成績概要書【指導参考事項】
1.課題の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 2-2-1
         北海道
2.研究課題名 キュウリ「黒さんご」の生育異常葉発生実態の解析とその対策
         (キュウリ・メロンの葉枯症発生要因の解明と対策)
3.予算区分 道単
4.研究期間 平成1〜5年
5.担当 中央農試環境化学部土壌資源科
6.協力・分担関係 なし

7.目的 キュウリの生育異常葉発生要因の実態解析とその防止対応策について検討する。

8.試練研究方法 
(1)現地の発生実態調査:三笠市のキュウリ「黒さんご」生産地帯の土壌調査(分析)、葉分析、キュウリ栽培に関する聞き取り調査等を実施。
(2)現地における葉枯症発生畑の解析および改善効果試験:同一ハウス内の発生畑と正常畑の比較および発生畑の防止対策試験の実施。
(3)葉枯症の解析(再現)試験:土壌間、品種間(穂木)、台木(かぼちゃ)間、苗質、物理性、化学性等の影響について検討した。

9.結果の概要・要約
キュウリの葉枯症要因の解明とその防止対策について、数年間に亘り、三笠市を中心に実態調査によりその要因を解析するとともに、正常畑と発生畑の比較による解析および発生畑の改善試験を実施した結果、下きの諸点が明らかとなった。
1)実態調査の結果

表1 葉枯症発生に関わる諸要因一覧
要因 正常か軽発生 多発生
作型 露地早熟、
他の作型
ハウス早熟
(4月中旬〜5月中旬定植)
品種 穂木 他の品種 黒さんご
台木 自根 輝虎<新土佐
灌水 少量多回 少量多回
気象条件 高温多照 低温多湿(寡照)
物理性 難透水層 出現位置が深い 出現位置が浅い
通気性 心土の気相多 心土の気相少
ち密度 心土の硬度が中 心土の硬度が中〜大
また、化学性では、発生圃は正常圃に比ぺEC、無機態-N,Truog-P205、塩基飽和度が高かったがCECは逆に低かった。(表2)
2)同一ハウスにおける葉枯症発生畑と正常畑の解析および改善対策試験の結果
①キュウリの葉枯症の発生は、造成畑では見られなかった。そこで、発生した連作畑との比較をすると、土壌分析の結果、物理性の面では心土の堅密化による通気、透水性の悪化がみられ、土壌養分では、発生畑が各養分とも高い傾向を示す中で、リン酸の蓄積が目立った。(表3)
②また、一方、葉分析の結果、リン酸濃度が正常畑に比ぺ2〜3倍も高い数値を示したことから、リン酸が葉枯症の発生に何らかの関わりの強いことが窺われた。(表3)
③次に、発生畑の改善対策試験の結果、リン酸施肥の減肥、無施肥や正常畑の表土交換によって、完全には防止できなかったものの、軽減する傾向が認められた。(表4)
以上の様に、葉枯症の発生(症状も数種類あり)要因は、単一ではなく、複数の要因が相互に関連しながらする発生していることが考えられ、したがって、再現性が困難なため、その立証ができず推定の域を脱し得ないが、本地域における「キュウリ葉枯症」の発生要因は、下表のことが考えられまた、併せてその改善(防止)対策を掲げた。
葉枯れの症状 発生要因 対策
褐色小斑点
(葉脈沿)
黄白変
(葉脈間)
低温多湿条件下における、P過剰に
起因するCa,K,Mgのアンパラ
ンスによるものと推定された。
さらに、難透水層の出現位置が浅い
と発生が助長される。
①塩基バランスを考慮し、土壌診断に基づいた
 施肥対応
②Pおよび除塩(クリーニングクロップ・灌水)
③作土層の拡大と難透水層の破砕
④有機物の施用(N・K施肥を考慮)
⑤少灌水・保温(根系拡大、硝酸化成の促進)
⑥表層の排土および客土

10.成果の具体的数字
1)実態調査の結果

表2 土壌分析値の平均値
  pH EC NO3-N NH4-N NO3+NH4 P2O5 K2O CaO MgO CEC Mg/K Ca/Mg 塩基飽和度
正常畑 6.1 0.38 15.8 0.86 16.7 107.2 87.1 548.6 92.1 32.1 0.77 7.39 81.1%
発生畑 6.2 0.57 23.3 1.93 25.3 133.8 82.1 488.8 76.3 21.8 0.67 7.93 105.3%
備考:pH(H2O),EC(ms/cm),Truog-P2O5(mg/100g),
   NO3-N,N(mg/100g),CaO,K2O,MgO-交換性塩基(mg/100g),
   CEC(me/100g)

2)同一ハウスにおける葉枯症発生畑と正常畑の解析および改善対策試験の結果

表3 土壌の理化学および葉中含有率の比較
項目 正常畑   発生畑
ハウスの経歴 平成3年秋造成(低地土の盛土) キュウリ歴6年(タマネギ跡地)



三相
分布
心土      固相 54.4% 55.3%
〃       液相 38.2 43.3
〃       気相 7.4 1.4


無機態-N(0〜10cm) 15.8mg/100g 20.2mg/100g
(5〜10cm) 7.4 8.9
Truog(0〜25cm) 90mg/100g 144mg/100g
P2O5(25cm〜) 45 104
EX-K2O(0〜25cm) 26mg/100g 37mg/100g
CaO(0〜25cm) 352 376
MgO(0〜25cm) 64 76
塩基飽和度(0〜25cm) 99.2% 110.6%




%
葉位→ 10 15 20   10 15 20
N 2.55 3.11 3.25 3.92 2.97 3.25
P2O5 0.81 0.7 0.7 2.44 1.75 1.52
K2O 2.31 2.06 1.96 2.66 3.09 3.2
CaO 18.8 15.65 14.64 19.6 15.4 13.96
MgO 2.48 2.44 2.28 1.92 1.44 1.32

表4 施肥改善および土壌交換による発生防止効果
処理方法 発生症状
と指数*
1.発生畑無処理 黄白変 2.8
褐小斑 2.4
2. 〃 -P 黄白変 1.7
褐小斑 0.8
3. 〃 1/2P 黄白変 1.1
褐小斑 1.3
4.発生畑10cm排土 黄白変 0.8
+正常畑土10cm客土 褐小斑 1.5
5. 〃   20cm排土 黄白変 1
  〃   20cm客土 褐小斑 1.2
6.正常畑10cm排土 黄白変 0
+発生畑土10cm客土 褐小斑 0.4
7. 〃   20cm排土 黄白変 0.4
  〃   20cm客土 褐小斑 1
*0-無 1-少 2-中 3-多 4-激

11.成果の活用面・留意点
1)全道のキュウリ生産地帯に適応できる。
2)上記の対策は、単独よりも組合せて実施することが、効果的と考えられる。
3)現在発生している品種は、「黒さんご」に限られているが、今後は、他の品種にも発生する恐れが考えられる。

12.建された問題点とその対応
メロンの葉枯症の発生要因の解明と対策