1.課題の分類 総合農業 作業技術 収穫、野菜(葉菜)5(1) 北海道 物理 2.研究課題名 葉茎菜類収穫機の開発 (葉茎菜類の収穫調製機械化) 3.予算区分 補助(緊急) 4.研究期間 平成3年〜5年 5.担当 中央農試 農業機械部 機械科 園芸部 野菜花き第一科 6.協力・分担関係 なし |
7.目的
野菜産地の多くは、人手不足および高齢化が深刻な問題となっており、キャベツ、白菜などの重量野菜の収穫調製作業の軽労働化を求める声が強い。そこで、農家の個別利用を前提にし、手で作物の姿勢を整えながら切断刃を操作し、機上で選別・箱詰めする簡便な自走式半自動収穫機を開発し、収穫作業の軽労働化に寄与する。
8.試験研究方法
1)試験時期および場所 | 平成3年度:平成3年6月〜11月、 | 中央農試および南幌町農家圃場 |
平成4年度:平成4年8月〜12月、 | 〃 | |
平成5年度:平成5年9月〜11月、 | 〃 |
3)供試品種 | ①機械化収穫試験:「アーリーポール」、「照々丸」 |
②機械化収穫適性試験:「アーリーボール」、「照々丸」、7品種 |
9.結果の概要・要約
1)出力5psのガソリンエンジンを搭載した3輪式後輪駆動方式の2人乗り自走式半自動型葉茎菜類野菜収穫機を開発した。前方に座乗した作業者がV字型固定刃でキャベツなどの茎を切ってコンペヤヘ載せ、後方の作業者が箱詰めを行う。作業能率は、作業速度がO.O4m/sの時、7.Oa/h、536㎏/hであった。
2)収穫精度は、正常切断の割合が80%を占め良好であった。外葉の調製が不要な茎の切断位置は球の底部よりO〜5m、やや調製が必要な切断位置は5〜1O㎜であると考えられた。
3)安静直立時の心拍数に対し、機上での箱詰め作業は約20%、切断刃の操作は、固定刃の場合が約50%、回転刃の場合が35%心拍数が増加した。収穫物の入ったミニコンテナを荷下ろしするときは安静時よりも61%増加した。
4)「アーリーボール」、「藍春ゴールド」、「照々丸」、「YRしぶき2号」、「大藤」は球径・球高ならびに調製後球童の揃いが良好であり、機械による一斉収穫において高規格内率を得られるものと考えられた。
5)「アーリーボール」の切断抵抗は地際に近いほどが大きかった。切断抵抗は品種により異なり、「アーリーポール」および「若峰」は「輝春」の約1.8倍大きかった。「照々丸」および「アーリーポール」の切断抵抗は、切断速度が速くなると減少する傾向が認められた。
10. 主要成果の具体的数字
表1 切断装置の構造と収穫精度
切断刃 の 形状 |
供試 品種名 |
作業 速度 (m/s) |
切断 | 残存 外葉 (枚) |
切断状態 | |||
位置 (㎜) |
面積 (㎡) |
正常 (%) |
斜切 (%) |
深切 (%) |
||||
V字 固定 |
照々丸 | 0.05 | -0.9 | 5.2 | 0.7 | 57.9 | 37.1 | 5 |
0.06 | 6 | 5.3 | 2.3 | 70 | 30 | 0 | ||
0.06 | 5.5 | - | 1.5 | 81.2 | 11.5 | 7.3 | ||
アーリー ボール |
0.06 | 10 | 4.7 | 2.4 | 18.2 | 81.8 | 0 | |
0.07 | 23.4 | 6.2 | 5.4 | 81.2 | 18.8 | 0 | ||
0.08 | 4.1 | 4.4 | 0.7 | 41.7 | 41.7 | 16.6 | ||
回転 円盤 |
照々丸 | 0.03 | 3.4 | 6.1 | 2.2 | 55.6 | 16.7 | 27.7 |
0.03 | 6 | - | 2 | 75.5 | 21.5 | 3 | ||
0.05 | 13.3 | 6.8 | 3.3 | 66.7 | 26.7 | 6.6 | ||
アーリー ボール |
0.05 | 9.1 | 4.4 | 2.3 | 20 | 53.3 | 26.7 |
表2 作業能率(供試品種「照々丸)
作業 速度 (m/s) |
作業内訳(%) | 全作業 時間 (min) |
作業 | |||||
収穫 | 旋回 | 荷下し | 調整 | 面積 (㎡) |
能率 (a/h) |
能率 (kg/h) |
||
0.04 | 73.5 | 2.3 | 14.4 | 9.8 | 11.03 | 12.8 | 7 | 536 |
表3 収穫作業中の筋電量および心拍数の変化
作業内容 (動作) |
心拍数 (回/min) |
筋電量 (U/min) |
皮膚温 (℃) |
備考 | |
肩 | 大腿 | ||||
安静(直立) | 82 | 0 | 0 | 34.2 | |
空箱積込み | 98(19.5) | 52.5 | 5.2 | 34.6 | |
箱詰め | 101(23.2) | 92.3 | 11.2 | 34.8 | 起立乗車 |
切断刃操作① | 122(48.8) | 82.5 | 16.5 | 35.2 | 固定刃(座乗) |
切断刃操作② | 111(35.4) | 50.2 | 3.5 | 34 | 回転刃(座乗) |
荷下ろし | 132(61.0) | 150 | 21.2 | 35 | ミニコンテナ |
表4 主要品種の切断抵抗
品種 | 断面積 (c㎡) |
茎径 (㎜) |
抵抗 (㎏) |
輝春 | 8.5 | 33 | 4.5 |
藍春 | 12.6 | 40 | 5.1 |
金系 | 9.6 | 35 | 5.3 |
早春 | 6.6 | 29 | 6.3 |
若峰 | 8.4 | 33 | 8 |
アーリー | 9.7 | 35 | 8.2 |
表5 品種特性
品種名 | アーリー ボール |
藍春 ゴールド |
YR 早春 |
金系 201号 |
照々丸 | YRし ぶき2号 |
大藤 |
球重(g) | 1557 | 1718 | 1425 | 1844 | 1314 | 1432 | 1961 |
CV | 15% | 13% | 22% | 18% | 13% | 10% | 11% |
球径(㎝) | 15 | 17 | 15.5 | 18.7 | 16.3 | 17 | 19.5 |
CV | 7% | 7% | 7% | 13% | 7% | 6% | 8% |
球高(㎝) | 16.9 | 15.8 | 14.2 | 14.5 | 12.7 | 12.9 | 15.5 |
CV | 5% | 8% | 6% | 12% | 10% | 7% | 9% |
11.成果の活用面と留意点
1)生育が斉一な品種を選定する
2)規格内収量が高まる栽培法とする。
12,残された問題とその対応
1)他の葉茎菜類の収穫について検討
2)一斉収穫法に関する経営的評価