【普及奨励事項】
完了試験研究成績 (平成5年12月作成)
1.課題の分類 草地 育種 マメ科牧草 A-1
        北海道 畜産・草地 草地  AL
2.研究課題名 アルファルファ「月系4号」の育成
3.予算区分 経常
4.研究期間 完53〜5
5.担当 北海道農試・草地・マメ牧研
6.協カ、分担関係
根釧農試
系道場所(協力場所を含む) 8場所
特性検定            2場所
草地試育種化学研(成分分析)

7.目的
北海道東部の少雪・土壌凍結地帯に適応し、多収性と葉枯性病害(とくにそぱかす病)抵抗性、耐寒性に優れる、パーティシリウム萎ちょう病抵抗性品種を育成する。

8.試験方法
1)育種材料 北海道各地より収集した生態型から多収性について選抜した3群(戸田系、高根系、軍川山口系)
2)育種方法 4母系の組合せによる母系選抜法
3)育種経過 スプレッダー品種として「Rambler」「Rhizoma」を用い葉枯性病害について2サイクルの選抜を行った。選抜個体間の交配により母系種子をとり、母系の評価を北農試(パーティシリウム萎ちょう病接種条件下)と根釧農試が行ない、4母系を選抜し、北農試評価圃場の200株より隔離採種し、「月系4号」とした。

9.成果の概要
「月系4号」は北海道農試の永年にわたる優良遺伝子の集積と、道東の現地に位置する根 釧農試による評価・選抜により育成されたものである。
①「キタワカバ」比全道平均で110と多収で、とくに道東少雪地帯では「月系1号」より多収を示す(表1)。
②そばかす病に対して「キタワカバ」より強い(表2)。
③パーティシリウム萎ちょう病に抵抗性(表3)。
④越冬性は道東地域で「キタワカバ」よりやや優れる(表3)。耐寒性は「キタワカバ」を 「中」とした場合「やや強」。「月系1号」と比べても耐寒性に優れる。(表2)
⑤耐倒伏性は、「キタワカバ」より強い。「バータス」よりはやや弱い。(表3)
⑥開花は「キタワカバ」より1日早い早生、春の草勢・再生は道東地域で良好。秋季休眠性は「キタワカバ」より弱く、「バータス」より強い(表3)。
⑦混播適性は「キタワカバ」と同等と考えられる。オーチャードグラスと混播したときの4年間合計収量とマメ科率は「キタワカバ」よりやや低いが、その差は有意ではなかった (表3)。
⑧採種性は「キタワカバ」よりやや少なかった(表3)。

10.成果を総括した具体的数字
表1 「月系4号」の総乾物収量
場所 年次 月系4号 月系1号 キタワカパ 5444 パータス タチワカパ (最高積雪深)
北見農試 1〜4 ○114 111 332.1 99
67cm
4 ○118 106 89.0 88
根釧農試 1〜4 ○119 112 232.8 118 66㎝
4 ○111 107 83.7 90
北農試 1〜4 △97 112 400.4 89 101
102㎝
4 △99 106 143.7 93 99
天北農試 1〜4 △104 108 265.9 87 93㎝
4 △101 114 72.1 74
新得畜試 1〜4 △114 122 224.2 96 60-80cm
4 △114 121 63.4 82
青森畜試 1〜3 △85 101 393.5 90 85 144㎝
3 △90 106 97.5 90 86
キタワカバは実収量(kg/a)、他はキタワカバを100とした指数「月系1号」より多収の場合に○印、
低収の場合に△印をつけた。最高積雪深は草地試資料(57-18)より引用

表2 そばかす病罹病程度と耐寒性
系統・品種 そばかす病罹病程度1 耐寒性検定(根釧農試)
根釧農試 北見農試 全場所 冬枯程度2 欠株率3 生存株数4 評価(順位)
月系4号 2.3 2.7 3.0 4.7 38 39.1 やや強(1位)
月系1号 3.0 3.0 3.3 6.0 45 26.4 やや強(3位)
キタワカバ 4.5 4.4 4.8 7.3 60 18.9 中(4位)
5444 3.9 3.8 4.1 5.5 50 30.0 やや強(2位)
1 値は評点で1:少-9:甚、複数回調査の平均  2 1:少-9:甚  3 %  4 株/㎡

表3 「月系4号」の主な特性
  月系4号 キタワカバ 5444 バータス 備考
VW抵抗性 76.6 57.3 87.1 抵抗性個体頻度(%)
  〃 1.5 1.9 1.3 り病度(1健全−5枯死)
越冬性1) 6.4 5.0 5.5 根釧・北見・新得平均
耐雪性 中・強 新潟農試特性検定
倒伏程度2) 3.2(3.0) 5.2(4.0) 4.5(3.4) (2.8) 北海道平均
開花始め 6月29日 6月30日 7月1日 北海道平均
春の草勢1) 7.6 6.0 5.9 根釧・北見・新得平均
再生1) 8.1 6.1 5.3 根釧・北見平均
秋季休眠性 37.8 33.0 34.7 40.1 秋の草丈の伸び(㎝)
混播収量 94 (358.8) 99 98 4年間合計・キクワカパは実収
  〃 マメ科率 55 60 58 64 %               ㎏/a
採種性 4.2 4.8 3.2 ㎏/a
1)1:不良-9:良 2)1:少-9:多、括弧内は北海道農試平均

11.成果の活用面と留重点
普及対象地域は北海道の少雪地帯である。「キタワカバ」にかえて普及を計り、普及見込み面積は2,000haである。凍上の恐れのある地域ではイネ科牧草との混措とする。また、根粒菌の着生の促進、定着時の雑草の抑制などにより初年の生育の確保、適期の刈取りなどアルファルファ栽培の基本に留意する。

12.残された問題とその対応
多収で、病気に強く、栽培しやすい品種の育成を進める

13.研究成果の区分
①普及