【指導参考事項】
成績概要書                   (平成6年1月)
1.課題の分類  総合農業 営農 経営 2-4-4
          北海道  経営
2.研究課題名 畑作地帯における地域的農業労働力確保の条件
        (新規作物導入に伴う地域農業労働調整システムの確立)
3.予算区分 道単
4.研究期間 (平成4〜5年)
5.担当 北海道立十勝農業試験場
研究部 経営科 岡田直樹
6.協力・分担関係 なし

7.目的
畑作地帯において、野菜作導入による家族経営の展開を制約している労働力不足を克服するため、地域において農家外の労働力を安定して確保・利用するための条件を明らかにする。

8.試験研究方法
(1)野菜作導入下における外部労働力利用実態
(2)地域的な労働カ調達・管理方式の類型区分と機能の分析

9.結果の概要・要約
(1)畑作地帯においては、80年代後半から「労動力不足感」が急速に広まっている。これは、雇用労働力が減少する一方で、農家経済の悪化を背景に野菜作の導入が急速に進んだことによる。野菜作は手作業を多く残し労働集約的なため、新たな労働対応が課題となる。しかし、農家間にみられる自生的な労働力調達・管理方式は、労働需要の増大に対して十分に機能していない。このため、限られた特定の農家が、安定した確保のために雇用労働力を専属化し、他の多くの農家は雇用労働力獲得が困難となる傾向にある。
(2)上記背景から、地域的な労動力調達・管理方式が必要となる。十勝地方に見られる地域的な労働力調達・管理方式は3つの類型に区分される(表1)。各類型の代表事例により機能を分析した。
①〈日雇い労動力斡旋型〉では、援農協力会等の組織が労働力の募集・登録を一元的におこない、要請に応じて農家に斡旋する。しかし、斡旋先の農家により雇用される「日雇い」という不安定な就労形態であり、年々登録者数は減少しており、登録者数の季節的な変動も大きい。現在の登録者の多くは60歳以上の高齢者で、就労作業は除草等の軽作業に限定される。このため農家に対する安定した労働力の供給源とはなっていない。
②〈従業員派遣型〉では、地元企業等の組織が労働力を一元的に雇用し、要請に応じて農家に従業員を派遣する。雇用の形態は雇用保険の付与を伴う季節雇用であり農作業期間を通して労働力は安定して確保される。就労の季節的な繁閑の解消が重要な課題となるが、農家間の需要量の調整は困難であり、閑期の就労確保の必要から、時として大口利用農家と癒着したり、農家に対する従業員受け入れの強要や作業の遅延が発生する。
③〈作業受託型〉では、農協等の組織が労働力を雇用するとともに、農家から作業を受託する。受託は、地域的な観点から必要性が判断され、選択的に行われる。野菜作導入においては、農協による栽培技術体系の統一や作期の統制と連動し、間引きや収穫など労働負担の大きい作業を組織が分担する体制の確立が見られる。また、従来の農業経験女性を中心とする労働力確保の困難化に対して、作業方法の変更や労働条件の改善により男子労働力や農業経験のない中年主婦層の雇用をはかり、安定した作業の受託が可能となっている。
(3)ここで提示した3類型は、労働力の調達・管理における雇用調達機能と労務管理機能が地域的に統合される過程であり、労働力確保の困難化に対応した発展段階と位置づけられる。野菜作導入により労働需要が拡大する中で、農家に対する安定した労働支援のためには、〈作業受託型〉の労働力調達・管理方式の確立が求められる。

10.成果の具体的数字(総括)
表1 地域的な労働力調達・管理方式の類型
類型区分 労働力の
雇用調達
の担い手
労働力
の雇用
主体
労務管理
の担い手
〈日雇い労働力斡旋型〉 地域組織 農家 農家
〈従業員派遣型〉 地域組織 地域組織 農家
〈作業受託型〉 地域組織 地域組織 地域組織


図1〈日雇い労動力斡旋型〉(A町)


図2〈従業員派遣型〉(B町)


図3〈作業受託型〉(C町)


図4 地域的な労働力調達・管理方式の発展段階

11.成果の活用面と留意点
1)地域的な労働力調達・管理方式の実現においては、労働関連の法律に抵触する場合があるので、必ず公共職業安定所、労働基準監督署と協議すること。

12.残された問題とその対応
地域的労働力調達・管理方式の確立が、地域経済に及ぼす波及効果の検討が必要である。