1.課題の分類 総合農業 作業技術 北海道 物理 2.研究課題名 大区画圃場における水稲栽培省力化技術 Ⅲ 圃場管理技術 (大区画圃場における低コスト機械化体系の確立) ( 2)土壌管理技術と灌排水技術) 3.予算区分 補助(地域水田農業) 4.研究期間 平成3〜5年 5.担当 中央農試農業土木部農村環境科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
大区画水田における圃場管理技術のなかで、水稲栽培可能な圃場の成立条件として最も基本的な技術である均平度と代かき期の用水実態について検討する。
8.試験研究方法
1)試験圃場の概要
試験地 土壌 |
圃場 N0. |
面積 ha |
圃場の 長辺×短辺m |
圃場の 造成方法 |
圃場の 造成年月 |
造成前 | 造成後 計画高 |
|
筆数 | 高さm | |||||||
平取町 褐色低地土 |
A | 1.14 | 116X(140) | 表土扱い | 昭和63年10月 | 2 | 52.21、52.54 | 52.39m |
南幌町 高位泥炭土 |
B | 1.12 | 148X75 | 突き均し | 平成1年4月 | 4 | 8.95〜9.15 | 9.02 |
C | 1.34 | 154X88 | 突き均し | 平成1年4月 | 4 | - | - | |
妹背牛町 灰色低地土 |
D | 3.62 | 246X148 | 表土扱い | 平成3年9月 | 10 | 36.13〜36.72 | 36.35 |
深川市 グライ土 |
E | 4.36 | 255X175 | 表土扱い 突き均し併用 |
平成4年9月 | 8 | 39.35〜39.60 | 39.46 |
北村 低位泥炭土 |
F | 2 | 152X132 | 突き均し置土 | 平成3年9月 | 5 | 9.87〜9.99 | 9.99 |
9.結果の概要・要約
1)圃場の均平度
(1)大区画水田の均平は、レーザー光線を利用したブルドーザーの普及等により、造成時の均平精度の許容限界値を従来の標準区画水田と同じ39mmを適用しても、十分に確保され良好であった。
(2)高位泥炭土を除いた他の土壌型で均平精度の経年変化をみると、代かき等の圃場管理作業によりさらに凹凸が小さくなって、20mm弱の均平精度を確保できた。
(3)高位泥炭土では、突き均し工法により泥炭層への上載荷重が増加したことや排水による不等沈下のため均平が悪化し、均平精度の許容限界値δ=39mmを越え不安定であった。
(4)大区画水田を造成する際に、突き均し工法を表土扱い工法を併用した圃場では、表土の硬度に差が生じたことや、高位部と低位部がそれぞれ偏在したため、均平が他の大区画水田に比してやや劣っていた。従って、突き均し及び表土扱いを併用するばあい、締め固め度合いに差が生じ、耕起入水後均平の大きな変化を引き起こしやすいため、標高のほか締め固め度合いや土壌硬度にも考慮する必要がある。
2)灌漑技術(代かき期)
(1)代かき用水量は3.6haの妹背牛D圃場が133mm、4.36haの深川E圃場が155mmと標準区画よりやや多めの水量であった。時間では妹背牛D圃場が20時間30分、深川E圃場が40時間40分で深川E圃場は妹背牛D圃場の約2倍弱の時間を費やした。これは主に灌漑強度の差によるものと考えられた。
10.主要成果の具体的数字
図1 各調査圃場の均平精度の経年変化
図2 南幌B圃場の平均穂高に対する面積率の経年変化
図3 深川E圃場における長辺方向の平均穂高の変化
図4 深川E圃場造成後の土壌硬度
表1 妹背牛D圃場の代かき期の用水量(平成5年5月14〜15日)
設定時間 | 6:30始 | 8:00 | 10:00 | 11:00 | 12:00 | 13:30 | 14:30 | 16:50 | 17:50 | 19:20 | 3:00 | 平均 |
経過時間 | 分 | 90 | 210 | 270 | 330 | 420 | 480 | 620 | 680 | 770 | 1230 | |
積算流量 | m3 | 446 | 1016 | 1347 | 1549 | 2013 | 2256 | 2816 | 3049 | 3344 | 4848 | |
総灌漑量 | mm | 12 | 28 | 37 | 44 | 55 | 62 | 77 | 84 | 92 | 133 | |
灌漑強度 | mm/h | 8.2 | 7.8 | 9.1 | 6.8 | 7.7 | 6.7 | 6.6 | 6.4 | 5.4 | 5.4 | 6.5 |
表2 深川E圃場の代かき期の用水量(平成5年5月17〜19日)
設定時間 | 13:20始 | 14:00 | 15:20 | 17:05 | 17:50 | 18:50 | 9:20 | 11:00 | 13:00 | 15:30 | 17:50 | 6:00 | 平均 |
経過時間 | 分 | 40 | 120 | 225 | 270 | 330 | 1200 | 1300 | 1420 | 1570 | 1710 | 2440 | |
積算流量 | m3 | 90 | 278 | 550 | 667 | 833 | 3382 | 3697 | 4074 | 4514 | 4877 | 6748 | |
総灌漑量 | mm | 2 | 6 | 13 | 15 | 19 | 78 | 85 | 93 | 103 | 112 | 155 | |
灌漑強度 | mm/h | 3.1 | 3.2 | 3.6 | 3.6 | 3.8 | 4 | 4.3 | 4.3 | 4 | 3.6 | 3.6 | 3.8 |
11.成果の活用面と留意点
(1)均平について泥炭土を除いた一般土では本成績が適用できる。
(2)泥炭土については圃場の地耐力、上層土(泥炭土層より上部にある無機質土)の厚さ及び分布状態、泥炭の分解程度等を総合的に検討して整地方法を選定する必要がある。
(3)大区画水田では代かき水灌漑時に集中して用水を必要とするので、隣接圃場との水利調整に留意すること。
12.残された問題とその対応
(1)泥炭土での大区画化は整地方法のさらなる検討が必要である。
(2)大区画水田での用水の効果的利用法、排水方法の検討など水管理の省力化について検討する必要がある。