成績概要書【指導参考事項】(平成6年1月)
1.課題の分類
2.研究課題名 良食味維持のための米貯蔵・輸送法
        (低コスト流通システムの開発)
3.予算区分 道費
4.研究期間 (平成2年〜平成4年)
5.担当 中央農試 農産化学部 流通貯蔵科
6.協力・分担関係 なし

7.目的
食味の良い米を供給するためには、品種改良、肥培管理とともに収穫後の貯蔵環境を適切に保つことが重要である。このことをふまえ平成2年度に「北海道産米の貯藏法に関する試験」が指導参考となり、低温倉庫での貯蔵が米の食味維持にとって最も効果があり、ついで籾貯蔵あるいは酸素濃度を制御した貯蔵法が有効である事が示された。
本試験は、貯蔵米の品質と貯蔵温度の関係を明らかにし、北海道の自然条件を生かした貯蔵庫の効果を検討することにより、良食味な米を周年供給することを目的としたものである。

8.試験研究方法
1)低温貯蔵試験
貯蔵期間、供試品種:1990年11月〜1991年10月、「きらら397」
貯蔵条件:玄米ポリ包装貯蔵、温度(常温、15℃、5℃、O℃、-5℃、-30℃)
2)低温貯蔵現地試験
貯蔵期間、供試品種:1991年11月〜1992年10月、「きらら397」
貯蔵条件:玄米樹脂袋、O.03㎜ポリエチレン包装
「人工永久凍土低温貯蔵庫」、「雪氷室型貯藏庫」、低温倉庫
3)低温条件から高温条件にした場合の品質変化
貯蔵期間、供試品種:1993年4月〜9月
貯蔵条件:(常温倉庫、低温倉庫、雪氷室型肝蔵庫)x貯蔵後の保管条件(高温(25℃)、低温(25℃))
玄米樹脂袋貯蔵(雪氷室型貯蔵庫貯蔵米は0.03㎜ポリエチレン包装)
4)輸送試験
輸送期間、輸送先:1991年7月26日〜30日、東京・福岡
   1992年8月29日〜9月2日、東京・兵庫
輸送形態:普通コンテナ、保冷コンテナ、冷蔵コンテナ、平ボディ、平ボディ+保冷シート
包装形態:1t詰めフレコン、60kg詰め樹脂袋、30㎏詰め紙袋

9.結果の概要・要約
1)良食味を維持するための貯蔵温度を、常温から−30℃の範囲で検討したところテクスチャー、食味官能試験等の結果から5℃以下が適当であると判断された(図1、図2)。また氷点下域での貯蔵効果も認められたが、その程度は小さく温度を保つ施設・エネルギー等を考慮すると認められたが、0〜5℃の貯蔵温度が適当と判断された。
2)0〜5℃の庫温を保ち、かつ北海道の自然条件を生かした貯蔵庫として「人工永久凍土低温貯蔵庫」、「雪氷室型貯蔵庫」の利用が可能であり、貯蔵米の食味も低温倉庫貯蔵米に対してよく維持されていた(表1)。
3)「人工永久凍土低温貯蔵庫」、「雪氷室型貯蔵庫」はいずれも庫内が高湿度環境のため、貯蔵中に玄米水分の上昇がみられたが、包装処理(O.03㎜ポリエチレン)によって防ぐことができた。(表2)
4)貯蔵後の保管条件により米の品質は劣化するが、貯蔵温度による品質の差異は変わらなかった。(図3)
5)輸送試験を実施したところ、輸送方法に関して保冷手段を施したものは輸送中の平均温度が低い傾向にあり、また、平ボディ輸送は常温コンテナ輸送に対し温度変化の程度が小さかった(図4、図5)。また包装形態に関して包装量が多いものほど低温で推移する傾向にあり、殻温の上昇を抑える輸送方法の組み合わせとしては、1t詰めフレコン−平ボディ+保冷シートあるいは60㎏詰め樹脂袋−保冷コンテナが適当と考えられた。

10.成果の具体的数字


図1 貯蔵12カ月後のテクスチュログラム特性値


図2 貯蔵12カ月後の食味官能試験結果
   5℃貯蔵米を基準として評価

表1 テクスチュログラム特性値の貯蔵中の変化
貯蔵条件 H(T.U.) -H(T.U.) H/-H
'91/11 '92/4 '92/10 '91/11 '92/4 '92/10 '91/11 '92/4 '92/10
凍土貯蔵庫 3.12 3.1 3.11 4.33 4.22 4.25 3.6 3.67 3.66
雪氷室型貯蔵庫   3.13 3.15   4.35 4.3   3.6 3.66
低温倉庫   3.09 3.35   4.15 3.83   3.72 4.37

表2 貯蔵米の水分の変化
貯藏条件 水分(%)
'91年11月 '92年4月 10月
凍土貯蔵庫 14.4 14.7(14.3) 16.5(14.5)
雪氷室型貯蔵庫   I4.3(14.5) 15.8(14.5)
低温倉庫   14.3 14.5
( )内は0.03mmポリエチレン包装貯蔵米の水分


図3 貯蔵、保管条件が貯蔵米のテクスチャーに与える影響


図4 輸送中の半均温度
   1991年7月26日〜29日 輸送先:東京
   1:60kg詰め樹脂袋2:30kg積め紙袋3:庫内温度


図5 輸送中の平均温度
   1992年8月29日〜9月1日 輸送先:東京
   1:1t詰めフレコン2:60㎏詰め樹脂袋3:庫内温度

11.成果の活用面と留意点
1)本試験は良食味米の周年供給をめざしたもので、貯蔵に関する試験結果はいずれも単年のものであるが、長期貯蔵技術への転用も可能と考えられる。
2)低温貯蔵米を高温環境においた場合の結露の発生に十分注意する。

12.残された問題とその対応
1)冷熱エネルギーを利用した貯蔵庫に置ける湿度制御方法の検討
2)玄米(籾)のバラ大型低温貯蔵法の検討