターヒル」より高い。
4)糖量
「スターヒル」より多い。
5)品質
有害性非糖分は、アミノ態窒素が「スターヒル」より低く、カリウムは「スターヒル」よりやや低く、ナトリウムは「スターヒル」並である.
不純物は「スターヒル」より低く、品質は良好である。
6)抽苔耐性
抽苔耐性は「やや強」であり.「スターヒル」より弱い。
7)耐病性
褐班病抵抗性は「中」であり、「スターヒル」より強い。
8)耐湿性
耐湿性は「やや弱」であり、「スターヒル」より強い。

7.試験成績
各農試における成績(平成3年〜平成5年の3ヵ年平均)
  系統名または
品種名
根重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/10a)
不純物価
(%)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量 不純物価



HT7 5.84 18.73 1,090 2.94 97 104 101 89
スターヒル 6.05 18.34 1,106 3.17 100 102 102 96
モノエースS 5.5 18.92 1,039 2.82 91 105 96 86
モノホマレ 6.04 17.95 1,081 3.29 100 100 100 100



HT7 5.85 19.34 1,131 3.25 94 103 97 97
スターヒル 5.8 18.94 1,098 3.53 93 100 94 105
モノエースS 5.63 19.63 1,103 3.02 90 104 94 90
モノホマレ 6.22 18.85 1,172 3.36 100 100 100 100



HT7 8.38 17.67 1,480 3.51 98 103 101 92
スターヒル 8.32 17.4 1,449 3.66 98 102 99 96
モノエースS 8.09 17.75 1,432 3.51 95 104 98 92
モノホマレ 8.52 17.11 1,458 3.82 100 100 100 100



HT7 5.64 19.35 1,090 2.76 96 104 100 92
スターヒル 5.72 18.84 1,077 3.1 98 101 99 104
モノエースS 5.32 19.57 1,040 2.72 91 105 96 91
モノホマレ 5.84 18.6 1,086 2.99 100 100 100 100


HT7 6.55 17.87 1,171 2.79 93 105 98 84
スターヒル 6.47 17.11 1,109 3.21 92 101 92 96
モノエースS 6.21 17.94 1,116 2.83 88 105 93 85
モノホマレ 7.05 17.03 1,199 3.34 100 100 100 100
注)不純物価(%)={[10xN%)+(2.5xK%)+(3.5xNa%)]÷根中糖分}x100
K:カリウム、Na:ナトリウム、N:アミノ態窒素。

現地検定試験成績全道平均
系統名または
品  種  名
根重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/1Oa)
対「モノホマレ」比(%)
根重 根中糖分 糖量
HT 7 5.71(5.60) 17.35(17.12) 989(956) 97(96) 104(104) 1OI(100)
モノホマレ 5.87(5.82) 16.70(16.45) 980(956) 100(100) 100(100) 100(100)
スターヒル (5.59) (16.58) (925) (96) (101) (97)
注)( )内は「スターヒル」供試8場所の平均値。

特性検定試験成績
品種名
または
系統名
褐斑病抵抗性(十勝農試) 抽苔耐性(根釧農試) 耐湿性(中央農試)
発病程度2ヵ年平均 判定 10月拙苔株率% 判定 腐敗度 判定
9月中旬 10月初め 平4年 平5年 平4年 平5年
HT 7 1.46 2.73 3.3 1.2 ヤヤ強 60.4 21.2 ヤヤ弱
スターヒル 2.25 3.57 80.5 25.5
モノエースS 2.17 2.88 45.4 13.9
モノホマレ 2.17 3.22 0.3 0.4 71.3 21.6 ヤヤ弱

8.配布可能種子量
平成6年度   1,000kg
平成7年度以降 6,000kg

9.適応地帯および普及見込面積
道央、道南、道北.十勝、網走内陸(抽苔に対する懸念のない地帯)
平成6年度 1,000ha 平成7年度以降 6,000ha

10.栽培上の注意
1)褐斑に対する抵抗性は「スターヒル」より強いが、適期防除に留意する。
2)その他の栽培法は、「スターヒル」に準ずる。