新品種候補(作成　平成７年１月）
1．課題の分類
2．場所名　　北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農業試験場
　　協　力　　北海道農業試験場　日本甜菜製糖株式会社　北海道糖業株式会社　ホクレン農業協同組合連合会
3．新品種候補系統名　　てんさい「Kawe-J　039」

4．来歴および試験経過
1）来歴
　 　「Kawe-J　039」は、ドイツのクラインワンツレーベン育種株式会社が育成した三倍体、単胚の一代雑種であ
　る。二倍体単胚雄性不稔種子親系統「ＭＳ７Ｈ９８８２」に、四倍体多胚花粉親系統「ＰＳ７×８０４１」を交配し、
　昭和63年（1988年）に育成された。
2）試験経過
　(1)平成元年：日本甜菜製糖株式会社が輸入し、「ＭＣ８９−０１」の系統名で輸入品種予備試験を行った。
　(2)平成2年〜平成6年：「Kawe-J　039」の系統名で、北海道立十勝、北見、上川、中央農業試験場等において
　　輸入品種検定試験を行った。
　(3)平成5年〜平成6年：北海道立十勝、北見農業試験場において品質特性検定試験、十勝農試において栽培
　　特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において
　　抽蓄耐性特性検定試験を行った。
　(4)平成5年〜平成6年：全道17カ所において現地検定試験を行った。

　

5．特性
　1）一般的性状
　　「Kawe-J　039」は、草丈は中で「モノエースＳ」並、葉姿はやや開平である。葉数は「モノエースＳ」と
　　同程度で、葉形は楕円、葉身の大きさは中で「モノエースＳ」並、葉柄長は中で「モノエースＳ」並。
　　クラウンは小さく「モノエースＳ」並、露肩は「モノエースＳ」よりやや少ない。根形はやや短円錐形で
　　分岐根は少ない。
　2）根重
　　「モノエースＳ」より多く、「モノホマレ」より少ない。
　3）根中糖分
　　「モノエースＳ」並の高糖分で、「モノホマレ」より高い。
　4）糖量
　　「モノエースＳ」より多く、「モノホマレ」並である。
　5）品質
　　有害性糖分は、アミノ態窒素が「モノエースＳ」より高く、カリウムは「モノエースＳ」よりやや低くナトリウムは
　　「モノエースＳ」よりやや高い。不純物価は「モノエースＳ」よりやや高いが「モノホマレ」より低く、
　　品質は良好である。
　6）抽苔耐性
　　抽苔耐性は「モノエースＳ」、「モノホマレ」並の強である。
　7）耐病性
　　褐斑病抵抗性は「モノエースＳ」並の弱である。
　8）耐湿性
　　耐湿性は「モノエースＳ」並の中である。

　

6.試験成績

各農試における成績(平成2年〜平成6年の5ヵ年平均)
場所 系統名または
品種名		 根腐症状
株率(％)		 根重(t/10a) 根中糖分(％) 糖量(kg/10a) 対「モノホマレ」比(％)
根重 根中糖分 糖量
十勝農試 Kawe-J　039 0.1 6.05 18.12 1,092 96 105 100
モノエースS 2.0 5.78 18.06 1,040 91 105 96
モノホマレ 0.4 6.33 17.23 1,086 100 100 100
北見農試 Kawe-J　039 0.2 6.19 18.89 1,165 95 104 100
モノエースS 0.6 5.93 18.80 1,109 91 104 95
モノホマレ 0.0 6.49 18.10 1,170 100 100 100
中央農試 Kawe-J　039 4.0 8.52 17.60 1,499 100 105 105
モノエースS 3.0 8.09 17.34 1,400 95 104 98
モノホマレ 1.6 8.52 16.69 1,422 100 100 100
上川農試 Kawe-J　039 1.1 6.11 18.91 1,151 98 105 103
モノエースS 0.8 5.63 18.98 1,066 90 105 96
モノホマレ 0.1 6.23 18.00 1,116 100 100 100
北農試 Kawe-J　039 0.4 6.32 17.63 1,115 90 106 96
モノエースS 1.2 6.14 17.61 1,082 88 106 93
モノホマレ 0.2 7.00 16.69 1,167 100 100 100

　

特性検定試験(十勝、北見、中央、根釧農試、平成5年〜6年)
系統名または
品種名		 褐斑病抵抗性
発病程度(十勝)		 抽苔耐性(根釧)
抽苔率(％)		 耐湿性(中央)
腐敗度		 品質特性(十勝・北見)
非糖分(meq/100％) 不純物価％
9中 10上 判定 H5 H6 判定 H5 H6 判定 ｱﾐﾉN K Na 実数 判定
Kawe-J　039 2.87 3.87 弱 0.0 0.0 強 19.2 69.0 中 1.77 3.8 0.31 3.50 低
モノエースS 2.51 3.33 弱 - - (強) 13.9 77.0 中 1.44 4 0.28 3.38 低
モノホマレ 2.60 3.45 ﾔﾔ弱 0.4 0.0 強 21.6 88.4 ﾔﾔ弱 1.68 4.1 0.44 3.83 ﾔﾔ低
注1)褐斑病抵抗性、品質特性は2カ年の平均値、判定覧の(　)は平成4年以前の判定結果。
注2)不純物価(％)=｛(3.5×Na(％)＋2.5×K(％)＋10×Amino-N(％))÷根中糖分(％)｝×100
　　　Na：ナトリウム　　K：カリウム　　Amino-N：アミノ態窒素

　

現地検定試験成績全道平均(平成5年〜6年17カ所)
系統名または
品種名		 根腐症状株率(％) 根重(t/10a) 根中糖分(％) 糖量(㎏/10a) 対「モノホマレ」比(％)
根重 根中糖分 糖量
Kawe-J　039 2.8(0.8) 6.06(6.48) 16.86(16.95) 1014(1092) 97(98) 104(105) 101(103)
モノホマレ 0.6(0.3) 6.25(6.64) 16.17(16.13) 1003(1064) 100(100) 100(100) 100(100)
モノエースS (0.9) (6.34) (16.70) (1055) (96) (104) (99)
注)(　)内は「モノエースS」を供試した6カ所の平均値

　

7.配布可能種子量
　　平成7年度　1,000kg　　平成8年度以降　6,000kg

8.適応地帯および普及見込面積
　　北海道一円
　　平成7年度　1,000ha　　平成8年度以降　6,000ha

9.栽培上の注意
　1)褐斑病に対する抵抗性は弱なので、適期防除に留意する。
　2)根腐れの発生することがあるので、排水不良な圃場では栽培を避ける。