成績概要書【指導参考事項】(平成6年1月)
1.課題の分類 総合農業 作業技術 草地管理
       北海道農業 物理
2.研究課題名 汎用型グラスシーダの開発
       (草地整備工法の検討と汎用型グラスシーダの性能および効果確認試験)
3.予算区分 受託
4.担  当 根釧農業試験場研究部酪農施設科,土壌肥料科
5.研究期間 (平成4年〜5年)
6.協力分担 なし

7.目的

 草地更新において,砕土・施肥・橋種・鎮圧など各作業を複合化し.工程数を短縮させたクラスシーダを開発し,草地整備工法の低コスト化を図ってきた。しかし,平坦で広い圃場では作業能率は高いものの,区画の狭い圃場では作業性が低下すること,重いため車輪トラクタでの作業が困難であること,鎮圧ローラが軽量なため,鎮圧が不足すること,施肥部と播種部が分離しているため,現地では設定値通りの施肥・播種量の調節が困難であることなどの問題が指摘されている。
 そこで,グラスシーダの軽量化を図り,車輪トラクタでも作業可能なグラスシーダの開発を行った。また,本機を用いて草地整備を行ない,その効果を確認した.。

8.試験研究方法

1)試験場所 根釧農試および弟子屈町の永年草地

2)試験方法
①グラスシーダの試作および施肥・播種部の改造
②定置試験および作業能率試験:作業機は耕起(24インチ2連プラウ),砕土(ディスクハロー),土壌改良剤散布(ライムソワ),鎮圧(ローラ)を使用。

表1施肥播種機と使用トラクタ
試験区A区B区C区
施肥・播種機グラスシーダグラスシーダブロードキャスタ
使用トラクタ車輪トラクタ覆帯トラクタ車輪トラクタ

③出芽・定着状況,収量調査:播種草種TY(ノサップ),RC(サッポロ),LC(カルフォルニアラジノ)の出芽・定着,収量調査を行う。

9.結果の概要・要約

①軽量化を図り,車輪トラクタのけん引でも作業可能なクラスシーダを開発した。施肥・播種部は溝ローラによる繰り出しで,繰り出し量の設定はギア交換により行い,種子と肥料は幅20㎜,長さ32㎜の長穴から繰り出される。鎮圧はケンブリッジ型のゴム被覆のローラである。

②施肥・播種は溝ローラによる繰り出しであるため,作業速度が変わっても面積当たりの施肥・播種量はほほ一定である。

③グラスシーダは種子と肥料を手で混合し,施肥・播種する方式であるため,肥料と種子の混合割合の変動が懸念された。しかし,草種,肥料の量により少し変動が見られたが,混合程度もおおむね良好で,ほほ設定値どおりに施肥・播種が可能である。ホッパー内の肥料がなくなる直前に.種子数が大幅に減少するため,早めに補給する方が好ましい。

④施肥・播種の作業速度は各年次で異なったが,作業状態から見て,グラスシーダの施肥播種作業は,車輪トラクタによるけん引では,速度2.0㎜/s程度で作業可能である。履帯トラクタでも車輪トラクタと同程度の速度で作業可能と考えられる。慣行のブロードキャスタは4.0〜5.0msと高速であった。グラスシーダにより鎮圧工程が省略されたが,施肥・播種の作業速度が慣行法より遅いため,グラスシーダによる施肥・播種作業のha当たりの作業時間は慣行法と同程度である。

⑤平成4年度播種した牧草の出芽・定着状況はA,B区の出芽数がC区に比べてやや少なかった。播種当年の初期生育量はA区がC区に比べて,10%程度劣り,中間調査時にもA,B区がC区より10%程度劣った。これはA,B区の播種量がC区に比べ,25%少なかったためと思われる。一般に牧草出芽数は㎡当たり2,000本以上であれば,初期から高密度が得られるという評価からすれば,いずれの区も十分な出芽数であった。翌年の1,2番草収量には区間差が認められなかった。
 平成5年度播種の出芽・定着状況はいずれの区も十分な出芽数を確保していた。
 以上より,出芽・定着状況,収量とも慣行法と比べて,差が認められず,クラスシーダによる施肥・播種は慣行法と比べて,遜色はないと考えられる。


図1 供試機外観図


図2 施肥量(平成5年) □:速度0.95m/s,+:2.07m/s

表2仕様諸元
型式 KBL40
全長(mm) 3,550
全幅(mm) 3,400
全高(mm) 1,670
重量(kg) 2,300
鎮圧ローラ ゴム被覆
施肥・播種機構 溝ローラ
〃幅(mm) 3,000
〃吹出口幅・長(mm) 20・32
〃繰り出し量調整 ギア交換
タンク容量(kg) 1,000

表3 落下種子粒数と重量
試験No. 時間(min) 粒数(粒/㎡) 重量(g/㎡)
TY RC LC TY RC LC
1 3.5 2485 106 322 1 0.19 0.19
2 7 3276 103 401 1.28 0.18 0.23
3 10.5 3680 125 453 1.46 0.22 0.26
4 14 3631 111 496 1.41 0.2 0.28
5 17.5 3318 109 377 1.3 0.19 0.21
6 21 3051 108 356 1.22 0.2 0.2
7 24.5 2607 96 340 1.03 0.17 0.19
8 28 2501 90 293 1 0.15 0.16
9 30 1765 68 212 0.7 0.12 0.12
10 31 1702 46 220 0.68 0.08 0.12
平均*1 3069 106 380 1.21 0.19 0.22
CV(%)*1 14.9 9.2 16.8 4.4 10.1 17.1
設定量 3032 113 353 1.2 0.2 0.2
*1試験No.9〜10を除く

表4 作業能率(平成5年)
作業名 施肥・播種 鎮圧
(ha/h) (h/ha) (ha/h) (h/ha)
A区 0.67 1.5
B区 0.73 1.38
C区 1.89 0.53 1.17 0.85

表5 1番草収量(調査日:H5/6/21,H4年播種)
処理区 生草収量(kg/10a) マメ科 率(%) 牧草乾物収量(kg/10a)
TY RC LC TY RC LC
A区 3,332 2,332 633 167 24 345 72 15 432 97
B区 3,269 2,256 785 229 31 350 80 27 457 102
C区 3,345 2,141 803 368 35 325 88 33 446 100

表6 出芽・定着状況(調査日:H5/9/13,H5年播種)
処理区 草種 A区 B区 C区
TY RC LC TY RC LC TY RC LC
出芽・定着数(本/㎡) 1,818 72 168 2,058 1,959 63 193 2,215 1,895 63 144 2,102
CV(%) 24 48 38   25 45 48   26 87 37  

11.成果の活用面と留意点

①火山性土に適用する。

②混合機などを使用し,種子と肥料を均一に混和すること。

③残量に留意し.早目に補給すること。

12.残された問題とその対応

①洪積土,泥炭土への連応性は未検討である.

②土性,土壌水分により出芽・定着が異なる可能性がある。このため,圃場の傾斜や表面の凹凸などに追従する覆土機構の検討が必要である。