成績概要書(作成平成7年1月)
1.課題の分類  総合農業 作物生産 夏作物 稲(栽培)Ⅱ−9
           北海道 稲作 栽培
2.研究課題名  無人ヘリコプタによる水稲用フロアブル除草剤の散布試験成績
           (試験課題名:新資材試験)
3.予算区分  受託
4.研究期間  平成6年
5.担当  中央農試稲作部栽培第一科
6.協力分担  農業改良課

7.目的
  無人ヘリコプタによる水稲用フロアブル除草剤の散布について、その実用性を明らかにし、
 導入にあたっての参考に供する。

 

8.試験研究方法
  供試薬剤 NSK−855フロアブル(ペンスルフロンメチル1.4%、テニルクロール5%)
         TDS−888フロアブル(ペンスルフロンメチル1.4%、ピリブチカルブ12%)

  試験区   各供試薬剤毎に1筆(面積42.6a、152m×28m)の圃場を供試し、
         無人ヘリコプタ散布区32.5a(116m×28m)
         手振り散布区10.0a(36m×28m)
         無処理区4㎡(2m×2m)を波板で仕切り設置
         試験区所在地  北海道北村幌達布965−2

  散布日  平成6年6月1日(移植日5月25日、きらら397)

  使用機種 無人ヘリコプタ:ヤマハR−50、散布装置:ヤマハL12A

  散布方法 無人ヘリコプタ散布区:圃場長辺方向を飛行線(図1のA〜E)とし畦畔とAおよびEの間隔は5m、
          AからEは4.5m間隔で、散布装置のブーム、ノズルを使用せず滴下で散布散布時の水深6㎝
         手振り散布区:畦畔からの手振り散布散布時の水深6㎝

  調査項目 飛行諸元、ドリフト、除草効果・薬害、水稲生育・収量、

  散布装置 薬剤タンクの洗浄液のキュウリ苗におよぼす影響

 

9.結果の概要

(1)NSK−855フロアプル剤の調整吐出量(着陸状態)は30秒間で460ml、TDS−888フロアプル剤は410mlで、粘性の違いにより吐出量は異なった(表1)この結果から飛行速度を調整し散布を行った(表1)。10a当たりの実散布時間は38〜46秒であった(表1)。

(2)ドリフト調査紙による調査では風下の一部でのみ圃場外への極わずかな飛散が認められた。両剤ともキュウリの着花数については無処理区と大差なく、薬害は認められなかった(表2)。ドリフト調査紙による調査で極わずかな飛散のみられた地点においても薬害は認められなかった。粘性のあるフロアプル剤を滴下する散布方法なので、殺虫・殺菌剤の散布と同様に風速3m/s以下で散布することによってドリフトを防ぐことは可能と考えられた。また畦畔と飛行線の間隔および飛行間隔はドリフト防止の面から5m以上とし、フロアブル剤の水中拡散性と除草効果の面から10m以内が適当と考えられる。

(3)両剤とも無人ヘリコプタ散布区における除草効果は高く手振り散布区と同等であった(表3、NSK855フロアプル剤については省略)。生育期間中、手振り散布区および無人ヘリコプタ散布区に薬害は認められず、無人ヘリコプタ散布区の収量は手振り散布区と同等であったことから、無人ヘリコプタによる両剤の散布は実用可能と考えられる。

(4)散布装置薬剤タンクの洗浄液をキュウリの根元に投与した結果、2回目までの洗浄液では両剤とも生育抑制、枯死の薬害が発生した。府県では4回目の洗浄液で薬害が発生した事例のあることから、少なくとも5回目までの洗浄液は散布圃場に投入し、圃場外へ捨てない配慮が必要と考えられた。

 

10.主要成果の具体的数字

 

表1  飛行諸元
薬剤名 飛行速度
m/s
飛行高度
m
飛行間隔
m
実散布時間
s/10a
薬剤投下量
ml/10a
調整吐出量
ml/30s
風向 平均風速
m/s
天候
NSK-855 5.4 2〜3 4.5〜5 38 475 460 S 3.8
TDS-888 4.8 2〜3 4.5〜5 46 417 410 S 3.8
注)実散布時間は圃場上を飛行している時間

 

表2  キュウリの薬害発現によるドリフト調査結果(6月23日調査)
薬剤名 調 査 地 点 毎 の 着 花 数 無処理区の着花数
NSK-855 8 8 7 6 5 8 7 6 6 7 8 5 6 7 6 6 5 6
TDS-8886 6 8 6 7 7 8 7 7 7 8 5 6 6 7 7 7 9 6
注)調査地点①〜⑰は図1参照
着化数は1調査地点3個体の平均値、散布終了後育苗ハウス内に設置

 

表3  TDS-888フロアブル剤の雑草調査結果
試験区 ノビエ ホタルイ 合計乾物重
本数 乾物重 本数 乾物重
無処理区 16本/㎡ 12.68g/㎡ 52本/㎡ 10.00g/㎡ 22.68g/㎡
手振り区 13% t% 6% 1% 1%
無人ヘリ区 13% 1% 0% 0% 1%
注)手振り区、無人ヘリ区の数値は比率(対無処理区%)

 

11.成果の活用面と留意点

(1)散布は滴下で行う。
(2)散布前に吐出量の計量を行い、規定量を超える散布に注意する。
(3)ドリフトを防ぐため平均風速3m/s以下で散布を行う。
(4)畦畔と飛行線の間隔および飛行間隔は5〜10mの範囲とする(ただし、飛行間隔については「無人ヘリコプ
  ター利用技術指導指針(農蚕園芸局長通達)」の定める範囲内とする)。
(5)散布装置薬剤タンクを洗浄する際、少なくとも5回目までの洗浄液は散布圃場へ投入し、圃場外へ捨てるこ
  とのないようにする。
(6)平成3年度指導参考事項「水稲に対する無人ヘリコプタによる薬剤散布実用化技術」に準じて散布を行う。

12.残された問題点